競争心がない子供はダメなのか?

競争心がない子供の強み弱み・適度に競争意識を育てる接し方

競争心がないことは本当に良いことなのか、適度な競争心を育てるにはどうすれば良いのかを探っていきます!比較しないこと競争しないことが良いことだと考える向きがあるなか、最近の子供には競争心がなくなってきていると言います。子供が充実した人生を贈るため適度な競争心を育むには?

競争心がない子供の強み弱み・適度に競争意識を育てる接し方

競争心がない子供の良いところと悪いところ

日本では、運動会の徒競争で順位をつけない学校や幼稚園、何でもみんな一緒にすることに重きを置いた教育、努力した結果でなく過程を重視する思考法など、しばしば『競争』を否定するような環境を作ろうとする風潮が見受けられます。

みんな一等賞のかけっこ、みんなお姫様のお遊戯会はしばしば揶揄されますが、競争のない環境を整えようとされる背景には、そもそも競って争う『競争』には賛否両論があり、ネガティブなイメージを持ってしまう人は少なくないからでしょう。

ですが、もちろん競争心を持つことは悪いことではありません。そもそも全くノンストレスな環境は人間にとって最良とはいえず、自分のモチベーションを刺激し、知識を深め技術を高める適度な競争心やライバル意識も成長には必要です。
子供の育った環境や個性により競争心の大きさに大小はありますが、逆に子供に全く競争心がないなら、親はチョット心配になることも出てきてしまいます。

競争しない環境で子供を育てていくことは本当に意味のあることなのでしょうか?『競争』が持つ良い面と悪い面について探っていきましょう。

日本人の競争意識を考えてみる

芝生で競走する子供達

日本の教育は、常に周りと比べられやすい環境にあるといえます。
小学校中学校の義務教育では、子供がどれほど勉強を理解しているかではなく、年齢という条件が大前提となり出来の良い子悪い子を判断するような成績のつけられ方がします。

ですが、日本では常に周りに協調することも昔ながらの美徳のひとつ。そんななか子供たちは周りを意識しつつ、自分を評価判断しつつといった状況に置かれ、過剰な競争心というよりは、抜きんでて出来が悪いわけでなく、みんなと同じ平均的である状況に安心する傾向を持つのではないでしょうか?

まず、競争心を持つことの影響とはどんなものであるかを見ていきましょう。

『競争』はココが問題!

過剰な競争心を持つことには、何か問題があるのでしょうか?

トラブルメーカーな子供になりやすい

競争心の強すぎる子供は、他の子供と接するときに、一緒に遊ぶ仲間としてではなく競争相手として接してしまいがち。自分をアピールする勢いが特徴的です。
一緒にお絵かきしようねと紙とクレヨンを渡しても、「わたしの方が上手に描けるよ!」と絵の出来栄えを比較した発言をしたり、「○○ちゃんの絵は背景が雑」と一緒に絵を描いている子供の批評をしたり、「○○ちゃんにはピンク色のクレヨンは貸さないから」と使う道具で差をつけようとしたりなど、幼少時代にはボス的存在のトラブルメーカーになりやすいと言えます。

大きくなってもこの傾向は続き「わたしはクラスでも一番頭が良い!」「レギュラーになれないなら、クラブ活動も意味がない」と仲間を自分との比較対象としか見ないので、同年代の友人には『付き合いにくい子』という印象を持たれるでしょう。

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優劣の基準でしか判断できない

競争心が強すぎる子供にとっては、何事も「勝つか負けるか」「優れているか劣っているか」で判断してしまいます。1点でも多く取った方が偉いと考えるようになり、自分よりも特定の分野で劣る人に対して、人間そのものが劣っているかのような態度を取ることも・・・。

世の中には点数や勝ち負け以外の基準があることをいくら教えようとしても、「結局は勝った人が偉いんでしょう?」「点数が悪かったら何の意味もない」などの人生そのものを斜めに見るような発言をしたり、場合によっては親や兄弟などの身近な人も見下すようになったりすることがあります。

