共働きの貯金事情
共働きをしているのになかなか貯金ができない5つの原因
共働き世帯の平均貯金額はどれくらいなのでしょうか。なかなか貯金ができない夫婦は、どのような点を改善することができるのでしょうか。なかなかお金を貯められない共働きの夫婦に、貯金するためのヒント等をご紹介します。
共働き世帯の平均貯金額を知っておこう
共働きなら独身時代よりも収入が増えるから貯金をどんどん増やしていけそうな気がしますが、現実的には貯金ができないと嘆いている夫婦が多いです。
ひとつの世帯で2人分の収入があるのに貯金ができないのはなぜなのでしょうか。今回は、共働き世帯の貯金事情を考えてみます。平均貯蓄額、貯金の方法、貯金口座の管理方法などから、お金を貯めるためのヒントを見つけていきましょう。
共働き世帯の年収と平均貯金高は20代・30代では意外に少ない?
総務省統計局の「平成26年全国消費実態調査」によりますと、2人以上の世帯人数がいる世帯の平均貯蓄高は1565万円でした。もちろん、これはすべての年齢階級を合算した貯蓄額ですので、20代や30代などの若い世帯はそれぞれ348万、596万円と低くなっています(注1)。
世帯主の年齢別世帯収入と平均貯蓄高
30歳未満 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 | |
---|---|---|---|---|---|
世帯収入 | 459万円 | 602万円 | 731万円 | 848万円 | 606万円 |
世帯貯蓄高 | 348万円 | 596万円 | 930万円 | 1592万円 | 2133万円 |
共働き世帯は30代で世帯年収分の貯金額を目指す
総務省の統計では、共働き世帯や専業主婦世帯などの勤務形態別の貯金額は示されていません。しかし、共働き世帯の多い30歳未満~30代の貯蓄高を参考に、30代のうちに世帯年収分の貯金を作れるように目標にするのも良いでしょう。22歳から働き続けるとするならば、年収の5~10%は少なくとも貯金するようにしたいものです。
共働き世帯はどんな貯金方法をしている?毎月決まった額を貯蓄に回すのが理想!
給料が振り込まれるメイン口座から生活費を自由に使い、「残った金額=貯蓄額」という人もいるでしょう。また、定期貯金などの月々の定期的な貯金を実施している人も多くいます。同じく平成26年全国消費実態調査によりますと、不定期な貯金よりも定期的な貯金を実施している人が多いことが分かります(注2)。
貯蓄の種類
通貨性預金 | 定期性預金 | 生命保険等 | 有価証券 | その他 | |
---|---|---|---|---|---|
平成21年 | 17.9% | 43.7% | 23.4% | 13.3% | 1.8% |
平成26年 | 21.2% | 41.0% | 22.1% | 13.8% | 1.9% |
共働き世帯はなかなか貯金ができない!貯められない5つの原因
切り詰めて生活しているつもりでも、なかなか貯金ができないという共働き世帯は少なくありません。共働きなのに貯金ができないのは、どのような原因が考えられるのでしょうか。
1.パートナーとお金の話をしたくない
一般的なマナーとして、お金の話をすることは上品なこととはされていません。夫婦であっても元々は他人なのですから、お金のことに関してあけすけに話すことは難しいと考える人もいます。お金の話をまったく1度もせずに育ってきた人ならなおさら、家族であってもお金の話をするのは上品ではないと考えてしまうでしょう。
ですが、このようにお金の話をせずに生活していると、夫も妻もいつまでたっても家計の全体像を把握することができません。そのため、結婚してから数十年経っているのに共同貯金どころか個人的な貯金もできていない・・・という恐ろしい結果になってしまうこともあります。
2.配偶者に正直な年収を知られたくない
お金の話をすることが特別に苦手というわけではないけれど、結婚相手に正直な年収を教えたくないという人も少なくありません。「収入が多いことが相手にバレると、金銭的に頼られそうで嫌だ」「学校は私の方が良いところを卒業しているのに、収入が低いと知られてしまうと、バカにされそうだから教えたくない」「意外と家計に余裕があることを知って、相手が仕事を辞めてしまうと困る」などの理由から、年収を曖昧にごまかす人がいます。
そのため、お互い相手の貯金を多く見積もり、「わたしが貯金しなくても、配偶者が貯金しているから大丈夫」と考えて、独身のときと同じようなお金遣いになってしまうこともあるでしょう。
