情操教育とは?子供に必要な「教育」なの?
情操教育を一言で表すと「子どもの人間力を育てる教育法」です。幼いころから文化や芸術品、動物や植物などと積極的に触れ合わせることが情操教育の一環です。そうすることによって子供の感性や情緒が育ち、豊かな表現力が身に付くのです。また、個性や想像力を培う働きもあります。
大人は、「教育」と聞くと「学問」に結びつけてしまいがちです。親なら誰しも、頭の良い子に育ってほしいと思うものですが、幼い子供の教育に必要なのは学問の習得だけではありません。むしろ就学前に築きたいのは、想像力や上達力などの基盤なのです。情操教育によって「人間力」を高めることで、今後就学や仕事をする上での基盤を築くことができるのです。
情操教育によって高められていく人間力ってどんな能力?
人間力というのは、「社会に必要とされ、自立したひとりの人間として生きる力」です。人間力には大きく分けて3つの要素があります。論理的思考力、創造力の「知的能力的要素」、他者を尊重し合い、コミュニケーション能力を要する「社会・対人関係力的要素」、忍耐力や自分らしさ、成功を追求する「自己制御的要素」。この3つの要素がバランスよく成長することで「人間力」は高められていくのです。
情操教育をすることによって人間力がより高められていくので、子供のころの情操教育は、将来社会に出て羽ばたいていくために必要なものなのです。
情操教育はいつから始めるのが理想的?情操教育の黄金期!
情操教育を始めるのに適した時期とはいつからなのか、疑問に思う方もいることでしょう。情操教育は3歳頃を目安に始めることをオススメします。ある程度の言葉を理解できるようになった3歳前後は急成長をする時期で、この記事に情操教育を始めると、成功する確率がグンと上がるのです。もちろん、それより早く始めても何ら困ることはありません。
子供の様子を見ながら少しずつ文化や動物に触れ合わせるのも良いでしょう。人間は5歳が「脳の臨界期」と言われ、その期間までに情操教育を行うことによって、人間力の基盤が作り上げられることがわかっています。
臨界期というのは、その能力を学習できる適切な時期で、その黄金期を逃すと今後いくら努力しても限界があると言われているものです。では、3歳以上の子供に情操教育をするのは無駄なことなのでしょうか。
情操教育は3歳以上でもまだ間に合う!
「脳の臨界期」と呼ばれる5歳を過ぎてしまったからといって「もう情操教育をしても意味がない」ということはありません。確かに3歳前後の子供の成長は目覚しいものがありますが、幼児の脳はスポンジのように多くのものを吸収してくれますので、3歳を過ぎたからダメというわけではありません。
3歳をとっくに過ぎてしまった、もう5歳だし「いまさら遅い」などと思わず、思い立ったら吉日、情操教育を取り入れた日々を送ってみてください。子供の心が豊かに育つことでしょう。
自宅でできる情操教育~親子のコミュニケーションにもなる
教育と聞くと、「習い事」と直結して考えてしまう方が多いです。しかし情操教育を学べるのは、習い事だけではありません。知識としての学習ではなく、心を育てる学習です。自宅でも気軽に情操教育を取り入れて、子供の成長を促しましょう。
何に取り組むかは子供の性格によって違いますが、大切なのは親が無理やりやらせないと言うことです。子供が進んでやりたがるもの、親と一緒に楽しんで取り組めるものにしましょう。
子供がいやいや取り組むのでは決して情操教育とは言えず、逆効果になってしまいます。自宅で情操教育に取り組む前に、子供がどんなことに興味を示しているのか、どんなことが好きなのかを把握してから取り組んで行きましょう。
自分も子供の情操教育をしようと思って調べてみたら、無意識でやっていたことばかりというママもいるでしょう。それくらい、情操教育は難しいことではありません。これまで無意識でやっていたママは意識してより一層子供のサポートをし、これからはじめてみようと言うママは、日常の中で自然に行えるものばかりなので、ぜひ情操教育に取り組んでみましょう。