目に見える成績に偏った価値観は、周りの友人を認め敬うような気持ちを持ちにくいために、人間態人間の信頼関係を築きにくく、結局は誰とも仲良くなれないまま人生を過ごすことにもなってしまいかねません。

扱いにくい

競争心が強すぎる子供は、幼いときから扱いにくい傾向があります。ゲームやじゃんけんなどに負けても大声で泣いたり、勝った相手を突き飛ばしたり、勝つまで勝負することを要求したりすることも。

勝ち負けに執着しすぎてゲームそのものを楽しむ術を知らない様子に、「この人はゲームをして、本当に楽しいのだろうか?」と周囲は思いますが、基本的に競争心が強い子供は勝負事が大好きですので、何度もゲームや試合を要求することが多いです。ですが、真剣に挑み過ぎるあまり、周りにもカ条に真剣さを要求するような言動も・・・。

競争心がもたらす良い結果!

坂を駆け上がる競走をする子供達

では、競争心を持つことは悪いことかというと一概にそうではありません。
適度な競争心を持つことは、個人的な努力や自己鍛錬に結びつき、人が成長する上で欠かせない要素ともなります。

次はもっと頑張ろうと思うことができる

あまりにも勝ち負けに執着しない人や競争心が薄い人は、自ら努力をするモチベーションを持ち保つことに苦労することがありますが、ある程度の競争心を持っているなら、周りの子供たちと比べて自分にできないことを敏感に察知し、「できないことは恥ずかしい!」「みんなと同じ程度にはできるようになりたい!」というふうに考えられますので、「もっと頑張ろう!」と自らやる気を見せてくれるでしょう。

あまりにも執着しないマイペースな子供は、幼稚園に入園してみんなが字を読めたとしても、「へえ、すごい」「僕は先生に絵本を読んでもらおう」「絵を見ているだけでも楽しいよ」といった反応を示すことがあり、「みんな読んでいるんだから、字を覚えようよ」といくら親が促しても、自分の気が進まないなら思うように返事が返ってこないこともあります。

成長したいという気持ちを持つことができる

あまりにも競争心がない子供は、自分自身に対してもより良い状態になりたいという人間本来の欲求を持てないこともあります。そのため、すぐに諦めてしまったり、親や先生が「もっと頑張ろうよ」と励ましても、努力をしてくれなくて親や先生を困らせてしまうこともあります。

ですが、ある程度の競争心があるなら、自分自身に対しても今の自分よりももっと良い自分になりたいと考え目指す意欲に結び付きます。例えば縄跳びが跳べないなら、毎日時間を見つけて努力して、いつかは周りの子供たちよりも上手に跳べるようになるかもしれませんね。

適度な競争心は自分自身を肯定する機会をもたらす

テストで良い点を取り褒められる子供達

普段は競争心のない子供でも、得意な分野や優れた資質を本人もしくは周囲が発見することで、自分自身に対する肯定感を持つようになります。

「走りが本当に速いんだねえ!」「スキーがこんなに上手なんて知らなかった!」「お歌が上手なんだね!もっと歌を聞かせてね!」と親や先生が褒めることで、自分自身を肯定し得る自信を持つために「これなら得意だよ!」「多分、上手にできるよ!」「この分野ではほかの人に負けたくないな」と思うようにもなるでしょう。

自分自身に対する肯定感を持つことは、生きていく上で非常に大切です。
成長の過程で辛いことが起こっても、自分自身に対する強い肯定感があれば、「きっとうまくいく」「努力すれば今の状態を打破できる」とポジティブな思考に変換していくことにもつながるのです。

自分自身の成長に欠かせない!適度な競争心の在り方

競争心がない子供は、勝負などに執着を示さず比較的誰とでも仲良くすることができ、一見、温和に平和に生きていくことができるように見えます。
ですが、その反面、努力をしようとしない意欲に欠ける態度や自分を磨こう、成長しようという向上心が見られなかったり、自分自身への肯定感が生まれにくいなどのネガティブな側面もあるため、「競争心がないことは良いことだ!」と諸手を上げて言うことはできません。

つまり、子供が人間性を磨き成長していく上で、また、大人として強く生きていく上で、『適度な競争心』を持つことは必要であると言えるのです。では、『適度な競争心』とは、具体的にはどのような競争心を指しているのでしょうか?

