左利きの子供を無理に直すべきではない!右利きに矯正する親は減っている
少し前までは、左手で食事をしたり字を書いたりすることはあまり良くないことと考える人が多く、子どもが左手で箸や鉛筆を取ろうとすると嗜めたり、強制的に右手で持たせるように指導したりする親は多くいました。
ですが、近年、左利きであることは生まれついた特徴とみなされ、矯正されることなく個性を伸ばしています。左利きであることを直すことの弊害の方が、左利きを矯正して得られる利点よりも大きいと考えるようになってきたためとも言えるでしょう。また、左利きの人を見ても、「親がきちんと矯正しなかったから」とか「行儀が悪い」「作法としてなっていない」と考える人が減ったからとも言えるのではないでしょうか。
また、生まれつき左利きの人は、意識的に左の手を使っているのではなく、自分にとって使いやすい方の手がたまたま左だったということですので、無理に使いやすい手を奪われてしまうことで手先が不器用になったり、言語など他の領域にもマイナスの影響が出るようになったり、必要以上に内向的になったりする可能性がないとは言えません。
子どもが持つ能力を最大限に発揮できるためにも、左利きであっても右利きであってもその子の個性を重視した指導が必要だと言えるのです。
左利きは損?日常生活の不便を探る
とは言ってもほとんどの人が右利きの社会において、左利きとして生きていくことは多少の不便を伴います。子供が大きくなったとき、具体的にはどのようなときに不便を感じるでしょうか?
おたまでスープをよそいにくい
よそう部分が円いおたまの場合は、左利きでも右利きでも特に使い勝手に違いはありません。ですが、スープなどをすくいやすいように円い部分の側面が漏斗状に先細りしているおたまの場合は違います。
左利きの人が使うと、先細りしている部分がスープなどをよそうときに上側に来てしまいますので、スープがこぼれたり、よそった後もおたまからぽたぽたとしずくが落ちたりしてしまうのです。
自動改札が通りにくい
駅の自動改札は、ICカードをタッチさせる部分や切符を入れる部分は、通常、右側に設置されています。そのため、左利きの人がICカードをタッチさせるときは、使いにくい右手でタッチさせるか、左手にICカードを持って体の前面で手を交差させるような形で読み取り画面にタッチさせます。
ICカードのように読み取り画面にタッチさせるときは右手でできる左利きの人も、切符などのように小さなカードを切符投入口の小さな場所に入れ込むことは右手ではできないということが多くあります。そのため、右手で持った荷物が邪魔をしないように配慮しながら、左手で切符を持ち、体の前面で左手を右側に交差して切符を投入しなくてはならないのです。
包丁が切りにくい
両面が切れやすくなっている包丁なら問題はないのですが、片面だけよく切れるように斜めに砥いである包丁の場合は、左利きの人が使うと、あまり切れなくなってしまいます。
そのため、必要以上に切る動作に力を入れたり、のこぎりのように包丁を前後に動かしてしまったりしますので、包丁がすぐに使えないようになったり、まな板に傷が付きやすくなったりしてしまいます。
縦型の皮むき機が使いにくい
T字型の皮むき機は右利きにとっても左利きにとっても使いやすさに違いはありませんが、縦型の皮むき機は鋭利な刃が右側についていることが多く、左利きの人が使うとまったく皮をむくことができないことがあります。
自分の家ならT字型の皮むき機を購入すれば問題を解決することができますが、小学校や中学校などの調理実習などで使う調理器具が決まっている場合は、包丁でじゃがいもなどの皮をむかなければならなくなり、右利きの人よりも時間がかかってしまうことがあります。
はさみが切りにくい
最近では左利き用のはさみも増えてきましたが、ちょっと前までは近所の文房具屋さんで左利き用のはさみを購入することは困難でした。左利きの人が右利き用のはさみを使うと、包丁を使うときと同じく、切りやすい面を紙などに当てることができないため、非常に切りにくくなってしまいます。
そのため、必要以上に力を入れて肩が凝ってしまったり、紙がまっすぐに切れなかったりするのです。はさみは幼稚園や小学校などの子どもが幼いときから使うものですので、まっすぐに切れないことで、子どもが「わたしは不器用なんだ・・・」「工作は苦手」と意識してしまうこともあるでしょう。
飲み会などでは左端に座ることが多くなる
個人のスペースが充分に確保されているときには問題はなくても、飲み会など一人一人のスペースが狭い場所では、左利きの人は隣の人と腕が当たってしまわないか考えてしまいます。そのため、自分から左端に座ることが多くなり、大勢の人と話したいと思っても、限られた場所で限られた人と話してしまいがちになります。
行儀が悪いと注意されることもある
左利きというのは右利きとは使う手が違うというだけのことですので、右利きで正しい箸の持ち方や鉛筆の持ち方があるように、左利きにも正しい箸の持ち方や鉛筆の持ち方があります。
ですが、正しく箸や鉛筆を持っていても、他人から見ると正しく持っていないように見えることがあり、「きちんとした持ち方を習っていないの?」「箸や鉛筆を正しく持てないのは大人として恥ずかしいよ」と大人になっても注意されることもあります。
また、親が右利きの場合は、左利きの子どもに、正しい鉛筆の持ち方や箸の持ち方を上手に教えられないこともあるというデメリットもあります。どのように指導して良いか分からず、いつの間にか、おかしな鉛筆の持ち方や箸の持ち方が定着してしまった左利きの子どもや大人も少なくありません。
ピアノのメロディーが聞こえ難くなる
左利きの場合は、どうしても左手に力が入ってしまいますので、ピアノを弾くときも、右手よりも左手で奏でる音の方が大きくなってしまいます。ほとんどの曲はメロディーを右手、伴奏を左手で弾くように作られていますので、左利きの人がピアノを弾くと、メロディーがほとんど聞こえず伴奏ばかり聞こえてしまうと言う事態が発生してしまうこともあるのです。
