子供が学校に行きたくないと思うときはどんなとき?
私たち大人も学生時代には大小の壁に悩みながら、何とか乗り越えて学生時代を過ごしてきたと思います。思春期前後にある悩みは今も昔も変わらないのですが、その背景や環境は私たちの頃とは大きく違っています。
目の前にいる子供が「学校に行きたくない」とまで思い詰めてしまった背景や心境をきちんと知り、まずは子供の心にしっかり寄り添ってあげましょう。
子供が学校に行きたくないのはなぜ?心の声を聞いてみる
学校に行きたくないと言う、小学校1年生から高校生たちの心の声を集めてみました。自分でもどうしていいのか分からない子供の心境が見て取れます。
小1男子
みんなの前で給食を吐いてしまいました。先生は平気だよと言ってくれたけど、みんな笑ったり、「汚い~」という声が聞こえました。恥ずかしくてもう行きたくないです。
小3女子
同じ班に元気すぎる男の子がいて苦手なんです。班行動するときが嫌。
小5女子
グループにいるのが辛いです。でもそこから抜けたら無視されちゃうから怖いです。
小6女子
女子なのに、男子よりも背が大きくてバカにされるのがつらいです。自分ではどうしようもないから。
中2男子
何でかわからないけれど学校に行きたくありません。というか、もう行かれません。理由は自分でもはっきりわかりません。学校ではいちよう明るいキャラで通ってました。
中3女子
担任の先生がどうしても苦手です。スキンシップのつもりなのかもしれませんが、冗談を冗談と受け止めることができないんです。
高1女子
LINEで友達が「これ、かわいいでしょう?」と聞いたので、「かわいいね」の意味で「それ超かわいくない?」と入れようと思ったのに、「?」を入れ忘れていて「超かわいくない」の意味にとられたことがあとでわかりました。それから関係が悪化して独りぼっちに。
高1男子
朝が起きられません。どうしても無理です。親は怠け病だというけれど、身体がいうことをききません。学校にも行きたくないというか、行かれないというかよくわかりません。
高2男子
学校は嫌いじゃないけど、通うのが大変で行きたくない。行くだけで疲れるから授業中眠くなってしまう。常に体がだるいから帰るのも面倒。
高3女子
頑張ってきたのに行きたい大学が無理っぽい。もう何をするのも嫌だ。大学の太鼓判押されている友人と一緒にいるのもつらい。
学校に行きたくない!に至った理由と経緯を把握しよう
子供だって学校に行けるものなら行きたいと考えています。それでも学校に行きたくないと言い出すまでには、それなりの経緯や背景があるのです。学校に行きたくないという子供を頭ごなしに「行きなさい」と言うのではなく、子供の心に寄り添うためにじっくり探っていきましょう。
学校に行きたくないのは「学校が楽しくない」から始まっている
はじめは、何らかの理由で「学校が楽しくない」という気持ちから始まっていることが多いようです。学校が楽しくないと感じた理由や背景についてみていきます。
クラスで仲のいい友達ができない
小学生では、放課後のスポーツクラブや親の仲良しグループが子供の友達関係にも影響して、友達の輪に入れないということがあります。中学生以上では、表面上は問題ないようでも、本当の友達ができないといった悩みが増えるようです。
友達とのトラブルや嫌がらせにあっている
嫌がらせをされるまではいかないけれど、からかわれたり、リーダー格の子に従わなければならない。貸したものがかえってこないといった悩みが募ると問題化します。
嫌がらせがある場合、本人だけではどうしようもないところまで来ているために学校に行きたくないので、学校側が間に入る必要があります。
学校で恥ずかしい思いをした
体調が悪くて給食を吐いてしまった。トイレを漏らしてしまったといったことや友達とのトラブルも絡んで、みんなの前で面白半分にズボンをぬがされて恥をかいたといったことがきっかけになります。
友達はふざけているだけのつもりでも、本人にとってトラウマ級の出来事になります。
先生が怖い・嫌だ
急に怒り出す教師や「これができない」「これがだめだ」とマイナス面ばかり指摘する教師に困惑してしまう子も多いようです。
逆に、距離感が近すぎる先生に対しても、嫌悪感を抱く子供もいます。
勉強がわからない・テストがうまくいかない
勉強についていけないというのも、子供の自信を大きく傷つけます。できないのを責めるのではなく、次がんばろう!という言葉が必要です。
放課後に起こるトラブル
学校が進めている放課後スクール(学校の敷地内で学校も一部関与した組織が正式に子供を預かるサービス)でのトラブル。ゲーム機やゲームソフトを持っている・持っていない、貸した・返さないといった放課後のトラブルの引き金なるケースがあります。小学生でスマホを持っている子供も珍しくなく、スマホを介したSNS上のトラブルが後を絶ちません。
部活トラブル
教師の行き過ぎた指導、先輩や同級生とのトラブル、またレギュラーから外されたといったこともきっかけになります。
学校に行きたくない!に変わる瞬間ってどんなとき?
