子どもが学校に行けなくて不登校になった時に親がすぐにすべきことがある
平成29年度の文科省の調査で、小中学校における不登校児・不登校生の数が過去最多となり、14万4031人(前年度比1万348人増)いることが分かりました。今、学校教育の停滞や学校以外の学びの場の増加、社会の理解が深まってきたことなどの影響で、不登校生は年々増加傾向にあります。
特に中学生はクラスに1人は不登校生がいる割合で、もはや不登校は「特別なこと」ではなくなってきているのです。しかし、いくら珍しくなくなってきたとはいえ、親としてはやはり「学校に行けない、行かない」というのは不安になるものです。
そこで今回は、フリースクール運営者として数々の不登校生たちと交流し、自身も不登校やひきこもりを経験してきたことを踏まえ、「子どもが不登校になった時、親ができること」を考えてみたいと思います。
子どもが学校に行けない時にまず親に知ってほしいこと
具体的な対処法をご紹介する前に、まず親に知っていただきたいことがあります。
不登校は、問題行動ではない
少し前までは、学校に行くことが当たり前で、学校に行けない、行かない児童生徒は「心が弱い」「なんらかの問題を抱えている」と考えられていました。しかし現在は、文部科学省も、“不登校児童生徒への支援は,「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく,児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて,社会的に自立することを目指す必要がある”と平成28年度に示しており、不登校の子どもに対する支援が充実してきています。
ほとんどの親は子どもが不登校になると、友人関係の不安、将来や学習面への焦りなどから、なんとか学校に行かせようとして、学校まで無理やり連れていったり、先生と面談する予定を組んだりします。でも、そのうちの9割以上の親は「これじゃダメだったんだ」と言います。
大切なのは、不登校を問題と捉え対処することではなく、不登校になった要因に目を向け、根本的に対処すること。急いで解決しようとせずに、正しい対処法を学び、長い時間をかけて子どもと向き合うことが必要なのです。
子どもが学校に行けなくて不登校になっても親が冷静に対応すれば大丈夫
今の親世代が子どもの頃には、「不登校」や「フリースクール」なんて言葉はメジャーではなく、学校に行かない子どもが今よりはうんと少なかったはずです。だからこそ、子どもが学校に行かないのは怖くて不安になって、無理に学校に戻そうとしてしまう。
でも、そんなに不安視する必要はありません。不登校の子どもは、だいたいどの子も、同じ道筋を通って回復していきます。
ちなみに、不登校の「回復」は、必ずしも学校に戻ることではありません。就職したり、ボランティア活動に参加したり、自分で団体を立ち上げたり、学校以外の場所で居場所を見つける子どもが多くいます。約70年もの間、一切姿を変えていない「学校」に対して、合わない子どもがいるのは当然のこと。そういう子どもにとっては、「学校に戻る」という選択は、問題を先延ばしにしているのと同じです。
不登校による諸問題を解決する上での最重要課題は、その子がその子らしく生きられること。あなたの子どもが笑顔で過ごせているのなら、それでいいのではないでしょうか。
子どもが学校に行けなくて不登校になった時に親がすぐにできるのは3つ
不登校自体は問題行動ではありませんが、不登校になっている子どもは傷ついていないわけではありません。認知が広まったとはいえ、まだまだ不登校はイレギュラーな選択ですし、「学校は行っておいたほうがいい」「なってもいいけど進学は絶望的」などといった意見も存在します。(ちなみに、欠席日数が増えることで内申点が下がる可能性はありますが、だからといって進学先が絞られるということはありません。)
学校での人間関係や担任の先生の対応、本人の気質、学習面のプレッシャーなど、不登校になるきっかけはさまざまですが、多くの子どもは不登校になることで傷つき、自信を失い、自己肯定感を下げてしまっています。
だからこそ、子どもが不登校になった時には、家族やまわりの支援者、社会が、その子を支え、しっかりサポートすることが大切です。今回はその中でも、親がすぐに取り組めるようなことをご紹介します。
1.子どもの話をしっかり聞く
