中1ギャップとは?
ギャップ(gap)は「食い違い」や「相違」という意味を持つことから、中1ギャップを直訳すると、「これまでの生活との食い違い」や「中1になって感じる理想と現実の相違」となります。
中1ギャップとは、小学校から中学校に進学した際に感じる急激な変化への不安や戸惑いのことで、このギャップを上手く乗り越えられないと、これからの中学校生活だけでなく、高校受験などにも影響を与える可能性があります。
そのため、中学入学によって生まれたギャップが大きく広がってしまう前に、親や教師などの周囲の大人が子供の心の溝を埋めてあげることが大切です。
中1ギャップが起こる原因は?
中学校に上がると、小学校ではなかったシステムや多くの人との出会いなど、初めて体験することばかりです。特に、次のような要因が、子供の中1ギャップを引き起こす原因となります。
1.新しい勉強についていけない
中学校に入って新しく増える科目に、英語と数学があります。それらの科目に対して苦手意識を持ってしまうと、授業をきちんと受けているつもりでも、徐々に授業についていくことができなくなって、クラスメイトに後れをとってしまうのです。
英語は小学校の「外国語活動」で学んでいる科目ですが、中学校からは「be動詞」や「人称代名詞」「3人称単数」「現在進行形」など、新しく勉強することが増えることから、一カ所つまずいただけで授業についていけなくなるため、小学校では楽しく学べていたにもかかわらず、英語嫌いになる子供は少なくありません。
また、6年生の算数では、掛け算や割り算などの計算のほかに、面積や体積の算出方法をある程度理解していれば、解ける問題がほとんどでしたが、中学校の数学の場合、方程式や比例・反比例のように、計算力以外のスキルが求められる問題が増えるため、ついていけなくなると「何が分からないのか分からない」いう状態に陥ってしまうのです。
さらに、中学に入ると「定期テスト」が行われるため、点数が良い科目と悪い科目の差がはっきりしてくると、ますます苦手な科目を勉強しようという意欲の低下を招くことになります。
2.新しい友人関係が思うように築けない
中学校に入学すると、もっと大きい変化といえるのが友人関係です。公立の場合、異なる小学校から入学してきた子と同じクラスになるほか、私立の場合は知り合いが全くいない状態からのスタートになります。中学校では、そのような新しい環境で人間関係を構築しなければなりません。
知らない人ばかりの中で、一から人間関係を築くことは大人でも難しいことですが、特に、人見知りの子や引っ込み思案の子のように、他者との交流が苦手な子供にとっては、慣れない環境で気の合う仲間を見つけるのは大きなプレッシャーとなります。
チャム・グループが大きなストレスになることも
小学校高学年から中学校にかけてのこの時期は、「チャム・グループ」と呼ばれる仲良しグループが人間関係に影響を与えるようになります。女の子に多いチャム・グループは、仲間意識が強く、メンバーの同質性を重んじる一方で、他者を排除する傾向にあるため、仲間外れなどの人間関係のもつれが生まれやすくなるのです。
入学後の時期に上手く友人関係を作れないと、クラスでの孤立をしかねないという不安を抱える子供が多いことから、新しい生活に慣れるまでは子供の様子に気を配りながら、見守ってあげることが大切です。
3.環境の変化に戸惑いを感じる
小学校では担任の先生がほとんどの授業を受け持つのに対して、中学校からは教科担任制に変わります。小学校の時に比べて担任教師と顔を合わせる機会が減るため、小学校までの教師との関係性とのギャップを感じたり、教師との相性やコミュニケーションに悩んだりする子がいます。
特に中学校では、計画的に勉強を進めていかないと、部活との両立や高校受験は難しいため、いかに自立学習を身につけるかが大きな鍵となります。分からないことをそのままにせずに、その都度解決し、自ら進んで予習や復習をする積極性や意欲が必要です。
第二次反抗期でさらに問題が複雑に