横書きのときに手が汚れる
英文などの横書きのときに、左利きの人は鉛筆で書いたところに手が当たりますので、手が汚れやすいというデメリットがあります。ですが、国語の文章を書くときは、手が鉛筆で書いたところに当たりませんので、右利きの人よりも手が汚れにくいです。
ベルトを締めにくい
ベルトも右利きの人が使いやすいように穴とバックルが配置されています。上下のないデザインの場合は問題なく使えても、上下のあるデザインの場合は右利き仕様で締めなくてはなりませんので、非常に締め難くなってしまいます。
運針のときに戸惑う
小学校の家庭科で運針を習うとき、縫う方向が運針用布に書いてあることもあります。当然のことですが右利き用に矢印が書いてありますので、左利きの人は上手に縫うことができず、運針用布を裏返して縫うこともあります。
また、千人針やキルトではありませんが、数人で1つのものを編んだり縫ったりするときに、前の人が右利きの場合は、左利きの人はそのまま編み進めたり縫い進めたりすることが難しく、雑な編み目や縫い目になってしまうことがあります。
腕時計をつけたままではネジが回しにくい
腕時計は左腕に装着することを前提に作られていますので、通常の場合、ネジは右側についています。ですが、左利きの人は右手で腕時計をつけるのが大変なので、右腕に腕時計をつけることが多いのですが、右腕につけたままネジを回そうとすると、左手を変な方向に曲げて回さなければならなくなります。とても難しいので、一旦腕時計を外してからネジ調節をする左利きの人も少なくありません。
マウスが使いにくい
自分の家のパソコンなら使いやすい場所にマウスをセットすることができますが、学校や公共の場などでマウスがすでにセットされている場合、左利きの人はマウスを動かしづらく、使いづらいと感じることが多いです。
また、マウスを自分仕様に移動しようとしても、USBソケット口が右側で、ケーブルの長さが足りずにマウスを左側にセットできないということや、ケーブルがキーボード上に来てしまって邪魔になることもあります。
実験器具が使いにくい
顕微鏡などの実験器具の調節ネジも、右利きの人が使いやすく配置されていますので、左利きの人は苦労してしまうことがあります。
また、右手でネジを回すと反対に回してしまうこともありますので、火を強めようと思って火を消してしまったり、ステージを遠ざけようとして近付けてしまったり等、スムーズに実験を行えないこともあります。
左利きは得?特別感が嬉しいことも
設備や道具のほとんどは右利き用に作られていますので、左利きの人は不便な思いをしながら生きていくことになります。もちろん、左利きの人は小さいときから左利きであるわけですから、慣れてしまって、そんなに不便とは感じていないこともあるでしょう。
ですが、もし、左利きの人が生まれたときから左利き用に作られた設備や道具を使って生活しているなら、今感じている以上に器用に楽に生きていくことができたのは疑いようのない事実です。
もちろん、左利きであることはメリットがまったくないわけでもありませんし、皆が皆、生きにくさを感じているわけでもありません。左利きであることのメリットについて見ていきましょう。
特別感がある
大抵、どこの国でも左利きとして生まれる人は1割程度と言われています。つまり、左利きであることは圧倒的に少数派でもあるので、特別な存在として扱われることもあります。
また、左利きの人本人も、「自分は他とは違う」「わたしは特別だ」と感じることもあります。自分を特別だと感じることで、自己肯定感が強まり、自信を持てるようになりやすいとも言えます。
天才的だと思われることもある
左利きは少数派です。そのため、何か特別な人と思われやすいだけでなく、特別な能力がある人と周囲から見なされることもあるでしょう。
また、レオナルド・ダ・ヴィンチやピカソ、モーツァルト、アインシュタインなどの歴史上の優れた天才と言われる人が左利きであったことや、ビル・クリントン氏やバラク・オバマ氏などのアメリカ歴代大統領にも左利きが多いことなども、左利きは特別だと思われやすい理由の1つになっています。
両利きになることもある
親に右手を使うように指導されたり、自分で使いやすいように工夫したりするうちに、左手だけでなく右手も器用に使えるようになる人もいます。両利きになると、片方の腕に怪我をしても生活に支障がないだけでなく、スポーツなどでできることも増えますのでメリットは多いと言えます。
器用になることが多い
右を使うように指導されたり、自分で道具や設備を使いやすいように工夫したりしている間に、自然と器用になることも多くあります。また、道具の使いやすさについて頭を悩ますことが多いので、通常では考えられない道具の使い方や独創的なアイデアが浮かぶこともあります。
サービスエースを取りやすい
バトミントンやテニス、卓球などのスポーツの場合、左打ちの人がボールを打つと、右打ちの人が予想する場所と違う場所にボールが来るので、サービスエースを取りやすいというメリットがあります。
ただし、初めて顔合わせをしたときにはサービスエースが取りやすいですが、相手が慣れてしまって、「ここに打ってくるだろう」と予測すると、サービスエースには成りにくいです。
また、左利きの人は皆左打ちというわけではありません。左利きで右打ちの人もいますし、反対に右利きで左打ちの人もいるのです。
左利きも大事な個性!無理に直すべきではありません
左利きだから右利きに直さないといけないということももちろんありませんし、左利きだからできないことが多いということももちろんありません。右利きだから左利きだからではなく、その人が使いやすい方の手で、自分の個性を伸ばしていくことが大切なことです。
親が右利きで子どもが左利きの場合、鉛筆や箸の持ち方を教えるのに苦労するかもしれませんが、子どもが自分の利き手について不便だと感じることがないよう、物怖じしない子どもに育てていきたいものですね。