保育園のお迎え事情あれこれ…ルール違反な親にならないために!
厚生労働省によると、平成 26 年の女性の労働力人口は 2,824 万人にものぼり、労働力人口総数に占める女性の割合は 42.9%となりました。正社員や契約社員、パートなど雇用形態はさまざまですが、働く人の約半数が女性である結果を示しています。
しかし働く環境の多くは、何よりも仕事が優先されるという男性的社会という現状は相変わらず変わっていません。小さい子どもをもつ母親たちも、家計のため、子どもの教育費のため、自分のキャリアのためと働く主な理由は違っても、そんな社会に飛び出てがんばっています。
そのとき、自分のかわいい子どもを預かって日中の保育や日常生活のルールなど教え育ててくれるのが保育園や認定こども園(この後は総称して「保育園」とします)です。
最近は、夜遅くまで預かってくれるところもあり、保育園さえ見つかれば、あとは子どもを産む前の条件でも働けるような気がしますよね。ですが、実際は、保育園にも「お迎え」や「お迎え時間」に関するルールがあります。ここでしっかり確認していきましょう。
保育園に預けるなら!基本のお迎え時間をできるだけ守ること
お迎えルールその1は「基本のお迎え時間をつくる・守る」ということです。急な残業が多い場合は仕方ない面もありますが、フリーランスやフレックスタイム制の場合でも、親が何時に帰ってくるのか分からないと、子どもの不安が増すだけでなく、それをフォローする保育士さんも大変です。
また時間帯によっては保育士さんの人員配置にも影響するので、仕事の終了時間と通勤時間から、基本のお迎え時間を保育園に連絡することが大切です。
時間は何時くらいにお迎えに行けば良い?認可保育園の場合
保育園のお迎え時間の決まりはどうなっているのでしょうか?まずは認可保育園のお迎え時間のルールをみていきましょう。
認可保育園の基本的な時間帯システム
国によって認可されている「認可保育園」では、親の就業時間を目安に保育の必要量を2つに分けて考えています。
保育者(主に母親)の就労時間が120時間以上の場合・・・「保育基準時間」
保育者(主に母親)の就労時間が120時間未満の場合・・・「保育短時間」
この違いによって保育園で子どもを預かってくれる基本時間が異なってきます。
保育園の開所時間と閉所時間間は市町村や施設によってまちまちですが、一般に7時~19時といわれています。その中で「保育標準時間(利用)」であれば、1日11時間の枠の中で7時~18時、「保育短時間(利用)」であれば、1日8時間の枠の中で9時~16時など保育園側が定めた時間内で保育を受けることができます。
認可保育園の延長保育
お迎え時間が保育園の定めた時間より遅くなる場合、事前に申し込みをすることで19時までなど延長保育を受けることができます。
そのシステムは施設によってかなり異なりますが、一般に、毎日延長保育をする場合の「月ぎめ」スタイルや1週間や前日までといったその都度申し込みをする「スポット利用」スタイルがあり、事前に申し込みをした上で園が指定した延長保育料金を支払います。
認可外保育園のお迎え時間は?
児童福祉法に基づく国の認可を受けていない「認可外保育園」は、民間の企業やNPO団体が運営している施設のため、お迎え時間も各施設によって大きく異なります。
認可外保育園の基本的な時間帯システム
一般に認可外保育園では親の就労時間などに関係なく、20時、22時といった遅めの時間まで預かってくれるところが多いのが特徴です。中には夜中まで、24時間体制というところもあります。一般に国からの助成がない分、保護者が負担する保育料金が高めになります。
認可外保育園の延長保育
各園によってかなり違うことが特徴です。認可保育園のように基本時間を設けて延長保育と区別しているところ、元々高い料金設定でかなり遅い時間まで延長料金なくみてくれるところなどさまざまです。
お迎え時間に間に合わないかも!遅れるときはみんなはどうしているの?
お迎え時間の基本的ルールがわかったところで「自分の職場は不規則に残業があるから、間に合わないときどうするの?」と不安になった方、他の先輩ママたちはどういった対応で乗り越えているのでしょうか?その工夫した技をみていきましょう。
お迎えが遅れる前に!こんなときは連絡が必要です!