この時期は、12歳~15歳の子供にみられる第二次反抗期と重なる、何にでも反発したがる年頃でもあります。親としては学校での生活が気になって、それまでに増して干渉しすぎてしまうかもしれませんが、適度な距離をおくことを心がけ、子供の自主性を促すことも大切です。
さらに、中学校に入ると「校則の遵守」という、小学校にはなかった新たな壁に直面します。校則によって、服装や髪形から、放課後の行動まで細かく制約されるため、徐々に中学校生活に窮屈さを感じて、学校や教師に対して反発するような態度をとるようになる子もいます。
中1ギャップに陥りやすい子とそうでない子の違い
中学校に入学した時、スタートラインはみんな一緒のはずなのに、なぜ中1ギャップに悩む子供とそうでない子供に分かれてしまうのでしょう。それには、次のような子供の特徴が、少なからず影響を与える場合があります。
中1ギャップになりやすい子供の特徴
中1ギャップは本人にとって、解決したくてもできない、どうしようもないジレンマになります。中1ギャップに陥りやすい子供の特徴は以下の通りです。
コミュニケーションが苦手
「初対面の人と話すのが苦手」「自分から人に話しかけられない」など、人とのコミュニケーションがあまり得意ではない子は、他の子に比べて、中学校の新しい生活に慣れるまでに時間がかかってしまいます。
要領が悪く不器用
中学では、自分なりに工夫をしながら、効率的に勉強を進めることが重要になります。そのため、やり方が分からないまま何となく勉強をしている子や、ダラダラと時間ばかりかけて勉強をしている子は、あまり効果的とはいえません。
万能感が強い
「自分は何でもできる」「本気を出せばできる」という万能感が強い子は、努力せずに楽ばかりしたがるだけでなく、理想の自分と現実の自分のギャップが大きければ大きいほど、現実が受け入れられなくなる傾向にあります。
承認欲求が強い
「他人から認められたい」という気持ちが強い子は、中学校に上がって自分を発揮する場を見つけられない場合や、自分の理解者が身近にいない場合、自分に自信を持てなくなって挫折感や劣等感が強くなります。
コツコツと勉強するのが苦手
中学校の授業に遅れないためには、毎日の予習・復習が欠かせません。また、中間テストや期末テストで良い結果を出すためには、一夜漬けで何とかしようとせずに、あらかじめ計画を立てて、じっくりと勉強を進める必要があります。
ここでまで、中1ギャップに陥りやすい子供の特徴をみてきましたが、それでは、逆に中1ギャップにならないのはどんな子供なのでしょう。主に、次のような特徴があげられます。
中1ギャップを起こしにくい子供の特徴
- 人懐っこく友達が多い
- 考え方が柔軟
- 小学校で必要な基礎学力が身についている
- 自分で考えて行動することができる
- しっかり自己主張ができる
- 人の気持ちを推し量ることができる
- 目上の人と接することに慣れている
中1ギャップが与える子供への影響は?
環境が変化すれば、それまでの環境との違いにギャップを感じるのは当然のことですが、あまりにもギャップが大きすぎると、子供に次のような悪影響を与える恐れがあります。
- 中学に入ってから成績が下がる
- 学校生活に対して不安を感じる
- 学校に行っても楽しくない
最近では、中1ギャップを解消するために、小中連携や一貫教育を取り入れる自治体が増えています。互いの学校の教師が情報交換、教師や生徒の交流などの取り組みによって、不登校や人間関係などの問題解消を目指しているのです。
親がとるべき中1ギャップへの3つの対応
中学校に入学後、「子供の様子がおかしい」「あまり学校が楽しそうではない」など、子供に中1ギャップによる変化が見られる場合、親は何をすべきでしょう。中1ギャップ子供のサポート方法を4つ紹介します。
1-漠然と「勉強しなさい」と言わない
うちの子は「勉強をしなさい」と言わないと、ちっとも勉強しなくて…とお悩みのママは、便利だからといって「勉強しなさい」という言葉を言いっ放しにしていませんか?
