家庭訪問の目的
家庭訪問の目的・子供の安全を守るための先生の意図
家庭訪問の目的は学年により違いがあります。保育園や幼稚園では通学や災害時の安全確保のための地域の把握、小学校では家庭環境など、中学校では子供の家庭や学校での生活など、子供の成長に合わせた目的と先生の考える意図があります。担任の先生が家庭訪問する目的・意図を解説します。
家庭訪問の目的は何?目的を知って適切に対応しよう
幼稚園や保育園、小学校、中学校で実施される家庭訪問。先生が担任を継続しない限り、基本的には毎年実施されます。学校が家庭訪問する目的とは一体何なのでしょうか?
一番の目的は生徒の住む家や地域を知ること
学校が家庭訪問する一番の目的は生徒の家の場所や地域を確認することです。特に災害時の避難経路を把握したり、近隣にクラスや学校の友だちがいるかなどの確認も行ったりします。また、おおよその通学時間の把握や家庭状況をチェックすることも、家庭訪問の目的となります。
家庭訪問は一般的に4月の中旬からゴールデンウィーク前に実施されます。つまり、新学期が始まったばかりの時点で行いますので、担任の先生と言っても、生徒に対してあまり深く知らない状態で家庭訪問を実施します。
家庭訪問を実施することで、生徒と保護者を早い段階で深く知ることができ、的確な指導を与えていくことができるようになります。
年齢・教育段階による目的
これらの一般的な目的に、幼稚園なら幼稚園の、小学校なら小学校ならではの目的がプラスされます。
保育園における家庭訪問の目的
保育園に子供を預ける家庭は、ほとんどが共働きの家庭のため、なかなか家庭訪問のために時間をとって子供のことや抱える問題について話し合う機会がありません。
家庭訪問を行うことで保護者が子供にどのような思いを持っているのか、子供の個性をどのように捉えているのかを把握します。また子供のアレルギーや癖などについて具体的な話しを聞くことも家庭訪問の目的となります。
その他にはどのような環境で子供が育っているのかを確認することも家庭訪問の大切な目的です。昨今、問題になる虐待やネグレクトの芽を、家庭訪問の実施で察知することができるでしょう。
普段から子供と接しながら不審な痣や傷、攻撃的な行動や言葉遣いに気付くときは家庭訪問でもより時間をかけて念入りに調べることが勧められています。
虐待の疑いがある場合は、先生は1人で家庭訪問をするのではなく園長などの責任ある立場の職員と2人で家庭訪問するかもしれません。
深刻度が高いと思われるときは、児童相談所の職員と一緒に家庭訪問されることもあるでしょう。
幼稚園における家庭訪問の目的
幼稚園の先生は、幼稚園での子供の様子と、家庭での子供の様子を観察することで子供の置かれた状況や家庭における問題点などを把握したいと考えています。
普段、地域の人々や子供たちとどのようなかかわりを持っているのかを把握するなら、子供の環境をよりよく知ることができるでしょう。
幼稚園の保護者は、子育てについて悩みを持っていたり、他の保護者との関係や幼稚園での役員等の母親活動について悩みを持っていたりすることがあります。
普段は先生も忙しそうで、他の保護者の目もあるので悩みを聞いてもらうことができませんよね。家庭訪問の機会に、今抱えている子育ての悩みや幼稚園の先生への要望、子供の成育について気がかりな点について相談するのも良いでしょう。
小学校における家庭訪問の目的
小学校低学年の家庭訪問は学校生活を子供が本当に楽しんでいるのか、悩みを抱えていないのか、家庭学習はどのように行っているのか、子供の放課後活動について尋ねることが多いです。
もちろん、学校で目に余る行動をしている場合は、家庭訪問の機会に保護者に報告することもあるでしょう。
その他にも学校への協力について依頼される場合もあります。ベルマーク委員や学級委員などになることができるのか、親のスケジュールなどを尋ねられることもあるでしょう。
小学校高学年になると、勉強の遅れがちな子供や忘れ物が多い子供、提出物を出さない子供なども目立ってくるようになります。家庭ではどのような対処を行っているのか、学校での出来事を子供がどの程度親に話しているのか等について尋ねられることもあります。
