赤ちゃん返りとは?
赤ちゃん返りとは、今まで順調に精神的・能力的に成長していた子供が、急に赤ちゃんのように甘えたり、自分で自分のことができなくなって親や年長者に頼るようになったりすることです。早いケースでは1歳の子供でも見られますが、自我が芽生えてくる2歳前後に始まることが多いです。
赤ちゃん返りは、自分よりも小さな子供や赤ちゃんの出現、入園や引っ越しなど環境の変化など、子供の気持ちを不安にさせる出来事が起こった際に引き起こりやすいと考えられています。
「もしかしてこれって?」と子供の様子に異変を感じているママやパパは、赤ちゃん返りのサインについていち早く理解し、子供心に寄り添ってあげましょう。
一人でできる事が極端に減る
自立的な行動、お手伝い、お姉さん・お兄さんらしい振る舞いを意図的にしないようにするのは赤ちゃん返りの典型的なサインで、異変に気が付くママやパパも多いでしょう。
今まで洋服を一人で着ることが出来ていたのに、突然、「お母さん着させて」と助けを求めることがあります。また、今までは「一人でするから!」と部屋の片づけや洗濯物を干す作業などを積極的にしていたのに、あるときを境に「お手伝いをしてよ」とお母さんが頼んでも、「できない」「無理」と返答します。
しかし、よく誤解されるのですが、確かに子供はわざとできないふりをしている時もありますが、本当に今までできていたことができなくなってしまうケースも珍しくありません。
言葉遣いや行動が幼くなる
舌足らずな言葉でしゃべるようになったり、指吸いなども、赤ちゃん返りのサインとしては有名です。
ちょっと前までは「お母さん」と呼んでいたのに、赤ちゃんが産まれたら急に「ママ~」と呼び方を変える子供もいます。また、自分のことを「わたし」「ぼく」と呼んでいた子供が、「ゆかちゃんがね」「みいちゃんが」と名前や愛称で呼ぶようになることもあります。
おねしょをする
行動や言葉は赤ちゃん返りしていないのに、下の子の妊娠や入園によって、おねしょをしてしまう子供もいます。
おねしょが子供の赤ちゃん返りのサインだと気づかずに叱ってしまうと、子供の心は更に不安定な状態に陥ります。寝付くまでに時間がかかるようになったり、夜泣きをしたり、おねしょがなかなか治らないようになったりと、悪化させてしまう恐れがあります。
お母さんやお父さんの身体に頻繁にくっつく
お母さんやお父さんの身体に普段以上にくっつくようになる現象は、自分よりも小さなきょうだいがいる場合によく見られる赤ちゃん返りのサインの1つです。
ただ単に親に身体をくっつけたり、手をつなぎたがったり、寝るときにそばに居て欲しいとせがんだりする場合も多いですが、親が自分よりも小さなきょうだいに触れないように画策する場合もあります。
また、子供によっては、自分よりも小さなきょうだいが親と関わっているときは特別な反応は示さないのに、小さな兄弟が眠った後や同じ部屋にいないときに、親の身体にくっつこうとすることもあります。
最初は「やけに甘えん坊だね」と親も微笑ましく見守れますが、中にはママやパパがその場を動けないぐらい四六時中ベッタリとくっついてくるような子供もいます。家事などが進まずイライラしてくると「少し向こうへ行って!」と冷たく言ってしまいそうになりますが、こうした突き放しは望ましい対応とは言えません。
赤ちゃん返りのサインがあらわれるタイミングとは?
赤ちゃん返りによる上記のようなサインは、「愛情が充分に足りていないときに起こる」という意見もありますが、例え親が愛情を持って接していても、赤ちゃん返りをする子供は珍しくありません。
愛情不足とは別に、子供が赤ちゃん返りをするきっかけとしては、周囲になんらかの変化が起こった時が多いと考えられています。では、どんな時に、どのように子供の心は揺れ動くのでしょうか?
