ボーイスカウトとはどんな団体?目的は?
ボーイスカウトとはどんなものなのか、今の親世代でも知っている人は少ないのではないでしょうか。将来の可能性を広げたり、能力を高めるために、子供には様々な経験を積んでほしいと願うパパママは多いでしょう。学校教育以外でそうした機会を持つとなると、習い事という選択肢が思い浮かぶ方も多いでしょう。しかし、そんなパパやママこそに知っておいてほしいのが「ボーイスカウト」です。
ボーイスカウトとは、野外活動や社会奉仕活動などを通して、少年の健全な育成を目指す教育活動・団体を指します。
子供の習い事とはやや意味が異なりますが、キャンプや登山などの野外活動など貴重な経験ができますし、実体験を通じて子供の自主性や協調性、社会性を養うことができるのがボーイスカウトの魅力です。
ボーイスカウトの意味と目的
ボーイスカウトは、1907年にイギリスではじまった青少年のための教育活動です。ボーイはその名前の通り「少年」を指し、スカウトとは「先駆者」という意味を持ちます。
ボーイスカウトの目的には、「自ら率先して幸福な人生を切り開き、社会の発展の先頭に立とうとする少年」を育成するということが挙げられています。
設立から100年以上経ちますが、現代でも「Creating a Better World(より良い社会を作る)」というスローガンのもとに、世界中でボーイスカウト活動が行われています。
ボーイスカウトは宗教団体ではない
ボーイスカウトには、「ちかい」や「おきて」という約束が存在します。「ちかい」の中には、「神(仏)や国に尽くす」という文言もあることから、「宗教団体では?」という誤解を受けますが、
ボーイスカウトは、宗教とは関係ありません。
ただし、各ボーイスカウトによって、宗教団体の支援を受けて活動している団体もあります。キリスト教的な価値観について学ぶところもあれば、日本では神社やお寺が母体となって活動しているケースもあります。
また、ボーイスカウトは「信仰心は、誰も見ていなくても正しい行いをするために、他人や自然を大切にする心を養うために必要である」と信仰を持つことそのものに関して推奨しています。
そうした価値観があまり馴染まない家庭では、できるだけ宗教的要素がない団を選ぶと良いでしょう。
女の子もボーイスカウトへの入団は可能
「ボーイ」が少年を指すため、男の子のみの団体をイメージしますが、現代のボーイスカウトは女の子の入団も可能です。
ただし、やはり「ボーイスカウト」という名前や活動内容から、男の子のほうが多い団が一般的なので、女の子用の更衣室がなかったり、女性の指導者がいないケースもあります。
「ガールスカウト」も存在する
女の子が活動する「ガールスカウト」という団体もあり、「ボーイスカウト」とは兄弟関係にあると考えてよいでしょう。
ボーイスカウトの設立者であるロバート・ベーデン・ポウエルの妹のアグネスや妻のオレブ・ベーデル・ポウエルに活動を引き継ぎ、より女性に適した活動内容や役割を意識しているのがガールスカウトの特徴です。ボーイスカウトに女の子は入隊できますが、男の子はガールスカウトには入隊できません。
ガールスカウトは、人種・国籍・宗教の差別がない、幸福な社会に貢献できる女性を育成することを目的にしています。
ボーイスカウトの活動内容とは?
ボーイスカウトでは、いったいどのような活動を行うのでしょうか?ガールスカウトも活動内容はほぼ同じです。
野外活動
ボーイスカウトは、やはり野外活動が中心で、大自然の中に身を置くことも珍しくありません。体を鍛えて、自然への感謝や畏敬の心を学び、強い意志を身につけていきます。救急法など、自然の中や災害時のアクシデントを乗り越えるための知識も学べるように、プログラムが組まれています。
ボーイスカウト活動は、基本的には学校が休日の土曜日や日曜日に行われますが、夏休みには長期のキャンプ活動を行い、仲間と協力して生活する経験を積ませることも可能です。
その他のボーイスカウト活動
野外での活動以外にも、ボーイスカウトには様々な活動があります。普段はなかなか見られない、施設の見学ができる団もあります。また、雪が降る地域では、ウインタースポーツが活動に組み込まれているケースもあります。
- 手旗信号の練習
- 工作(ウッドクラフト等)
- スポーツやゲーム
- 料理
- ボランティア活動
- 施設見学
- 演劇
- スキーやスケート
ボーイスカウトはグループでの活動が基本
ボーイススカウトの班での関わりは、学校の友達関係とは異なります。こうした異年齢の集団内で、各自に役割を与えることで、責任感が生まれます。
ボーイスカウトでの活動は、6~7人程度の班に分かれて活動しますが、以下の特徴があります。
- 異年齢の集団であること
- 班の一人にリーダーシップをとらせる
- 班の運営のために明確な役割分担を行う
科目を学習すれば進級章がもらえる
ボーイスカウトには進歩制度というものがあります。この進歩制度の科目を学習することで、進級章がもらえます。
進歩制度は全員共通で学ぶ修得科目、個人で選択する選択科目があります。選択科目はおよそ40科目〜70科目あるため、自分の興味のある科目を選べるのが魅力です。
進級章は取得すると左胸ポケットに着用します。ボーイスカウトは見習いバッジ(黄色)、初級章〈緑色〉、2級章(青色)、1級章(赤色)、そして菊章(紺地に白の菊の花)の計5種類あります。
ボーイスカウトはいくつから入れるの?