今までは悩んだり楽しくないながらも学校には行けていたのに「学校に行きたくない」という段階にまで進んでしまったその原因、その瞬間ってどんなときだったのでしょうか。
原因は、状況や心境などが複雑に重なり千差万別ですが、例をみながら代表的な現状を探っていきましょう。
味方だった友達がいなくなり学校では1人になった
話してくれる友達がいたけど、別の友達がその子と仲良くなると独占したいみたいで、私と距離を置くように仕向けている。休み時間もひとりの時間が増えてしまった。
数は少なくても話したり味方になってくれる友達がいたことで、これまで何とか学校には行けていたけど、クラス替えや他の友達との関係などで、その友達との関係が悪くなってしまったことが原因となります。
それまで家庭で友達の話を頻繁にしていたのに、あるときを境に学校での様子を離さなくなった場合、学校に行きたくないと言い出す前に、さりげなく学校での様子をきいてみましょう。
友達の心無い一言に傷ついた
友達に悩みを真剣に相談したら「その程度でよかったね」と軽く流された。
現状だけを親が聞けば悪気がないような一言に思えても、それまでの友達とのやり取りや相手の態度などに隠れた背景があるので、表面だけでは判断できないことがあります。
たかがその程度と受け止めないで、子供の気持ちに寄り添ってあげましょう。
先生の心無い一言に傷ついた
嫌がらせを相談したのに「言い返せない弱いお前にも原因がある」「やられる側にも原因がある」と頭ごなしにいわれた。
進学の相談で「お前なんかには無理。高望みするな。」と鼻で笑われた。
教師の言動に傷つき、気持ちが折れてしまう例があります。教師が原因の場合は、勉強に対する意欲もそがれてしまうことも多く、進学にも影響することがあります。
親の心無い一言に傷ついた
親に学校のことで困っている、悩みがあると相談したのに「そんな弱いことでどうするの!」といわれた。誰も味方はいないと絶望した。
親は励ますつもりでいった言葉も、傷ついた心の子供には「人格否定」のように感じ絶望してしまうことが少なくありません。子供の心に共感してあげることが大切です。
トラブルが重なって居場所がなくなってしまった
グループ内のトラブルを解決させようとがんばったけど、今度は自分に矛先が回ってきてしまった。
先生からも誤解され八方ふさがりで、もう学校には行けない。
子供も自分なりに精一杯がんばって学校に行っています。ただトラブルが絡まって悪化したり、重なるともう自分では対処しきれず、学校に行くこと自体を否定してしまいます。
家庭環境が変わってしまった
親が離婚した。仕方ないとはわかっているけど、なんだかやる気が出ない。体がだるくて朝も朝起きられなくなった。
親の離婚など家庭環境の変化に頭ではわかっていても、無意識のうちに心身が反応してしまい、朝起きられない、学校に行かれないというケースに至ることがあります。低年齢だけでなく、高校生でもみられる現象です。
クラスの環境・部活の環境が変わってしまった
優しかった3年生が卒業したら2年生が急に威張りだし、すごく嫌な部活になってしまった。本当にきつい。
クラス替えや部活などの環境変化にうまく馴染めなかったり、新しい環境で新たなトラブルが生まれてしまうことがあります。
学校に行きたくない子供をもつ親がとるべき基本姿勢
義務教育といいますが、これは、戦後の時代に、親が子供を働かせるために学校に通わせないということがないように、親に課した「義務」を指しています。
子供にとって学校に行くことは「義務」ではなく、あくまで「権利」なのです。ましてや高校ともなれば行かない選択をする人だってたくさんいます。まずは親が落ち着いて子供の声をじっくり聞き、状況をしっかり把握することが大切です。
子供に対して親がとるべき基本姿勢
子供が「学校に行きたくない」と親に声を出すまでには、大人には想像もできないほどの葛藤や苦悩を経ています。まずはそういった子供の心境を一番に考えてあげることが重要です。
親に相談してくれたことを褒めよう
誰にも言わずに命を絶つような悲しい事件が多い中、大人に相談してくれたことをまずは心の底から「相談してくれて、ありがとう。」と褒めて、その勇気をたたえてあげなくてはなりません。そういった親の言動が、子供の心を開く第一歩です。
親の価値観や期待を押し付けない
まずは、「毎日きちんと学校に行かなくてはならない」「学校は友達に囲まれ楽しいものだ」という親の価値観や期待を捨てましょう。
大人が疲れたときに有休をとって休むように、子供も時には一呼吸いれることも大切です。
否定をせず、子供の個性を認めてあげよう
