足し算の次はこれ!子どもが算数好きになる引き算の教え方
「足し算がやっとスラスラできるようになった!」と安心したのも束の間、次に立ちはだかる大きな壁が「引き算」です。足し算はスムーズに理解できた子どもでも、引き算に入った途端に指を折って数えるのに時間がかかり、算数そのものに強い苦手意識を持ってしまうケースは少なくありません。
足し算が「合わせていくつになるか」という増える計算なのに対して、引き算は「残りはいくつになるか」という減る計算です。一見するとただの逆の発想に思えますが、引き算をスムーズに解くためには「10までの数の合成と分解」という基礎がしっかりと頭に入っている必要があります。

ここでつまずきを放置してしまうと、後々学ぶ掛け算や割り算、さらに高学年での文章問題まで、すべての算数において悪影響を及ぼしてしまいます。だからこそ、最初の段階で「引き算って楽しい!」と思ってもらえるような、家庭での丁寧なサポートが重要です。子どもが算数を嫌いにならず、自信を持って計算に取り組めるようになるための効果的な教え方を一緒に見ていきましょう。
どうしてつまずくの?引き算が苦手な子どもに見られる特徴
引き算が苦手な子どもには、いくつかの共通するつまずきポイントがあります。どこでつまずいているのかを親が正しく見極めることが、解決への第一歩です。
「プラス」と「マイナス」の概念が混同してしまっている
プリントの問題を解いている時、「8-3」という問題を見ているのに、無意識に「11」と足し算の答えを書いてしまうシーン。
発達の観点から見ると、小学1年生はまだ記号の意味を瞬時に切り替える力が育ち切っていない段階にあります。今まで「+(プラス)」ばかりを見てきたため、急に「-(マイナス)」が出てくると脳が処理しきれずに足してしまう行動が出やすく、だからこそ「このマークはどっちかな?」と一問ずつ確認する関わり方が合いやすいのです。
引き算が苦手な子は、そもそも計算のやり方がわからないのではなく、「引く」という指示自体を見落としていることがよくあります。まずは計算記号を丸で囲ませるなど、視覚的に意識させる工夫が必要です。
「減る・残る」というイメージが頭の中で描けない

数字だけを見て計算しようとすると、足し算のように「数が増える」ことは想像できても、「減る」という現象がいまいちピンとこない子どももいます。
子育ての現場でよくあるのは、親が「どうして引けないの!」と数字だけで説明しようとするケースです。良かれと思った論理的な説明が、子どもには「イメージできない暗号」と映ってしまい、かえって算数への拒絶反応を生む原因になることがあります。減るという概念は、「お菓子を食べた」「友達に一つあげた」「公園から帰った」という具体的な日常の動作と結びつけて、残りの数を求めるのだと理解させることが大切です。
おうちで実践!引き算への興味を引き出す3つのステップ
引き算の概念を教えるには、頭の中だけで計算させるのではなく、体と五感を使って「引く感覚」を掴ませることが重要です。
1. 成功体験を積み重ねて「できた!」の喜びを味わわせる
算数学習において最も重要なのは、「自分はできる!」という自信です。引き算に入ったばかりの時は、いきなり難しい問題や応用問題をやらせてはいけません。
「5-1=」「4-2=」といった、指を使えば絶対に間違えない簡単な問題だけをたくさん解かせ、丸つけをして「すごい!全部正解!」と思い切り褒めてあげましょう。できることは楽しいことであり、子どもが最も集中力を発揮する瞬間です。応用に進むのは、基本の計算が完璧に、自信を持って解けるようになってからで十分です。
2. おはじきや積み木を使って、数を「分ける」練習をする

机の上に飴やおはじきを適当な数だけ置き、「ここから3つ取ってみて。残りはいくつになった?」と、実際に物を動かしながら残りの数を当てるゲームをしてみましょう。
数字や問題を「視覚化(目に見える形にする)」することは、算数において絶大な効果を発揮します。実際に手で物を動かすことで、「全体から一部を取り除くと、残りが答えになる」という引き算の本質が感覚として身につきます。これができるようになったら、「今やったことを式にしてみようか」と数式に落とし込む練習に進みます。
3. 指を使った「5までの引き算」からスモールステップで進む