赤ちゃん返りが見られやすいタイミングをいくつか紹介します。
新しいことをするとき
いつも家で楽しく歌ったりピアノで遊んだりしている子供。音楽に興味があるのかと思って音楽教室に連れて行くと、ピアノを弾いたことがないようなふりをしたり、赤ちゃん言葉で歌ったりすることもあります。他にも幼稚園や保育園に初めて行くとき、普段のお出かけは自分で用意ができるのに、「くつを履かせて」「ボタンが閉められない」とわざと親の手助けを求めてくることもあるでしょう。
新しいことを始めるときや新しい場所に行くときに子供の心の中で不安が高まると、できることも急にできなくなってしまったり、今までスムーズに一人でできていたことに助けを求めたりすることがあるのです。このようなサインも、赤ちゃん返りの1つと言えるでしょう。
下の兄弟が生まれたとき
赤ちゃんが家に生まれて、自分がお兄ちゃんやお姉ちゃんの立場になったとき、新お兄ちゃんや新お姉ちゃん自身がまだ甘えたい盛りの1~6歳の場合は、「わたしも可愛がって」「ぼくもまだお世話が必要だよ」ということを示すために赤ちゃん返りのサインが見られることは少なくありません。
お母さんが赤ちゃんの世話で忙しいときに限って、泣きだしたり、お茶などをこぼしたり、大騒ぎをしたりすることもあるでしょう。また、急に赤ちゃん言葉を使いだしたりする子供もいます。
下の兄弟が生まれることが分かったとき
お母さんが妊娠していることが分ったことで、赤ちゃん返りする子供もいます。「赤ちゃんが産まれたら、もう大事にはしてもらえないのではないか」「お母さんが赤ちゃんばかりに時間を使うのではないか」と不安になり、急に言葉遣いが幼くなったり、できることも「できない」と言うようになるなどのサインが見られます。
下の兄弟が実際に生まれた後にも、新お兄ちゃんや新お姉ちゃんの赤ちゃん返りが続くこともあります。ですが、赤ちゃんの顔を見ると「可愛い」「お世話したい」という気持ちが生まれて、急に大人びた対応をとるようになるなど、お兄ちゃん・お姉ちゃんとしての自覚を持つようになることもあります。
自分よりも幼い子供と接するとき
家には自分より幼い子供がいない場合でも、外で自分より小さな子供を見ると、急に赤ちゃん返りをすることもあります。例えば、公園で知らない赤ちゃんが遊んでいるのを見かけたとき。一緒にいるお母さんが「赤ちゃんは可愛いねえ」と言ったのを受けて、自分も赤ちゃんのような態度をとるようになるケースもあるのです。
これは、大人や周囲の人々の発言から、「赤ちゃんじゃないと可愛がってもらえない」「小さくないと大事にしてもらえない」と考え、自分が自分の年齢や身体の大きさでいることに不安を感じてしまうからです。また、お母さんやお父さんなど、子供にとって大切な人の愛情が、自分以外に移ってしまうことを不安に思うことも一因と言えるでしょう。
ただし、弟や妹が家に生まれた場合とは異なり、きょうだい以外と接する時間はそこまで長くはありませんので、赤ちゃん返りした態度をとる期間が長くなることは稀です。遊びに来た子供が家から帰ったり公園で会った子供と別れたりすると、本人も「赤ちゃんになって可愛がられたい」という思いを忘れて、すぐにいつもの調子に戻るでしょう。
引越しや入園など環境の変化が起こったとき
社会性が芽生えているがゆえに、環境の変化に敏感に反応し、赤ちゃん返りのサインがでてくるケースです。
幼稚園や保育園などにお友だちがいたり、近所の子供たちや大人、近くに住む祖父母などとの関係が構築されていると、引越しによって子供自身が強い不安やストレスを抱えてしまいます。
反対に、家族以外との社会的な関係を築いていない0歳児や1歳児は、引越しなどの環境の変化に影響を受けることはあまりありません。
引っ越しによる親の忙しさも赤ちゃん返りを加速させる
引越し時には親も普段よりも忙しくなりますので、子供のために時間や話に耳を傾ける精神的余裕がなくなってしまいがちです。そのような日々が続くと、子供は自分への愛情が薄れてしまったのかと、不安定な気持ちになり、それが赤ちゃん返りのサインに繋がるのです。