保護者は先生の質問に正直に答え、問題が大きくなる前に対処しましょう。
中学校における家庭訪問の目的
中学校に進学すると、子供は幼稚園時代や小学校時代と比べると、学校の出来事を家庭で話さなかったり、反対に家庭での出来事を学校の先生や友人に話さなくなります。
そのため、子供が家庭で抱える問題に学校側は気付き難くなり、学校で抱える問題にも保護者は気付き難くなってしまうのです。
子供がしっかりと大事なことは親に話しているのかを知ることは、子供がまっすぐに成長していく上で欠かせないことといえるため、先生は家庭訪問を通じて、家庭での会話や子供との関わり方を中心にチェックすることが多くなります。
中学3年生になると、進学の問題も出てきます。今まで地域の公立幼稚園・公立小学校・公立中学校を通ってきた子供にとっては、初めての受験となるでしょう。
具体的にどの学校を目指しているのか、進学以外の選択肢を希望しているのか、親の希望と子供の希望は一致しているのか等について尋ねられることもあります。
玄関先での家庭訪問が増えている理由
近年、玄関先での家庭訪問が増えています。家庭訪問を実施する前に学校側から「玄関で応対して下さい」とお知らせが渡されることもあり、先生が家に来てから「お時間をとらせませんので、こちら(玄関)で話しても良いですか?」と言われることもあります。なぜ、玄関先での家庭訪問が増えているのでしょうか?
運動会を春に実施する学校が増えた
熱中症予防などの理由で、4月~5月に運動会を実施する学校も増えてきました。そのため、同時期に実施される家庭訪問を数日以内に終了させなくてはならず、担任の先生は1日に10軒以上を回らなくてはならないこともあります。
1日に10軒となると移動時間もかかるので、各家庭に5分~10分程度しか割けないこともあります。なるべく約束の時間に家庭を訪問するためには、1軒当たりの時間を短くするしかありません。
学区が広域になった
少子化の影響を受けて、いくつかの学区が合併して新しい学区になることもあります。また、市区町村によっては、近隣の学区への越境通学を認めていることもあります。
このように子供が通う地域が広くなると先生の移動時間だけでもかなり多くなってしまいます。そのため、1軒当たりの家庭訪問の時間が短くなることもあります。
親の都合がつかない
共働き家庭が増加することで親が家にいる時間が遅い時間帯に限定されることも少なくありません。ほとんどの家庭が18時以降の訪問を希望するなら先生は短時間に集中的に家庭訪問を実施しなくてはならなくなります。そのため、1軒当たりの訪問時間が短くなることもあります。
子供の都合がつかない
ほとんどの家庭訪問では、保護者と先生だけが話し合いますので、子供は同席する必要はありません。ごく稀にですが「お子さんもいてもらう方が良い」「お子さんに、次の訪問先まで案内してもらいます」と学校から指定された場合には、子供が家にいなくてはならなくなります。
ですが、お稽古事や学習塾などに忙しい子供も多く先生が指定した時間に家に居ることができない可能性もあります。
そのような場合には子供の都合も考えなくてはならず、1軒当たりの訪問時間が短くなってしまうのです。
家に上がってほしくない家庭が増えた
昔は家庭訪問と言うと、先生がリビングや客間に上がって話しを聞くのが普通だとされていました。ですが、今は「気軽に他人に家に上がってもらうことは抵抗がある」「家の中などのプライバシーにかかわることを見せるのは嫌だ」と考える保護者も多く、できれば玄関先で応対したいと願う家庭が増えています。
家庭訪問を実施しない学校も増えている
家庭訪問を実施しない学校も増えています。例えば、神奈川県川崎市の教育委員会による報告では、平成26年度と平成27年度において、市内の小学校113校のうち45校(約40%)が家庭訪問を実施し、市内の中学校52校のうち44校(約85%)が家庭訪問を実施していました。
家庭訪問を実施しない学校でも、個別の事情や問題があるときは、適時、学校職員が家庭を訪問すると言う対応を取っていることも報告されています。