絵本の読み聞かせで想像力を育む
子供に絵本を読み聞かせることも立派な情操教育の一つです。読み聞かせによって、子供の想像力をはぐくむことができます。大切なのは、大人が絵本を読んであげることです。子供が文字を読めるようになったからと言って、子供に託して読ませてしまうのは情操教育としてはNGです。文字に不慣れな幼い子供は、文字を読み取ることばかりに集中してしまい、想像力を掻き立てることができなくなってしまうのです。
また、近年浸透している動画サイトにあげられた、読み聞かせ動画を見せるのも効果的な方法とは言えません。読み聞かせ動画は、アニメのように次々と場面が展開されていくので、子供が想像力を働かせるタイミングを奪ってしまいます。
感情や言葉に抑揚をつけながら読み聞かせをすることで、子供は物語の場面を想像し、登場人物に感情移入しながら聞くことができます。
情操教育での読み聞かせで大切なのは、絵本の中の背景や登場人物の気持ちに思いをはせ「ないものをイメージする」力を身に着けることです。この力を身に着けることによって、アイデアを生み出す能力が培われていくのです。
自然と触れ合って季節を感じ生命の素晴らしさを教える
自然と触れ合うことも、情操教育では重要視されています。山や海などの大自然と触れ合うことで、生命のすばらしさを感じることができます。感受性を豊かにするためには四季折々の植物や風景を季節ごとに同じ場所で見るのも効果的です。春夏秋冬で全く違う顔を見せてくれる自然に、子供の心は大きく揺れ動くことでしょう。また、自然の中にしか生息しない植物と触れ合うことも大切です。命の尊さや環境について考える優しい心を身に着けることができるのです。
山や海が近くにない場合にも、自然と触れ合う方法はいくつもあります。近隣の公園に植物を見に行ったり、お気に入りの花の苗や種を購入してみて、大人と一緒に育ててみるのもよいでしょう。植物の成長は、子供の心に驚きと感動を与えてくれます。芽が出て花が咲くまでの過程を観察し、生命の素晴らしさを教えてあげましょう。
野菜を育てるのも情操教育になります。プチトマトやピーマン、きゅうりなど、プランターでベランダ栽培できるものもたくさんあります。自分で育て、収穫して食べる喜びを学べますし、それまで嫌いだった野菜でも、自分で育てて収穫したものは喜んで食べてくれるので、好き嫌いの克服もできるでしょう。
動物や昆虫と触れ合って責任感を養う
ペットとして動物や昆虫などを飼うことも、子供の心に大きな変化を与えます。飼育動物は人間の世話抜きでは生きていけません。「子ども主導でお世話をする」ことによって、責任感を養うことができます。もちろん親のサポートも必要ですが、子ども主導で対応させるとよいでしょう。
自分が飽きたからと言って途中で世話を放棄することができない、ということも学ぶことができるので、継続力を身に着けることができます。また、動物への愛情が湧いて命の尊さをや、生き物を愛しむ気持ちを知ることもできるので、幼少期の動物との触れ合いは子供に多くのことを教えてくれます。
賃貸住宅などの環境で、動物との接点を持てない場合は、動物園や牧場などの動物ふれあいコーナーを利用するのもよいでしょう。乱暴に扱うといけないこと、愛情を持って接することを学び、生き物を身近に感じることで、子供の心は大きく成長していきます。
絵を自由に描くことで表現力を身につける
絵を描くことは子供の心を自由に表現できるので、情操教育の中では大切です。子供に対し、「こうしたほうが上手に描けるよ」「こっちのほうがいいよ」などのアドバイスはしないことも大切です。子供がその時感じたことを思いのまま自由に描くことで、柔和な表現力を身につけることができます。
もちろん家の中で絵に集中するのもよいですが、山や海、公園など四季折々の植物や風景に囲まれながらスケッチするのもよいでしょう。