「学校に行けないなんて、弱い子だ」「甘えている」「それくらいクリアできなくて、社会に出てどうするんだ」という発言は状況を悪化させるだけです。確かにメンタルがちょっと弱い印象を受けますが、繊細な優しい子なのでしょう。甘えているだけの場合もありますが、おっとりした素直な子供なのでしょう。
でもおっとりした素直な子なのでしょう。子供の心は今とても傷つき、自信を失っています。今は現実を強く突きつけるよりも、自分への自信を回復させることが先決です。今悩んでいる子供の個性や長所をみつけ、褒めてあげてください。
勉強に関して悩んでいる場合は勉強の環境を整える
勉強がわからない、テストの点がとれないが理由の場合は、すぐに環境を整えてあげましょう。勉強がわからない子を対象とした家庭教師や「教科書ガイド」といった問題集も書店にでています。
親子で一緒に悩みながら過ごす時間も、後から振り返れば貴重な時間となるでしょう。
小学校・中学校・高校別!子供が悩んでいる心境や対処法
子供の成長段階によって、学校に行きたくない背景や対処法が異なります。子供の心は千差万別なのであくまで一例ですが、それぞれのヒントとなるよう解説していきます。
小学校低学年の子供のために親ができること
これまで優しい保育士や幼稚園教諭とすごした幼児期と違い、規律のある学校生活が始まり、集団生活に馴染めない子供も出てきます。学校に行きたくない原因が子供自身にも分からない場合もあります。
小学校1年生~小学3年生の子供の心境
低学年では、学校が怖いと感じてしまうことが多いようです。きっかけは先生やちょっと乱暴な同級生などですが、学校全体が怖い存在となり、恐怖を感じて学校に行きたくないというケースに至ります。
親ができること
話してくれた当日や翌日は学校を休んでいいでしょう。その際、ずる休みではなく「自分の心がちょっと元気がないから休む」という理由を話すことで、小さいながらも感じる罪悪感も減り、心が元気になったら学校へ行くというきっかけにもなります。
その上で、学校に相談し、原因究明や対策を一緒に探り実践してもらえるよう手配します。状況によっては一緒に通学し様子を見守ることもこの世代の子供には有効です。
小学校中学年~高学年の子供のために親ができること
小学校中学年から高学年にかけての子供は、クラスで特定の仲良しグループを作ります。まだ相手の気持ちをちゃんと考えられる年齢ではないため、グループ同士のいざこざなどを起こすのもこのころです。
小学校中学年~高学年の子供の心境
思春期の入口にいるこの世代はもうほぼ中学生と同じような心境といえますが、まだ小学生の部分も残しているので、その時々で求めるものが異なる難しい年代でもあります。
親ができること
子供のように甘えてくるときはそれを黙って受け入れてあげる。大人びた態度をとるときはそっとしておいてあげる。いずれの子供の気持ちや態度も真実なので、大人モードのときにはそれに応じた言動で接してあげることがポイントです。
この頃になると至らないながらも自分の考えも出てきます。話をする際にはその部分を尊重しながら、基本的には「うん」「そうだね」という肯定的な態度で聞き役に徹することが重要です。
中学校に通う子供のために親ができること
思春期にさしかかり、友人関係や勉強、恋など、さまざまな悩みを抱える年齢です。また、親とあまり会話をしたがらない年代でもあり、まだまだ子供なのに大人ぶりたいと考えがちです。
中学生の心境
親にはわかってほしいけれど、「こんなところでトラブっているカッコ悪い自分を見せたくない」「どうせわかってくれない大人になんて踏み込まれたくない」こういった心理に陥りやすい時期です。
子供の心もまだ残っている世代なので、時にすごく甘えてきたリ、その反動にわざと憎まれ口を聞いてみたり複雑です。
親ができること
「自分でもなんで学校に行かれないのかわからない」「頭の中がぐちゃぐちゃ」というのが本音の世代ともいえます。
大人の質問に対し「わからない」という答えにも「そうだね、いろいろ複雑だろうね」とそんな子供のすべてを受け入れ、子供が話すのをじっくり時間をかけて待つ姿勢が重要です。
高校に通う子供のために親ができること
悩んでいることがあっても、親に相談できる子とできない子に分かれます。子供がなんでも相談できるような親子関係が必要です。
高校生の心境
社会性も出てくる時期なので「学校に行かなければ親が恥をかく」「学校の単位がとれない」「進学や就職に響く」といった先のことも十分に理解しています。それを理解した上でも、学校に行きたくないという心境は深刻な場合が多いもの特徴です。
親ができること
