家庭訪問のスタイルが変化!今は玄関先が主流に
かつて、家庭訪問と言えば客間に先生をお迎えして、お茶とお菓子で先生をもてなしながら話しを聞くことが一般的でした。ですが昨今、客間やリビングに招き入れずに、玄関先で応対するスタイルが一般的になっているようです。
ベネッセが小学校1年生~中学校3年生の保護者(回答者数1,362人)を対象に実施した調査によりますと家庭訪問に所要した時間は5~10分の家庭が44.0%、次いで11~20分が38.6%となり、20分以下の短時間で終わるケースが8割以上であることが分かりました。
また、実施した場所もリビングが44.6%、玄関先が43.8%と、玄関先で簡単に済ませる方がほぼ半分であることも分かっています。
玄関先で家庭訪問を行うのは先生と保護者の負担を減らすため
玄関先で家庭訪問を済ませたいと思う保護者からは、「掃除が大変」「プライバシーに関わることなので、あまり家の中を見られたくない」という意見が多く、先生サイドからも、「1日に訪問する家庭数が多いので、1軒に長い時間を使用できない」という声が多数聞かれました。
ベネッセの調査では、約半数の保護者が先生に飲食物を提供したと報告されていますが、このような気遣いも忙しい先生や時間的余裕がない保護者にとっては負担になると考えられます。
家庭訪問に時間が取れない理由
仕事を持つ保護者や小さい子供などに手がかかる保護者の場合、家庭訪問の時間を捻出するのは難しいと考えられます。
ですが、「仕事」として家庭訪問を実施する先生が、家庭訪問にあまり多くの時間を割けないのはなぜでしょうか?
お稽古ごと等で時間の制約がある
数十年前に比べると、学校が終わってからお稽古事や学習塾などの課外活動を行う子どもたちが増えています。ほとんど毎日、何かしらの課外活動を行う子どもも少なくなく、「17時以降は子どもも親も出かけている」等、時間的な制約がある家庭が増えています。
あまり多くはありませんが、家庭訪問の際に子どもを同席させるスタイルを実施している学校の場合は、家庭訪問の時間も限られてしまうことになってしまうのです。
共働き家庭が増えた
また、共働き家庭も増えていますので、先生が指定した日時に仕事を調整することが難しいと考えるママやパパも少なくありません。保護者の都合を優先させていると、18時以降や19時以降の通常の会社では退勤時間を過ぎている時間帯に家庭訪問を実施しなくてはならないことになってしまいます。そのため、1日当たりに訪問できる軒数も減ってしまうことがあるでしょう。
少子化で広域学区が増えた
少子化の影響で、いくつかの学区が統合して非常に広域の学区になった地域もあるでしょう。そのため、子供の家と家の距離も大きくなってしまい、1日に訪問することができる家庭数が少なくなることもあるのです。
研修等、先生の仕事も増えた
放課後に実施される会議や研修、資料作り、地域の見周り活動等、先生の仕事も年々多様化しています。そのため、家庭訪問だけに多くの時間を取ることが難しいと考える先生も少なくないのです。
玄関先で応対しても失礼にならないためには
時間的・地域的な制約等から学校側から家庭訪問開始前に「玄関先で、短時間で失礼いたします」の通知があるケースも増えています。もちろん、このような通知があるなら、敢えてリビングや客間に先生を案内せずに玄関先で対応する方が良いでしょう。
無理強いするように先生を家の中に案内すると家庭訪問のスケジュールにも影響が出てしまい、次の家庭を訪問する時刻に遅れることから、次の保護者を待たせることにもなります。
次の家庭やその次の家庭を訪問する時間がずれてしまうと、保護者たちの予定(夜勤に行かなくてはならない、〇時までに下の子どもを保育園に迎えに行かなくてはならない等)にも支障が出てしまいますので先生が「短時間で」と伝えるときは、必ず指示に従うようにしましょうね。
玄関先ならではの家庭訪問マナー