ボーイスカウトには、5つの部門が存在します。部門によって入れる年齢や活動内容が変わりますから、確認してみましょう。
- ビーバースカウト
- カブスカウト
- ボーイスカウト
- ベンチャースカウト
- ローバースカウト
ビーバースカウトは、保護者も一緒に活動する
ビーバースカウトはスカウトの中でも一番小さいクラスです。小学1年生(年長3月から入隊可能)から小学2年生までの子供を対象にしているスカウトです。活動日数は月に2回ほどです。
他のスカウトと明らかに違うのは、基本的な活動は保護者同伴ということです。隊の構成は隊長・副隊長(補助者)・隊員・そして保護者となっています。
活動内容は、保護者と子供の意見をもとに決められることが多いので、隊によって活動内容が異なりますが、芋掘りやザリガニ釣りなど、アクティブに自然を満喫する活動が多くなっています。また施設見学や料理を行ったり、公民館などで活動を行うこともあります。
カブスカウトは目標に向かって自主的に取り組む
カブスカウトは小学3年生から小学5年生までの子供が対象のスカウトです。ビーバースカウトからは、保護者の同伴が必要なくなります。子供たちで協力しあい、活動を行うようになります。
ハイキングなどの野外活動が増えていき、活動内容には課題や目標があり、達成することでワッペンがもらえます。夏はキャンプ活動も増えるのが一般的です。
入団したら体験したい「カブ弁」
カブスカウトになると、「カブ弁」「スカ弁」と呼ばれる弁当を自分たちだけで作って、屋外活動に出かけることがあります。とはいっても、カブ弁とは、基本的におにぎりのみを指しています。
団によっては、お茶OKだったり、多少のおかずの持ち込みが認められているケースもありますが、カブ弁には「手が汚れても食べられる」「その場ですぐにエネルギーになる」などのメリットがあります。ちなみに、飲み物も水以外のものは持参してはいけません。もしも怪我した場合、飲み水で傷口を洗い流せるようにしておくためというのがその理由です。
ボーイスカウトとは、単に野外活動を楽しむための団体ではありません。自然の中でたくましく生きていくための知恵や行動を学んでいくのがカブスカウトです。
ボーイスカウトはハードな自然に身を置き長期のキャンプ活動もある
ボーイスカウトは小学6学生から中学3年生の夏休みまでが対象のスカウトです。構成は隊長・副長・隊員となっています。
ボーイスカウトになると、活動場所へは、基本自転車移動になります。登山など、ハードな自然に身を置く機会も増えてきます。
夏には4泊程度で遠出のキャンプがあります。本格的なテントを使って寝袋生活を行うため、自然の中で生活するための本格的な知恵を学べるでしょう。
ベンチャー・ローバースカウトは自分たちで計画を立てて活動する
ベンチャースカウトやローバースカウトになると、定期的な活動はなくなります。ベンチャースカウトは高校1年生から高校3年生、ローバースカウトは18歳から25歳までが対象となっています。
自分たちで計画を立てて、奉仕の心を養うことを目的に活動することや、地域での活動、環境のための活動が多くなります。また、隊全体の行事などに参加したりもします。
ボーイスカウトのメリット!どんな力が身に着く?
ボーイスカウトを始めることで学べるメリットを確認してみましょう。精神的にも肉体的にも子供の成長が期待されます。
社会性・協調性・忍耐力が身につく
仲間と協力して活動していくボーイスカウトは、時に意見がぶつかることもあります。しかし自分が困っている時には仲間が支えてくれますし、仲間が困っている時には助けるという精神が大切です。
ボーイスカウト隊員は、「自分のことだけを考える人間」ではいけません。仲間と協力し、課題を成し遂げることで、社会性や協調性、忍耐力が養われます。
「強さ」と「優しさ」両方の大切さを教えられる
アウトドア活動が多いボーイスカウトは、強い体を作ることができます。同時に、ボーイスカウトはボランティアなど社会貢献活動も多いのが特徴です。
ボーイスカウトの『ちかい』や『おきて』には、「他の人々を助けます」「スカウトは親切である」といった記述があります。強い人間は優しい心を持っていなくてはいけないと考えられているのでしょう。
野外生活の技術が身につく
ボーイスカウトではキャンプなど大自然の中での活動が多くあるため、野外生活の技術を学ぶことができます。手旗やロープの練習を行ったり、救急法を学んでおけば、災害時などにも役立ちます。
子供に「生き抜く力」を身につけさせておくと、親としては安心に繋がります。
世界で活躍するボーイスカウト経験者たち
ボーイスカウトは、世界169の国と地域で、約4000万人が活動しています。ボーイスカウト経験者の中には、様々な分野で活躍し、成功を収めている人物が存在します。
どんな職業や有名人の方がボーイスカウト出身なのか、参考までにご紹介します。
宇宙飛行士の2/3以上がボーイスカウト経験あり!?