3.節約志向がない(それでも生活できてしまうので経済状況に気づかない)
収入が高くなればなるほど貯金が増えるわけではありません。使いきれないほどの多額の収入がある人は別ですが、世帯収入が800万円~2000万円ほどのいわゆる「高収入」に分類されるようになると、お金に無頓着になって支出が過剰に増えてしまい、収入が低かったときよりも貯金ができなくなってしまうことがあるのです。
例えば、幼稚園から大学までの私学一貫教育や、1年以上の長期留学などの数千万円単位でお金がかかる教育計画も、収入がある程度増えてくると、「うちでも可能かも」と思って選択するようになります。もちろん、綿密に計画を立てて実行するならば問題はありませんが、「世帯収入=使えるお金」と勘違いして計画を立ててしまうと、家計を圧迫してしまうことにつながりかねません。
収入が増えたからと言ってその分支出を増やしていては、貯まるものも貯まりません。収入が増えても安易には支出を増やさないようにしていきたいものです。
4.「共働きだから仕方ない」と言い訳することが多い
共働きを続けながら掃除も洗濯も料理も完璧にしようとすると、やはり体力的にも精神的にも負担が大きくなってしまいます。時々は外食やケータリング、ベビーシッター、家事代行サービスなどを利用することは、過度のストレスを貯めないために良いことではあると言えるでしょう。
ですが、共働きであることを言い訳にして家事や育児のほとんどを外注化してしまうと、収入より支出の方が多くなってしまうことがあります。何事もほどほどにするようにしましょう。
5.お金を貯められない時期が多すぎる(ように思える)
結婚する前は結婚資金の貯金のためにお金がかかり、結婚後は新居に必要だった資金の返済に追われ、子供が生まれると子供のためにお金がかかるようになり・・・と、いつでも貯められないための理由があり、老後や子供の進学を見据えた純粋な貯金をする時期がないと考える人もいます。
ですが、お金がないならば結婚式をしないという選択も可能ですし、新居にお金をかけないように独身時代のアパートや家具を利用して生活を始めることもできますし、子供が生まれても仕事を続けるなら所得が急激に減ることもありません。
確かに人生は常にお金が必要ですし、予定外の出費も毎月発生します。それでも、お金を貯められる人はきちんとお金を貯めています。「今だけどうしてもお金がかかるから」と言い訳をするのではなく、支出を抑えて貯金していくようにしましょう。
共働き世帯は貯金できないときもある!
もちろん、貯金がまったくできない時期というのも人生にはあるかもしれません。予定外に子供が私立中学や高校に進学したときや、リストラや転職などで収入が一時的に絶たれたり減ったりしたとき、また、何らかのトラブルに巻き込まれて多額の負債を抱えることになってしまうこともあるでしょう。
そのようなときは、無理をせずに一時的に貯金を諦めることも大切です。支出が多くなる状態や収入が減る状態が一生続くことはまずありません。「時期が来たら、また貯金をしよう」と気長に考えるようにしてください。
経済的状況が悪いときほど金銭トラブルに巻き込まれやすい
経済的状況が悪いときほど、冷静な判断ができなくなってしまいます。現状を打破しようとして、「誰でも簡単に月に20万円の副収入が得られる方法を教えます」「FXで儲けよう」といった一攫千金を謳う言葉に関心を示してしまうこともあるでしょう。
もちろん本当に月に20万円の副収入を得ている人やFXで儲けている人もいますが、甘い言葉に釣られて損をしている人の方が圧倒的に多いことを忘れてはいけません。金銭的に苦しいときは判断力も鈍っている時期だと考えられますので、普段以上に地道に稼ぐことと地道に貯金をすることを心がけてください。
共働き世帯の貯蓄のための口座名義はどうすべきか
貯蓄のための口座を開設している場合、口座名義はどうすることができるでしょうか。金融機関の口座は連名で開設することができませんので、講座を設ける場合は夫婦どちらかの名義にすることになります。夫婦どちらの名義にする方が良いのか、それぞれのケースにおけるメリットとデメリットを見ていきましょう。
夫の名義で夫婦の貯金を管理する場合
夫の方が収入が多いケースが多いですので、夫が独身時代から貯めていた貯金と合算して夫婦貯金を貯めていくこともあります。この口座に毎月夫婦で決めた額を、それぞれの給料から入金します。もちろん、これでも問題はないのですが、貯金からお金を出すときに問題が発生することもあります。