競争心の矛先を考えてみる

他人と競争することについて考える女の子

努力すれば何でもできるというのは幻想にすぎません
人には持って生まれた能力がありますので、どんなに優れたコーチについて習っても、1日の大半を練習に費やしたとしても、誰もが100mを9秒台で走れるわけはないのです。

もちろん、それは体力面だけの話ではなく、学力も同じです。勉強すればするほど知識量は増え賢くはなりますが、得意不得意がある以上、そもそも勉強があまり好きでない子供が有名な塾に通って1日の大半を勉強に費やしたとしても、超有名大学に入学したり、権威ある賞を取ったりすることはできない可能性は高いといえますよね。

元々の能力が異なるもの同士の競争や、自分の苦手とする分野での努力は無駄ではありませんが必ず報われるわけでもありません。また、どんなに頑張っても追い抜けない人というのは必ず表れるもので、他人に対して強い競争心を持つことの意味、意義はしっかり考えなくてはなりません

自分自身に競争心をもちましょう

周りとの比較は確かに触発されるきっかけとなります。ですが、常に自分と誰かと比較し蹴落とし蹴落とされる状況は挫折とも隣り合わせ。自分の掲げる目標やそこまでの努力に意義を持たせるなら、自分の持つべき目標は他人との比較に見出すのではなく、自分の中にあるべきです。

つまり、競争心を持つ矛先は「誰か」ではなく、もっとも身近な存在である自分なのではないでしょうか?頑張って努力を重ねることに、「これ以上努力できない」という点に到達する限界点はそうそう訪れません。今日できる最大の努力をしたとしても、明日は成長した分だけより良い工夫や努力をすることができます1日1日伸ばしていくことができるのが自分自身という存在なのです。

切磋琢磨できる相手を持ち、大切にすることで得られるもの

競争に疲れて元気がない男の子

自分自身に対して競争心を持つことは大切ですが、自分自身だけに対して競争心を持っていると、ときに自分が今どのレベルにいるのか分からなくなることがあるでしょう。
日々勉強を積み重ね、事実として昨日より今日の方が賢くなっているのだとしても、知識を習得するスピードがあまりにも遅すぎるなら、他人から見れば、何年経っても同じ地点をうろうろしているに過ぎません。

自分以外の他人に対して過度に対抗心を持つ必要はありませんが、前を見て切磋琢磨できるような良い意味でのライバルを持つことは、自分自身だけを競争相手とするよりも有意義であると言えます。お互いに励まし合って向上していくことができる友人を持つことができれば、スポーツや勉強、仕事においてもよりよい結果を生みだすことができます。

子供に本当に知ってほしいのは『対抗心』でなく『向上心』

『競争心』というと、争う部分だけに意識が向いてしまいがちです。そのため、「競争なんてしなくて良いから、穏やかに育ってほしい」と親は子供に望むようになるのでしょう。
ですが、いくら親が争いから避けるように子供を育てたとしても、子供はいつか他者と競争せざるを得ない状況にぶつかるときが来るでしょう。

そのときに「争うのはイヤだから」と背を向けてしまうことは、決して良い選択とはならないはずです。競争を否定し避け続けるのではなく、競争があるという現実を踏まえたうえで、正しい競争心を持つように育てる親の接し方なら、子供の人生を有意義かつ豊かなものにするのではないでしょうか?