また、美術館などで絵画等の美術品と触れ合わせることも子供の美的感覚や情緒を培うためには大切です。美しいもの、調和のとれたものを心地よいと思える感覚を身に着けることによって、芸術的なセンスを養うことができます。
ただし、美術館などでは大声で話したりしないこと、騒がないのが大前提です。子供が絵画に興味がないのに美術館に連れて行くのは、情操教育になっているとは言えません。
音楽や楽器と触れ合って感性を育て達成感を経験する
音楽を聴いて、歌ったり踊ったりすることも表現力を身に着けるためには大切です。生の楽器演奏を聴かせることで豊かな感性を育てることができます。最近では、親子みんなで参加できる野外フェスも増えてきています。豊かな自然の中で、生演奏を聴き、自由に体を動かす。子供にとっては刺激的な体験になること間違いないでしょう。
また、ピアノやエレクトーンなどの楽器に挑戦するのもよいでしょう。目標を決めて練習に取り組むことで、達成感を得ることができます。達成感を得ることができれば自信につながっていきますし、「何事も挑戦してみよう」という積極性を身に着けることもできます。
スポーツをして努力と粘り強さを学ぶ
スポーツに取り組むことで、達成感や粘り強さ、努力の大切さを学ぶことができます。また、サッカークラブや野球チームに所属すると、協調性や社交性を身に着けることができます。
まだ子供が幼くて、団体競技を始めるには早いと感じる場合は、スイミングスクールやリトミックなどの個人で体を動かせる教室を利用するのもおすすめです。
情操教育でのスポーツの位置づけは、結果ではなく、過程で何を感じ、何を学ぶかということに重きを置いています。スポーツを継続することによって心に踏ん張りがきくようになるので、大人になったときにもきっと役に立ってくれることでしょう。
年中行事の背景を知るのも情操教育には必要
現代の日本では核家族化が進み、宗教に関連する行事が疎遠になってきている子供たちが多くいます。お彼岸やお盆のお墓参り、お坊さんや神父さまのお説教を一緒に聞くのも情操教育の中では大切なことです。なぜなら、節句や初詣などの年中行事には、日本古来の仏教の教えが深く根差しているからです。
年中行事の起源や、何のためにお墓参りや初詣を行うのかを教えることで、子供たちは行事に思いをはせて取り組むことができるようになります。また、日本の行事だけでなく、いまや当たり前になったクリスマスや、近年広がりを見せているハロウィンなどの日本に浸透している外国の文化を皮切りに、子供に教えていくのも良いでしょう。
国際化が顕著になっている昨今、海外の宗教のことを知ることは、同時に、海外の人のことを尊重することにもなります。他を知ることの大切さや互いに認め合う気持ちを培うのも、情操教育には必要不可欠なのです。
情操教育は子供の心を豊かにしてくれる
子供の将来のため、幼いころから勉強をさせて頭を良くさせたい、と思うのが親心というものです。しかし子供が幼い今の時期だからこそ出来る「情操教育=心の教育」に目を向けることも大切なのです。勉強は学校で教えてくれますが、情操教育を徹底的に教えてくれることはないでしょう。感受性豊かで他者を思いやることができる子に育てられるのは、幼少期である今が最適と言えます。情操教育によって「人間力」が高まれば、それが基盤となって、これからの人生の糧となることでしょう。
自分自身を大切にし、また他者をおもいやる想像力を培える情操教育。子供が成長した時に、心が優しく、人の気持ちを考えられる大人になって、「情操教育を実践していてよかった」と思う日がきっと来ることでしょう。
情操教育と一緒に取り組んでみたいのが、モンテッソーリ教育です。子供の自立心を育てる教育法で、責任感を育てます。モンテッソーリ教育とは?子供の本当の力を引き出す教育を参考に、情操教育と共に、モンテッソーリ教育も取り入れてみてはいかがでしょか。