「将来のために学校を辞めるべきではない」という回答には子供たちも飽き飽きしています。仮に辞めるという選択をしたとしても、高校まできていれば大学進学も「大検」をとればもちろん可能です。専門学校に進学して就職だってできます。
一番困るのはそういった具体的な先がみえないまま、ずっと家に引きこもるような生活になってしまうことですよね。
世間体だけを気にするような上辺だけでの心配を見抜く力もついていますから、親も腹をくくらねばなりません。
「高校にこだわる必要はないが、将来をどうしたいのか」「親が何をサポートできるのか」という視点で話を進めていくことで、子供が心を開いてくれることが多いです。
学校が本当に辛くなって不登校にならないように、今すべきこと
学校が楽しくない、学校に行きたくないという子供の心を放置していると、学校が辛くて本当に行けない不登校といった状況にまで至ります。
学校が心から辛くなる前にすべきこと
まずは親が落ち着いた対応をする
親だって人間です。動揺して怒鳴ったり、きつい言葉をあびせたくなってしまうかもしれませんが、それは何の解決にも至りません。子供が悩んでいる末に打ち明けてくれたという大切な部分を思い起こし冷静さを保ちましょう。
またもしすでにそういった態度をした後なら、親のプライドは一度捨てて、下記の5点をしっかりと子供に伝えましょう。
- 「大人である自分も動揺してしまった」
- 「怒鳴ったりした対応を許してほしい」
- 「二度としないと約束する。」
- 「一緒に乗り越えよう」
- 「いつでもあなたの味方だ」
上記のようなことは普段の会話の中では出てくることはないでしょう。それだけ真実として子供に伝わりやすくなります。
親子で学校に行きたくないと思う原因をしっかり把握する
親が絶対に味方であるということを子供たちに伝えた上で、子供と一緒に悩み、話し、はっきりしないまでも、そこに至った原因をみつけていきましょう。有言実行の態度で親が立ち向かう姿勢は、子供がもう自分だけで立ち向かわなくていいことを実感でき、子供の心を救うことにもつながります。
子供に納得させた上で学校に伝える
学校にも事実を伝える必要があります。子供が嫌がる可能性もありますが、学校の先生は「学校は毎日来るべきもの」「学校は楽しいもの」という固定概念をもっている人が多いのが事実です。
よって明確な理由なく休むと「ずる休み」「だらしない親子」といった間違った印象を植え付けることになり、子供にとってますます不利な状況になってしまいます。そのことを子供にしっかり伝え、まずは納得させてください。
その過程を踏んだら、学校に連絡します。文句をいったり感情的な対応をしてしまうと「モンスターペアレント」や「わがままな親子」ととらえられてしまい、学校側と同じ土俵に立てません。以下のようなことをまとめた手紙を2部作りましょう。
- 子供と冷静に確認した事実や現状だけを、時系列にまとめたリスト
- 学校だけの責任ではない
- 親も一緒に努力するので、子供のために解決できるよう学校も一緒に対応してほしい
1部は手元に残し、もう一方の手紙を校長あてに持参もしくは郵送(書留や内容証明で郵送した事実がこちらの手元に残るよう)します。その後しばらくは学校の出方を待ちます。
学校がダメならフリースクールや公共機関に相談してみる
学校側がまともに取り扱ってくれない、真摯な態度を取らない、事実をごまかしたり隠そうとするといった場合には、次の段階です。
各都道府県のHPで学校に行きづらくなった子供たちのためのフリースクールや相談機関の情報が掲載されています。
フリースクールの中でも公的に認められた機関だと、そのフリースクールに通うことで学校が出席扱いになることも多いので、それも選択肢の1つです。有料の施設もありますが子供の将来を考えたら投資すべきお金かもしれません。
また学校の不誠実な態度は教育委員会や市町村の相談窓口に、しっかり報告しましょう。その際も「冷静さ」「事実のみ」をキーワードに改善を求めることを伝えます。
子供にとって親がいる家が避難場所になるように
大人の私たちだって、疲れたら休みます。最近はより良い環境を求めて転職する人だって多いですよね。でも、子供は学校を休んだり、環境を変えることはNGでしょうか?子供にとって家が安心する避難場所になるよう焦らずじっくりがんばってほしいと思います。
学校に行きたくないと言い出す前に、「今日は休みたい」と言い出す場合があります。本当に体調不良ではない場合、学校を休みたい気持ちは?子供の心理を理解した親の対処を参考に、不登校にならないように、子供の気持ちに寄り添ってフォローしてあげましょう。