保育園入園による赤ちゃん返りはよく見られる光景
今までお母さんが外で働いていなかったのに、職場に復帰、又は就職して保育園に預けられることになったときに赤ちゃん返りする子供は少なくありません。「お母さんはお仕事だから昼間は一緒に過ごすことができない」ということを理解できる年齢であっても、不安や寂しさを自分の中で処理できず、保育園で泣き続けたり、先生の後をついて歩いたりすることもあります。
赤ちゃん返りのサインが見られたときの親の対応
いつからいつまで赤ちゃん返りが続くかについて一概に言うことはできませんが、子供の不安が和らいだり、子供が精神的に成長すると、赤ちゃん返りは見られなくなるでしょう。
子供に赤ちゃん返りのサインが見られたときは、どのように親は子供と接していくことができるでしょうか。
「お兄ちゃんだから」「お姉ちゃんだから」とは言わない
おねしょをしたときやぐずぐずと手がかかるようになったとき、「お兄ちゃんだから、もうおねしょはおかしいでしょ?」とか「お姉ちゃんだからぐずぐず言っていないで、お母さんのお手伝いをきちんとして」と言ってはいけません。
「お兄ちゃんだから」「お姉ちゃんだから」と言ってしまうと、子供は「もう二度と自分が大切にされることはないのだ」「弟(妹)がいるから、わたしは愛してもらえない」と理解してしまい、赤ちゃん返りの根底にある親に見放されるかもしれない不安感がますます強くなってしまうからです。
下のきょうだいに冷たく当たるなどの問題行動が見られたときは、いくら不安からの行動とはいえ叱らなくてはいけませんよね。そのようなときは、「お母さんにとってはどちらも大切な子供なのに、仲良くしてくれないと悲しい」などと、生まれた順序に関わらず親にとっては大切であることを示しながら注意をするようにしましょう。
下の兄弟を含まない時間を作る
上の子供にも下の子供にもどちらにも平等に接しているつもりでも、年齢が幼いほど世話に手がかかるのは当然ですので、上の子供は寂しい思いをすることになります。
月に何度かは下の子供をパパやおじいちゃん・おばあちゃん、あるいは一時保育などを利用して、上の子供と親だけの時間を作るのはいかがでしょうか。親を独占できる良い機会となりますので、下の兄弟の目を気にせず甘えることができます。
また、家族皆でお出かけするのではなく、お父さんと下の子供、お母さんと上の子供と、別れてお出かけしてみるのもオススメです。親が子供に平等に接しようと努力をしても、上の子供の責任感が強い場合は、上の子供自身が下の子供の小さなお父さん・お母さんとしてふるまおうと無理をしてしまうことがあります。
子供が子供としてふるまうことができるよう、自分以外の子供の存在(下の子供など)がいない時間を作ってあげるようにしましょう。
上の子供として果たしている事柄に感謝を示す
赤ちゃん返りすることはあっても、心のどこかで「お兄ちゃんだから弟に優しくしなきゃ」「お姉ちゃんだから、お母さんを困らせないようにしなきゃ」という意識を持っているものです。実際にはお兄ちゃん・お姉ちゃんとして期待されるような役割を果たしていなくても、気持ちは常に張り詰めている子供もいることを忘れないようにしましょう。
ですから、ぜひ、お父さん・お母さんは、頻繁に「いつもありがとうね」「本当に助かっているよ」と上の子供に声をかけるようにしてください。感謝を示されることで、兄・姉としての自然な責任感や弟・妹を可愛がる感情が育ちやすくなるでしょう。
赤ちゃん返りも成長のための1つのステップ
子供が不安を感じた際に赤ちゃん返りをすることは珍しくありません。親は「せっかくここまで成長したのに」「やっと楽になってきたのに」とイライラするのではなく、赤ちゃん返りも成長のための1つのステップであることをしっかりと受け止め、子供の不安解消に努めていきましょう。