競争心は2つの側面を持ちます。1つはとにかく相手と張り合うといった『対抗心』、そしてもう1つは自分自身や仲間と一緒に成長したいと願う『向上心』です。向上心を持って挑む人生では、きっと良きライバルを得られるはずですし、周囲や友人のみならずライバルとも信頼関係を育んでいけるはずです。

子供に「穏やかに育ってほしい」と願うことは良いことですが、それが子供の向上心を奪ってしまうものならば、親が子供の限界を決めてしまっていることにもなります。大きな夢を描き、挑戦する気持ちや諦めない気持ちを子供に持ってもらいたいなら、向上心の大切さも子供に教えたいものですね。

適切な競争心を育てるために親ができること

公園でサッカーを楽しむ男の子

全く競争心がない子供に適切な競争心を持ってもらうために、親はどんな接し方をしていくべきでしょうか?

褒めよう

子供を褒めるということは、子供を肯定し認めること。そして、子供に「わたしは優れている」という認識を与える要素にもなります。褒められて育った子供は、適切な競争心、つまり向上心を持つ子供になります。「もう少し頑張ったら、もっといいものもできるようになるだろう」「歌が上手に歌えるから、ピアノもきっと上手に弾けるだろう」と、子供が進んで努力するようにもなるのです。

もちろん、褒め方も注意が必要です。
何でもいいとでも言うかのようにとにかくひたすら褒めているだけなら、子供は褒められることに対して喜びを見出しにくくなりますし、若干放漫にもなってしまうかも。親の褒め方もわざとらしいものになります。

子供が得意とすることや本当に上手だと思うことを重点的に褒めたり、毎回は褒めないけれど褒めるときには徹底的に褒めたりするなら、子供もうれしいですね。

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色々なことにチャレンジさせる

子供の可能性がどこにあるのかは、子供自身はもちろん、親にも分かりません。とにかく小さなときは色々なことにチャレンジさせ、どこに子供の関心があるのか、どういったことに子供が夢中になれるのか子どもが見つけ出せるよう手伝ってあげる必要があります。

とは言っても、行き当たりばったり何にでもチャレンジさせ、どうも向かないなといった親の勝手な判断ですぐに止めさせてしまうのなら、子供に努力を重ねることや継続の大切さは覚えさせられません。

お稽古事は一気に取り組むのではなくいくつかに絞って子供の意思を確認し、始めるからには1年は休まずにチャレンジすることなどの約束事を決めて取り組むようにしましょう。

親自身が努力している姿を見せる

親が日々勉強する姿や努力を続ける姿を日常的に子供に見せているなら、子供も『努力』は特別なことではなく、衣食住と同じく人間の行動として自然なものだと学びます。子供に「ピアノを毎日弾きなさい」「宿題が終わったら、ドリルをしてね」と命令口調で言うだけでなく、親自身が率先して努力している姿を見せていきましょう

もちろん努力する姿は、勉強だけではありません。一生懸命仕事をする姿、家族のために料理をする姿、洗濯をしながら子供の時間割合わせを手伝う姿など、どんなことでも一生懸命に取り組む姿が子供のやる気につながります。

ですがあまり意気込みすぎるような前のめりの接し方では、うるさがられてしまいますので注意しましょう!

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自分の限界に挑戦するあくなき向上心を育てよう

適切な競争心は、子供が充足した人生を歩む上で欠かせないものです。自分自身に対して挑戦することができる子供に育てるためにも、努力はして当然であり、楽しいもの!ということを親が積極的に教えていきましょう。

生きていく上では辛いことや限界を感じることはたくさんあります。ですが、そんなときに努力することや自己研鑽をする強さを身に付けることは、大人になっても老齢になっても人間が生きている限り生きる意味を見出す力を備えます。どんな状況においてもくじけない強い心を育むためにも、対抗心ではない正しい競争心を持てるように子供を育てていきたいものですね。