ボーイスカウト日本連盟によれば、アメリカのNASAで活躍している宇宙飛行士の2/3がボーイスカウトの出身者というデータがあります。アポロ計画で月面に立った宇宙飛行士は12人いましたが、その中の11人がボーイスカウト出身者でした。
日本人宇宙飛行士のひとり野口聡一さんも小学2年生でカブスカウトに入隊して以来、熱心に活動に取り組んできたという経歴の持ち主です。
大統領・起業家・映画監督などのスカウト出身者
著名なボーイスカウト経験者としては、以下の人物がよく知られています。
- ジョン・F・ケネディ(第35代アメリカ合衆国大統領)
- ウィリアム・J・クリントン(第42代アメリカ合衆国大統領)
- ビル・ゲイツ(マイクロソフト社の創業者)
- スティーブン・スピルバーグ(映画監督)
特にスピルバーグ監督は、12歳のときにボーイスカウト活動として8ミリカメラで映画を作り、スカウト仲間たちに上映したところ好評を得ました。この体験によって、映画作りの面白さに目覚めたスピルバーグ監督にとって、映画監督になるキッカケを与えたのはボーイスカウトと言っても過言ではありません。
日本でもスカウト出身者の有名人が多くいる
日本の有名人の中にもボーイスカウト出身という方が多くいます。
テレビのバライティ番組などでハードな企画に挑戦しているお笑いタレントの宮川大輔さんもボーイスカウト出身です。トーク番組でボーイスカウト時代の経験について語ることもあり、2015年にはボーイスカウト運動に貢献した人に贈られるスカウティング褒章を受章しました。
他の受賞経験者には、宇宙飛行士の野口聡一さんやサッカー元日本代表監督の岡田武史さんなどが挙げられます。
ボーイスカウトにかかる費用
ボーイスカウトにかかる費用は所属する地域の団によって異なりますが、一般的な費用はどのぐらいかかるのか確認してみましょう。
月額は5,000円以内・初期費用のみ1~2万円
ボーイスカウトは月2~3回活動する団が多いですが、月にかかるお金はキャンプの積み立てなども含めて3,000円~5,000円程度。交通費が必要なければ、2000円以内で済むケースもあります。
初期費用としては2万円近いお金がかかることもありますが、兄弟での入団などは割引してくれるケースもあります。
ボーイスカウトにかかる費用目安
【初期費用】
- 入団費(初年度のみ):4,000円
- 年間登録料:4,000円
- 制服代:10,000円
【月額費用】
- 活動費:月1,000円~2,000円
- 交通費(月2~3回の活動):月1,000円
- キャンプ積立金:月1,000円~2,000円
制服代がネックだけれどおさがりでOK
制服代は、サイズがかわったときはもちろん、ビーバースカウトからカブスカウト、カブスカウトからボーイスカウトなど、隊が変わるごとに買い替えが必要です。
ただし、制服は先輩からおさがりしてもらい、費用を抑えることが可能です。入団前に譲ってくれる人がいると、初期費用をかなり削減できます。
豊富な体験内容に対して費用が「安い」という声も!
ボーイスカウトをさせている家庭によると、多岐にわたる活動内容があるにも関わらず、「費用が安い」という声もよく聞こえます。
ボーイスカウト活動は営利目的での活動ではなく、指導者や役員がボランティアであることは少なくありません。そのため、ピアノやスイミングなどの一般的な習い事に比べて、費用は抑えられる傾向にあります。
また、ボーイスカウトの活動は土日など学校がない日に行われるのが通常です。家族でレジャーに行かずにスカウト活動をするわけですから、かえって年間の支出が下がるというご家庭も多いのではないでしょうか。
ボーイスカウトはたくさんの経験ができる場所
ボーイスカウト最大の魅力は、仲間たちとの野外活動やボランティア活動を通して、様々な経験ができるという点です。
スカウト活動の際には、仲間とぶつかったり、少しの不注意から危険な目に合う可能性もあります。ですが、こうした経験は、学校生活だけではなかなか学ぶことのできない貴重なものです。
自然の中で身を守る方法や救急法などの技能・知識が身に着くだけでなく、社会性やリーダーシップ、優しさなど、生きていく上で必要なスキルを身に着けるのがボーイスカウトの目的です。
子供にたくましく育ってほしいと考えているママやパパは、ぜひ入団を検討してみてください。