東大生の親は勉強しろと言わなかった
東大に合格したほとんどの子供の親は「勉強しろ」と言わなかった、という話は有名ですが、それは勉強するように言葉で命令しなかったというだけで、実は陰では、勉強につながる環境作りをしていたという親が多いのです。
リビング学習はその代表例ですが、そのほかに、小さい頃から机に向かう習慣を身につけさせたり、集中力につながる習い事をさせていたりと、「勉強させる」のでなく「勉強したくなる」ように仕向けているといえます。
「勉強しなさい」と言うだけではダメ
「言うは易く行うは難し」という言葉があるように、「勉強しなさい」と言うのは簡単なことですが、言うだけで何も行動しなければ子供は勉強しません。どうすれば子供がやる気になるのかを研究することも必要なのです。
特に、中学の勉強は親が教えられるレベルのため、勉強そのものを教えてしまう親が多いのですが、重要なのはどのように勉強をしたらいいのかを教えることです。勉強のやり方が分かれば、子供は自分から勉強をするようになります。
2-中学生としての自覚を持たせる
小学校気分が抜けていないと、遊びも勉強も小学校と時と変わらないまま過ごしてしまいがちなため、中学校の入学を機に、中学生としての自覚をしっかりと持たせて、新生活に向けて心の準備をさせておく必要があります。
中学生としての自覚とは?
中学生になったら、小学生の頃とは違うということを、きちんと意識させることが大切です。特に、次のようなことついて家族で話し合って、日頃から子供に意識させるようしましょう。
- できることは自分でする
- 約束は必ず守る
- やると決めたらやり遂げる
- 人のせいにしない
- 弱い立場の人に優しくする
子供の自立を促す際の注意点
親が「○○しなさい」と行ってしまうと、親にやらされている感が強くなってしまいます。そうならないよう、目的意識をはっきり持たせて、自分のためだということはっきりとを理解させなければなりません。
また、何かをさせようとしたときに、決してご褒美で釣ってはいけません。「○○したら△△を買ってあげる」のような取引をしてしまうと、自立どころか報酬が得ることだけを目的にするようになってしまいます。
3-自己有用感を高める
自己有用感を高めることによって、中1ギャップの防止や解消につながります。自己有用感を持つことによって、子供の中1ギャップにどのような影響を与えるのでしょう。
自己有用感と自己肯定感の違い
自己有用感や自己肯定感は、「自分は人の役に立つ人間だ」「自分には価値がある」という非常によく似た感情ですが、自己肯定感は自己評価にとどまるのに対して、自己肯定感は他者の評価なくしては得られないという違いがあります。
自己有用感は、他者に褒められたり、頼られたりすることによって獲得されます。それに対して、自己肯定感は、成功体験などにより自分自身を肯定的に捉えることで獲得される感情です。
自己有用感が中1ギャップを乗り越える鍵
小学校では活躍の機会に恵まれていた子供が、中学校に入ってから「自分の発揮できない」「自分を認めてもらえない」という気持ちが強くなり、自己有用感を持てなくなることで、中1ギャップに陥ることがあります。
自己有用感の喪失によって自信が持てなくなると、「やる気が出ない」「すぐに諦める」という悪循環に陥りやすいため、日頃から子供の自己有用感を高めて、自信を持たせることが大切です。
理想と現実の差を縮めて中1ギャップを乗り越えよう!
我が子を中1ギャップでつまずかせないためには、小学校時代の過ごし方も大変重要となります。「中学校ってどんなところなどか?」「中学校に行ったら何をしたいか?」など、中学校生活について入学前に家族で話し合って、具体的イメージを持たせることも大切です。
また、小学校での基礎学力が足りていないと、中学校に入ってから学習面で後れをとる可能性があるため、小学校の段階で必要な学力を身につけておかなければなりません。保護者面談の際に、「学力に問題がないか」「極端に苦手な教科はないか」などについて確認し、問題点についてしっかり把握しておきましょう。
中1ギャップが原因で学校が楽しくなくなってしまうと、学校に行くことが負担になりかねないため、学校楽しくないが行きたくないに変わる前の接し方を参考に、子供の中学校生活をサポートしてあげることが重要になります。