最初は、片手で収まる「5までの引き算」から教えるのがベストです。「5-3」や「5-1」など、片手の指を折るだけで視覚的に答えがわかるため、子どもにとって非常にとっつきやすいからです。
「指を使って計算するのは恥ずかしい」と無理にやめさせようとする親もいますが、計算を始めたばかりの幼児や小学1年生にとって、指は「持ち運びができる最高のそろばん」です。指を使って確実に正解を出せるようになれば、やがて頭の中でイメージできるようになり、自然と指を使わなくなっていきます。
小1算数の最大の壁!「繰り下がりのある引き算」の教え方
小学1年生の算数において、多くの親と子どもを悩ませる最大の山場が「繰り下がりのある引き算(例:13-8)」です。ここでつまずいてしまうと、その後の大きな桁の計算でも苦労することになります。
なぜ難しい?「10のまとまり」を崩す操作の複雑さ
繰り上がりのある足し算は「10のまとまりを作る」というプラスの作業でしたが、繰り下がりのある引き算は「10のまとまりを崩して、そこから引く」という複雑な脳の処理が必要になります。
この計算をスムーズに行うためには、「10までの数の合成と分解(例:10は8と2に分けられる)」が完璧に頭に入っている必要があります。もし繰り下がりで何度もつまずく場合は、引き算の練習を一旦ストップし、「10になるペア探しゲーム」などに戻って基礎を固め直すのが一番の近道です。

学校で教わる2つの方法:「減加法」と「減々法」
学校の授業では、繰り下がりのある引き算を解く方法として、主に「減加法(げんかほう)」と「減々法(げんげんほう)」の2種類が教えられます。どちらのやり方が子どもに合っているか、一緒に確認してみましょう。
【例題】13-5 の場合
- 減加法(引いてから足す):
13を「10と3」に分ける。
10から5を引いて、5。
残った5と、元の3を足して、答えは8。 - 減々法(引いてからさらに引く):
5を「3と2」に分ける。
13からまず3を引いて、10。
10から残りの2を引いて、答えは8。
【対比表】減加法と減々法、どっちの教え方が我が子に合う?
| 計算方法 | メリット | デメリット(つまずきやすい点) |
|---|---|---|
| 減加法(引いて足す) | ひっ算に応用しやすく、学校で主流の教え方 | 引き算なのに途中で「足し算」が入るため混乱しやすい |
| 減々法(2回引く) | 「引く」という動作が連続するため感覚的に理解しやすい | 引く数(例題の5)を瞬時に分解する力が必要になる |
一般的には、学校で主流の「減加法」で統一した方が良いと思われがちですが、実際には「子どもが感覚的に理解しやすい方(減々法など)を優先させる」方が、苦手意識は消えやすいのです。なぜなら、計算の途中で足し算が混ざることに強い違和感を覚える発達の特徴があるからで、結果的に「自分に合った解き方」を見つけた方が計算スピードが速くなるという結果につながりやすくなります。答えが合っているのにやり方を無理に矯正して、子どもの自信を奪わないように注意してください。
ミスを減らす!大きな数の計算に必須の「ひっ算」の教え方
桁数が大きくなってきた時に便利なのが「ひっ算」です。ひっ算は、減加法や位(くらい)の概念を縦に書いて視覚的にわかりやすくした優れたツールです。
ひっ算を教える時の3つの絶対ルール
ひっ算で計算ミスをしてしまう子どもは、大抵の場合、以下のルールのどれかを見落としています。親が横について、以下の3つのポイントを徹底的に確認してあげましょう。
- 必ず位を揃えて書く:一の位と十の位がズレていると、絶対に正しい答えは出ません。マス目のあるノートを使って、数字を真っ直ぐに書かせることから始めます。
- 「+」と「-」を忘れずに書く:足し算と引き算が混同しないよう、記号をしっかり書くクセをつけさせます。
- 繰り下がった時は、借りてきた位の数字を「斜線で消して1減らす」:ここが最大のミスポイントです。「10の位から10を借りてきたら、元の数字は絶対に1小さくなるよ」と約束し、メモを書くことをマニュアル化させてください。
10円玉や1円玉などの硬貨(おもちゃでも可)を使って、「10円玉を1円玉10枚に両替してきたから、10円玉は1枚減ったよね」と説明すると、繰り下がりのイメージが非常に伝わりやすくなります。
イライラは禁物!算数が苦手な子への親の正しい接し方