例えば、住宅購入時の頭金などのまとまったお金をこの口座から出すとき、夫婦の意識としては夫婦の貯金を頭金として使用することとなります。ですが、お金の実際の流れとしては夫の口座(夫が所有していたお金)から頭金が支払われることになりますので、不動産の持ち分も夫の方が多くなってしまうことになります。不動産は夫婦二人の平等な共同財産にしたい場合は、税務署等に二人で夫名義の口座に貯金をしていたこと等を説明しなくてはなりません。
また、夫が先に亡くなってしまったときに、相続の問題が発生します。夫婦のお金をすべて夫の口座に入れておくと、夫が死亡した際に、夫の両親(生きている場合)や夫の子(前妻の子や認知している子)、夫婦二人の子にも財産分与をしなくてはならなくなってしまうのです。
そのため、老後のために貯めておいたお金で悠々自適に暮らしていこうという計画そのものが、成り立たなくなってしまうこともあるでしょう。女性の方が平均寿命が長く、また、結婚時の年齢が低いことが多いのですから、老後資金を夫の口座にまとめておくことはあまりおすすめできないのです。
その他にも、離婚時に財産分与でもめることも想定されます。離婚時は、法的には結婚期間中に得た収入や財産は夫婦2人の共同財産とみなされますので、正確に2人で分けなくてはいけません。ですが、すべての二人の共有財産を夫の名義の口座で保有していると、夫が結婚前に貯めていたものなのか、結婚後だけに貯めたものなのかが不明瞭になり、もめた結果、妻の取り分が少なくなってしまうこともあります。
妻の名義で夫婦の貯金を管理する場合
パートなどの非正規雇用で妻が働いている場合、金融機関が営業している平日昼間は妻の方が時間的に余裕がありますので、妻が夫婦の貯金を自分名義の口座で管理しているケースも多くなるでしょう。ですが、このケースも、夫名義で夫婦の貯金を管理する場合と同じく、住宅購入や妻の死後などに問題が発生することがあります。
所得比に合わせてそれぞれの口座で管理する場合
同一口座で夫婦の共同財産を管理することは、さまざまな問題が発生する恐れが想定されますのでおすすめすることはできません。では、所得比に合わせてそれぞれの口座で管理することは良いアイデアなのでしょうか。
夫婦の収入に格差があったとしても家事や育児の分担割合が平等ではない場合、単純に所得比だけで貯金を分けてしまうと、家事や育児を主に担当する人は不公平感を覚えるかもしれません。例えば、夫の年収が750万円、妻の年収が150万円(パートのみ)だったとします。妻は1日に5時間だけ外で仕事をし、残りの時間は家事と育児に従事し、夫がまったく家事や育児を手伝わなかったとします。
このような場合では、夫が仕事を続けるために妻は自分のキャリアを犠牲にしてまで家事や育児を実施しているとも見ることができます。にもかかわらず、単純に所得差だけでそれぞれの口座で夫婦共同財産を管理すると5対1に分配することになり、妻名義の財産は夫のわずか5分の1しか形成できないことになってしまうのです。家事や育児といった現金収入にはつながらないことに対して金銭的評価が行われない状態とも言えますので、決して望ましい貯金方法とは言えないでしょう。
ただし、収入差はあっても家事や育児を平等に分担している場合や夫婦双方が納得している場合は、収入比によって夫婦の共同貯金を分けることは良いことです。夫婦で話し合って貯金額や貯金の分け方について決めておきましょう。
半額ずつそれぞれの口座で管理する場合
夫婦の貯金なので、夫婦両方の口座に同額だけ貯金するという方法もあります。もちろん、自分名義の口座だから自分の収入から貯金するという風になってしまうと、収入が少ない方にとっては負担が大きすぎ、収入が多い方にとっては負担が軽すぎることになってしまいます。
収入差を考慮して夫婦それぞれが共同貯金として支出する金額を決定し、夫婦二人の貯金を合算してから正確に二等分して、それぞれの口座に入れるようにしてください。夫婦が対等な関係を続けていくためにも、口座に入れるお金の額と分ける割合についてしっかりと吟味することが大切です。
共働き世帯は計画的に貯金しよう
1年で100万円といった風に金額ベースで貯金計画を立てるよりは、収入の1割~2割のように割合ベースで計画を立てる方が実現しやすくなります。夫婦でしっかりと話しあって計画的に貯金し、堅実な家計を形成していきましょう。
参考文献
- 注1、注2:総務省統計局「平成26年全国消費実態調査」