川崎市内だけを見ると、小学校に限っては、家庭訪問を実施する学校の方が家庭訪問を実施しない学校よりも多いことが分かります。つまり、家庭訪問を実施しない学校が主流になりつつあると言えますよね。
なぜ家庭訪問を実施しない学校が増えているのか理由と分析
なぜ、家庭訪問を実施しない学校が増えてきたのでしょうか?もちろん、学校によって家庭訪問を実施しない事情は異なりますが、一般的にほとんどの学校について当てはまる理由を紹介します。
学校に来てもらう保護者面談に重きを置く学校が増えている
学校は、保護者が学校や先生と接する機会として『親子参加型の行事』や『授業参観』、『保護者面談』、『家庭訪問』等を企画します。
その中でも家庭訪問は、各家庭を回るための時間・移動する時間・家を探す時間がかかってしまうことから、効率が良くない学校とのかかわり方とも考えられています。
家庭訪問に時間を割くなら、保護者に学校に来てもらって保護者面談を実施する方が先生の時間を無駄なく使用することができるので、保護者1人1人にも充分な時間を取ることができます。
そのため、家庭訪問を実施するよりは、保護者面談の回数を増やしたり、保護者面談における1人当たりの時間を増やす方が、子供の問題についてより深く話しあうことができると考える学校が増えてきたのです。
子供の親も保護者面談を望む家庭が多くなっている
保護者側からも、家庭訪問を実施して先生が来るのを待っているよりも、保護者面談をして親が学校に決まった時間に行く方が良いと言う意見が増えています。先生に家に来てもらうためには、掃除をいつもより念入りにする必要が生じるかもしれません。
また、先生が来る時間がずれることもあるので、予定時間の前後1時間は家にいなくてはならない、つまり拘束される時間が増えると否定的に考える保護者も多くなっています。
それに加えて、プライバシーを尊重したいと言う保護者の声が強まっていることもあります。家庭の様子から子供を判断してほしくないと考える親や、自宅を見せたくないという親も少なくありません。
授業数が増えている・カリキュラムが変更した
いわゆる『ゆとり教育』が終わり、小学校や中学校の授業時間も10年前よりは増えました。授業時間が増えた分、学校にいる時間も延びたので、必然的に放課後の時間は減ってしまったのです。
そのため、家庭訪問を実施する時間も減ってしまい、家庭訪問を取りやめる小学校・中学校が増えていると言えます。
家庭訪問は先生にとっても重荷?
『家庭』というアウェイに出かけることは、先生によっては非常に心細く感じることでもあります。ここぞとばかりに先生を攻撃する家庭もあるでしょうし、威圧的な態度で息苦しく感じることもあるでしょう。
『学校』というホームにいるときなら、対応が難しいと思われる保護者と接するときは、学年主任や教頭・校長などに応援を頼むこともできますが、『家庭』では味方が一人もいない状況に追い込まれるのです。
親にとって家庭訪問は大きな負担
ベネッセが、2013年、小学校1年生から中学校3年生の保護者(回答者数1,362人)を対象に実施した調査によりますと、家庭訪問をしてほしくないと考える保護者が70.6%もいました。
理由としては、掃除やお茶・時間調整などの準備が必要であることや、学校で実施する面談と大差ないために家庭でわざわざ先生と話す必要性が感じられないこと等が挙げられていました。今後は、ますます家庭訪問が減っていくのではないかと思われます。
家庭訪問の経験を子育てに活かす
とはいえ、家庭訪問を実施している学校も少なくありません。親自身が「家庭訪問は嫌なものだ」と頭から思い込んでしまうのではなく家庭訪問の機会に先生と親交を深めたり、子供の学校の様子を詳しく知ったりすることができるとポジティブに捉えて下さい。
家庭訪問で大切なのは、家庭訪問が終わった後の子供との対応です。ある程度の年齢になると、子供は「お母さんと先生は何を話しているのかな?」と、家庭訪問での話しの中身に興味を持つようになります。
例え先生が厳しい内容を言ったとしても「先生もお母さんも、あなたのことを一番に思っているんだよ」ということを子供に言い聞かせるようにしましょうね。