親がどんなに丁寧に教えても、子どもがなかなか理解してくれないと、ついイライラして「なんでわからないの!」と怒鳴りたくなってしまうこともあるでしょう。
怒るのではなく、一緒に解いて褒める「伴走型」のサポートを
算数において、解けなくて叱られることは、子どもにとって辛く悲しい記憶として脳に刻まれてしまいます。「このプリント、全部解いておきなさい」と命令して放置するよりも、親が隣に座って「ここはこうだね」「一緒に考えてみようか」と伴走してあげる方が、子どもは圧倒的に安心します。
パパやパートナーと関わり方をそろえると、子どもにとって「両親ともに自分のペースを認めてくれている」という安心感につながります。家庭内で「計算が遅くても絶対に急かさない、イライラしない」という方針を共有しておくと、子どもが算数に対してリラックスして取り組めるという効果が出やすくなります。
引き算の学習に関するよくある質問(FAQ)
引き算の教え方について、ママ・パパからよく寄せられる疑問にお答えします。
Q1:さくらんぼ計算の意味が全くわからず、親子でパニックです。
さくらんぼ計算は、繰り下がりを視覚化するための補助ツールですが、これ自体が目的ではありません。もし子どもが混乱しているなら、無理にさくらんぼの図を書かせる必要はありません。おはじきやブロックを使って実際に数を動かす練習に戻り、「あといくつで10になるか」の感覚を体で覚えさせることを優先してください。
Q2:引き算の文章問題になると、途端に解けなくなります。
文章題になると「引く」のか「足す」のかがわからなくなる子どもは非常に多いです。「残りはいくつ?」「違いはいくつ?」「どちらがどれだけ多い?」といったキーワードが出てきたら引き算のサインだ、と教えてあげましょう。また、文章の状況を簡単な絵や図に描かせて、視覚的にイメージさせる練習がとても効果的です。
Q3:指を使って計算するクセが抜けません。いつまで許すべきですか?
無理にやめさせる必要はありません。指を使うのは、頭の中のワーキングメモリ(一時的な記憶領域)の負担を減らすための、子どもなりの賢い工夫です。「10の合成と分解」が頭の中で完全に処理できるようになれば、わざわざ指を使う方が面倒になり、自然と暗算に移行していきます。親は焦らず、「確実に答えを出せてえらいね」と認めてあげましょう。
まとめ:焦らずゆっくり、子どもの「わかった!」を見守ろう
数字に触れ始めてからまだ数年しか経っていない子どもが、頭の中で数を増やしたり減らしたりする操作を行うのは、非常に高度で大変な作業です。
「どうしてこんな簡単なことができないの」と焦る気持ちは痛いほどわかりますが、子どもは「工夫すること」「わかったと喜ぶこと」「褒められて嬉しい気持ち」など、色々な初めての感情を積み重ねながら、少しずつ算数への理解を深めています。
まだまだできないことがたくさんあって当たり前の時期です。おはじきを使っても、指を使っても、時には親に手伝ってもらっても構いません。「できたね!すごい!」という親からの温かい褒め言葉が、子どもにとって一番のエネルギーになります。イライラをぐっと堪え、子どもの「わかった!」という最高の笑顔を引き出せるよう、焦らずゆっくりと寄り添ってあげてくださいね。