まずは、子どもの話をしっかり聞く時間を作ってください。子どもにとって「親が自分の話を聞いてくれる」「自分の考えを尊重してくれる」という体験は、大きな支えになります。どんなことが不安なのか、親や先生にしてほしいことはあるか、どんなことがしたいか、今後どうしたいのか……、どんな内容でもかまいません。
すぐにすべてを聞くことは難しいと思います。子ども自身、原因やきっかけを理解できていないケースもありますし、無理に聞き出そうとしてはかえってプレッシャーになってしまうことも考えられます。大切なのは聞く姿勢を子どもに見せることですから、子どもが何も話さなくても焦らないでください。ふとした拍子に、「本当は、ずっと行きたくなかったんだ」なんて話してくれるかもしれません。その時のために、子どもが気軽に話せる環境を整えておきましょう。
2.担任の先生や学校と情報共有する
多くの子どもは、不登校になる前になんらかのSOSを発信しています。宿題が遅れがちになったり、遅刻欠席が増えたり、友達と遊ばなくなったり……。何か子どもに変化はなかったか、そして今度どういったサポートをしていけばいいのか、担任の先生や学校とよく話し合うことも大切です。
特に私立学校の場合には、卒業の条件がある場合があります。直前になって困らないように、学校からしてもらえる支援はあるのか、今後学校に通えなくなったとしても大丈夫か、よく確認しておきましょう。
3.家庭以外の居場所を探しておく
不登校は短期的に解決できることが少なく、早くとも1か月、長いと数年の月日を費やすことがあります。家族が支え合うことはもちろん大切ですが、家族だけではうまくいかない時や、家族だからこそぶつかってしまう時もあるかもしれません。そんな時のために、子どもが不登校になった時から「家庭以外の居場所」を見つけておくと安心です。
子どもに対しては、フリースクールや適応指導教室、不登校生専門のカウンセリングサービスなどがあります。親に対しても、親の会やカウンセリングサービスなどがありますから、ぜひ調べてみてください。
ただし、不登校になってすぐに子どもは、社会とのつながりを拒絶して自分の殻に閉じこもってしまうことも少なくありません。そんな時は無理にすすめずに、情報収集をするだけにとどめておきましょう。どんな施設や支援機関も、あなた方から逃げていくことはありません。いつか子どもから「勉強したいんだけど」などと言われた時のために、蓄えておくことが重要なのです。
子どもの意志に反することを親がするのは逆効果
子どもが「学校に行きたくない」と感じているうちは、学校に行っても絶対にうまくいきません。もちろん中には、学校に通い始める子もいます。しかしそれは、「学校に行きたくないと伝えても無駄だ」という、一種の諦めからくる行動なのです。
子どもの要望を100%叶える必要はありませんし、時には親として軌道修正したり、考えを伝えたりすることが重要になると思います。しかし、まずは子どもの話をしっかり聞いて、最大限尊重するためにはどうしたらいいのかを考えてあげてください。
子どもの「学校に行きたくない」という言葉は、怠けや甘えではなく、あなたたちへのSOS。家族を信頼しているからこその言葉であるということを、忘れないであげてください。
子どもが学校に行けなくなったら親もケアしよう
今回は「不登校になった子どもへのサポート方法」に限定してお話しましたが、子どもが元気になるためには、家族が元気でいることがなによりも重要です。
子どもの不登校をきっかけに仕事を辞めたり、四六時中子どものことを考えたりする親はたくさんいます。もちろん、一緒にいることで救われる部分はありますし、子どもが困った時にすぐにSOSを出せる関係性は大切です。
しかし、昼も夜も子どものことばかり考えていては、親自身が疲れ切ってしまいます。仕事をあえて続けることで、子どもとちょうどいい距離感を保てる方は多いです。経済的な余裕から、子どもの選択を最大限尊重できる方が増えればそれにこしたことはありません。
どんな方法にも、良い面、悪い面の両方があります。子どものことを大切に思う気持ちは十分に分かりますし、とても素晴らしいことですが、それと同じくらい、ご自身のことも大切にしてあげてください。
著者情報
フリースクールRiz代表
たかれん
自分自身の半年以上の不登校と引きこもり経験を生かし、不登校の当事者だけではなく、周りの家族もサポートしたいと思って活動しています。「どんなお話でもうかがいます」「どんなお話でもいたします」「考え方のヒントを一緒に考えます」
HP:フリースクールRiz