玄関先で家庭訪問を受けるときに失礼にならないマナーを紹介します。担任の先生もマナーの良い対応をされると気持ちよく家庭訪問を終えられますよね。
たたきに降りて、目線の位置を同じにして話をする
玄関先で、立ち話スタイルで家庭訪問を受ける場合、今風の玄関と廊下にほとんど段差がないバリアフリータイプのご家庭ならそのまま話してもさほど目線の位置は変わりません。ですが玄関のたたき部分と廊下に15cm以上の段差があるご家庭なら、保護者もたたきに降りて目線の位置を同じにする方が、保護者も担任の先生も心理的な威圧感を覚えずに話しをすることができるでしょう。
大人が2人立つことも難しいくらいに、たたきがあまりにも狭い場合は保護者がたたきに下りずに膝をついて話しを傾聴するスタイルを取るのも良いでしょう。
座布団を用意する
玄関のたたき部分と廊下部分に段差が充分にある場合は、座布団を廊下部分に敷いて、座るように先生に勧めるのも良いでしょう。そのときは、話しを聞くときに保護者側も座り目線の高さを合わせるようにしましょう。
先生が来てから座布団を用意するのは、あまり見栄えのすることではありませんので先生が来る時間帯に合わせて予め敷いておきます。
玄関スペースに余裕があるなら椅子を用意
玄関のたたき部分と廊下部分にあまり段差がないバリアフリータイプの家では、玄関スペースに余裕があるなら椅子を2脚置いておくのも良いでしょう。先生も保護者もくつろいで話すことができますし、家のリビングや客間に上がってもらう必要もありません。椅子だけでテーブルは置かないのでお菓子やお茶を出さないとしても不自然にはなりませんよ。
お茶や携帯できる飲み物を用意
先生が来る時間に合わせて、お茶などの飲み物を準備しておくこともできるでしょう。昔と比べると家庭訪問が簡略化されてきたとは言え、まだ半数ほどの人が先生に飲み物やお菓子を出しています。
お知らせなどのプリントで、「お茶やお菓子などは、断固として受け取れません」と書かれていないなら、お茶や簡単なお菓子は準備しておく方が良いかもしれませんね。
どんなに勧めても先生が着席してくれないときには、ペットボトルなどのお茶を手渡すのも良いでしょう。生徒一人一人の家ではあまり時間が取れなくても、移動時間は結構かかっている可能性もあります。後で好きなときに飲んでもらえるように、冷たく冷やしたペットボトルを準備しておくのも1つのアイデアです。
お茶やお菓子を出さなくても失礼にならない
お茶やお菓子は好意で提供するものなので先生が家に到着する直前に帰宅したときや、手ごろなお茶やお菓子が家にないときは何も出さなかったとしても失礼に当たりません。
先生は家に迎えるお客さんですが仕事として1日数軒を回るため各家庭でお茶やお菓子を頂いていると、お腹が苦しくなるだけでなく、トイレにも通わなくてはならなくなります。
そのため遠慮する気持からではなく、本当に困ると思って「お茶やお菓子は受け取れません」と言っていることもありますね。
玄関スペースに余裕がないマンションでの対応
マンションやアパートなど玄関先のスペースにあまり余裕がない場合の家庭訪問の対応を紹介します。
狭い玄関では座布団・お茶は不要
玄関先のスペースに余裕がない。しかも、リビングや客間には上がってほしくない。このようなときは、玄関先の立ち話スタイルで家庭訪問を済ませるようにしましょう。
狭いのに無理に座布団や椅子、お茶やお菓子をセットすると、先生も居心地悪く感じてしまうかもしれません。
声が筒抜けのときはドアを開けたままリビングへ案内
男性の先生をママが応対するとき、もしくは女性の先生をパパが応対するとき、ドアを敢えて開けたままにして家庭訪問を行うように担任の先生が指導されていることもあります。
ですが、マンションのように玄関と隣の家の玄関との距離が近いときは、話し声が筒抜けになり、個人的な話がし難いですよね。話し声が響いて同じ階の住民に迷惑をかけてしまうこともあります。
このようなときはリビングか客間に案内し、部屋を閉め切らないようにして子供と一緒に話しを聞きましょう。家の中に入ってほしくないときは、一言「声が響きますので、ドアを閉めても良いですか?」と先生に了承を得るようにしましょう。
マンションの共用スペースを利用する
マンションの1階部分、もしくは吹き抜けのあるマンションの2階部分に住民なら誰でも使用できる共用スペースがあります。この共用スペースにソファなどが置かれているときは、家庭訪問での話し合いに使うのも良いですね。
先生がどうしても子供部屋を見たいというときは別ですが、多くの学校で家庭訪問は地域の確認・通学路の確認目的で実施されているので、マンションの1階まで来てもらえれば先生の目的も果たしつつ、家に上がってほしくないという家庭の事情も解決できます。
その他にも、会議室や小さな個室を前もって予約すれば利用できるマンションもあります。先生が家庭訪問に来られる日に合わせて予約しておきましょう。
トイレ掃除はしておこう
「玄関先で失礼します・・・」と言いながら玄関先で話し合いをしたとしても、先生が突然、「トイレをお借りしても良いですか?」と尋ねることがあるかもしれません。色々なところでお茶をごちそうになっている場合や、普段あまり飲まないカフェインたっぷりの緑茶を飲んでいる場合は、どうしてもトイレが近くなってしまいますよね。
また、住宅地を回るときは、繁華街とは異なり、気軽に利用できるトイレがないので、どこかのお宅ではトイレを使うことになるのも当然です。
急にトイレを使いたいと言われても慌てないように、玄関先で家庭訪問を行うことが事前に案内されたとしてもトイレ掃除はしっかりとしておきましょう。そして、玄関からトイレに移動する際に使用する廊下と洗面所もキレイにしておくと安心です。
玄関からトイレに移動する動線上にいくつか部屋がある場合は事前にドアを閉めておくようにしましょう。先生がトイレに行くときに慌てて部屋を閉めるのは「あまり掃除ができていないのかな?」と余計な推測をさせてしまいますので避けたいものです。
徹底的に玄関をキレイにする方法
玄関で5分~20分ほど話しをするということは、玄関のちょっとした汚れやゴミなども先生の目に入る可能性が高いと言うことになります。先生をお迎えするにあたり、できる限りキレイに掃除しておきたいですよね。
先生の目線に立って汚れをチェックする
立ったまま話す場合、先生が立つ位置に一度立って見ましょう。意外と廊下の奥まで見えてしまったり、廊下の隅にあるほこりが気になるかもしれません。先生が背の高い方なら靴箱の上のほこりや絵画の上、ペンダントランプのシェード部分も拭いておくと良いでしょう。
椅子や座布団に座ってもらう場合どのような場所が気になるのか、一度実際に座って確認して見ましょう。靴箱の下やスリッパ立て、スリッパ立ての裏側、傘置き場などのほこりや汚れが気になるかもしれません。
電球を付け替える
玄関が暗いと、汚れたような印象を与えてしまいます。なんとなく薄ぼんやりとしているなと感じるなら、玄関のペンダントランプやダウンライトの電球を付け替えて見るのはいかがでしょうか。
ただし明るくなる分、隅々まで良く見えるようになりますので掃除は念入りに行いましょうね。
絞った雑巾でドアノブ掃除
ドアノブがべったりとしているなら、いきなり印象が悪くなってしまいますよね。ドアノブは一日に何度も触る部分なので、先生が到着する直前に硬く絞った雑巾でピカピカに磨いておきましょう。
もちろん、トイレのドアノブもべたつきがちな場所ですので、先生が到着する直前にキレイに磨いておきます。
先生への敬意を表現すれば玄関先でも大丈夫
学校からも玄関先での対応を推奨することが一般的なので、玄関先で応対したからと言って特別に悪い印象を先生に持たれてしまうということはありません。
ですが腕組みしたまま先生と話したり見下ろすような位置に立って話したりするならば、不快な印象を与えてしまう恐れがあります。
子どもがお世話になっている人なので敬意が表現できるように立ち位置や話し方に気をつけるようにしましょうね。