保育園は子どもの命を預かるところです。子どもを狙った凶悪犯罪などの社会的背景を受けて、保育園ではこれまで以上に子どもを守るための意識が高まっています。
お迎えが遅れるなど何かトラブルや変更があるときは、必ず事前に保育園に連絡をして、保育園と連携をして子どもを守るという意識が親にも求められています。
お迎えする人がいつもと違う
例えば悪意ある人間が身内と偽って子供を誘拐する、別居中の片親が子供を園から勝手に連れ帰る、その子供がどこの保育園に通っているかわかれば、このような行動も可能になってしまいます。
こういった懸念すべき問題から、園によってはお迎えをする人は事前に登録した上で、当日の朝に保育園で確認するなど対応しているところもあります。きっちりとルールを設けていない場合でも、ママまたはいつもお迎えに行く保護者や祖父母本人から保育園への連絡が必要です。出来れば電話などではなく、朝の時点で伝えておくようにしましょう。
園としては、いつどのタイミングで各家庭の問題に介入してしまうか把握しきれません。自分の家庭に問題はないとしても、園に保育を依頼する以上、トラブル発生予防を園だけに丸投げするのではなく、保護者側も配慮・協力するべきでしょう。
いつものお迎え時間に遅れるとき
保育園の開所時間内であっても、どうしても仕事が終わらなくていつもの時間よりもお迎えが遅くなりそうといったときも、保育園に連絡をします。
それはママやパパがいつもの時間に来ないことで不安になった子どもにとっては「〇時には来るって、ママから電話があったよ」というフォローのし方が一番安心するからです。
「連絡なし」は子どもも保育園の先生も、何かトラブルがあったのではと余計な心配をすることになります。保護者としての最低限のマナーです。
お迎え代行作戦1◆家族や親せきに頼る
仕事の終了時間が18時半など、保育園の閉所時間にどうしても間に合わないことがわかっている場合、お迎えの代行を依頼する方法が最も多い対策です。中でも家族や親せきの力を借りることができたら安心です。
パパもお迎え体制を整えておく
保育園の送迎は夫婦で分担すべき事柄です。曜日で決めたり、休憩時間に連絡を取り合うなどしてください。
現実としては、パパ自身やパパの職場の理解度、融通の利く勤務体制といった条件に左右されてしまいますが「仕事があるから無理」などと一蹴するのではなく、子供を持った以上、出来る限り手を尽くすことも親の努めです。共働き家庭が大半である保育園では、ママではなくパパが主に送迎を担っている家庭は珍しくありません。
祖父母にも保育園のお迎えをお願いする
保育園の近くに祖父母がいる場合、お迎えの代行とママかパパが家に帰るまでの間、保護をお願いする形です。ただ祖父母がまだまだ現役で働いていたり、逆に高齢のためなかなか幼児の面倒を見るのは難しい場合もあります。
また、かわいい孫のため、娘や息子のためと思っても毎日の保育園送迎となると負担が大きく、中にはそれが原因で関係が悪くなってしまうこともあります。感謝の気持ちを忘れず、祖父母だけでなくベビーシッターに代行を頼むといった負担軽減のケアも重要です。
お迎え代行作戦2◆ファミサポ・ベビーシッターで代行を頼む
親戚や夫婦間では解決できないときのため、有料で他人に頼む方法も事前に知っておきましょう。核家族化の社会では多くの人が利用しするファミリーサポートやベビーシッターですが、はじめて利用する際は、事前に契約内容の打ち合わせや保育園への顔合わせが必要です。今日申し込んで今日すぐ利用!というのは難しいところがほとんどなので、余裕をもって登録しておくようにしましょう。
ベビーシッター会社によっては、インターネットで即日すぐに簡単に利用できる団体もありますが、ごくまれに悪質な業者もあるそうです。子どもの命を預ける以上、多少面倒だったり費用が高くても、慎重な選択が必要です。
ファミサポとは?育児を支援したい人、受けたい人を繋ぐシステム
ファミリーサポートセンターとは各市区町村が設置・運営している団体で、一時預り的な育児を依頼したい人と、その育児を受けてもいいという一般の人が、コーディネーターを介して有料で契約を結ぶシステムです。あくまで社会貢献的な要素が強く、利用時間は通常7時~19時の間で、1時間700円前後の料金で、「保育園への送迎」「提供者宅での子どもの預かり保育」などをしてくれます。
その代り子どもがケガをしたときの保険などには加入していますが、病気による体調悪化などの保険には加入しておらず病児の子どもは預からない、宿泊預かりはしない、といった団体による細かい規制があります。問い合わせは各市町村の窓口やホームページからできます。
ベビーシッターはどこまでしてくれる?料金は高めだがサービスは手厚い
民間企業やNPO団体が運営しています。料金やサービスは団体によってまちまちですが、「保育園への送迎」「習い事への送迎」「依頼者宅での保育・保護」などしてくれます。団体よっては病児保育や夕飯を作って子どもに食べさせることまでしてくれるところもあります。
対応時間も団体ごとの規定なので、24時間可能というベビーシッター会社もあります。料金は高めで1時間2000円あたりが目安です。
勤務体制、環境を整えて対策!就労時間と育児休業法でお迎え時間を工面!
厚生労働省の「育児・介護休業法のあらまし」の中で、育児と介護に携わる労働者のために、1年以上同じ事業者に努めている、日雇いではないといった条件のもとに、事業主に対するさまざまな規定を設けています。育児に焦点をあててみていきましょう。
時短勤務を利用する
「所定労働時間の短縮措置(短時間勤務制度) (第23条第1項)」によれば、「事業主は、3歳に満たない子を養育する労働者について、労働者が希望すれば、短時間勤務制度を講じなければならない(抜粋)」と定めています。自分がそれらの条件に該当する限り、9時から16時などいわゆる「時短勤務」を請求することができます。
フレックス勤務を利用する
「3歳に満たない子を養育する労働者に関する代替措置 (第23条第2項)」によれば、「事業主は、短時間勤務制度について困難と認められる場合は「始業時刻変更等の措置」を講じなければならない(抜粋)」と定めています。始業時刻変更等の措置とは、
- フレックスタイムの制度
- 始業又は終業の時刻を繰り上げ又は繰り下げる制度(時差出勤の制度)
- 労働者の3歳に満たない子に係る保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与
などです。これらに準じた勤務体制にするよう事業主に請求することができます。
残業が少ない部署への転属
「事業主は、3歳に満たない子を養育する労働者が請求した場合においては、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、所定労働時間を超えて労働させてはいけない」と定めていて、業務に支障がない限り残業をしなくてよいとなっていますが、現実的に難しい業務の場合は、残業が少ない部署への転属などを依頼することができます。
子育て中でも働きやすい職場への転職
ですが、上記のような制度はあっても実際には現状の日本の会社では・・・というのが本音です。
定められた権利よりも慣習的な面が強い場合には、精神的体力的に職務を続けていきにくいもの。給料が下がるなど多少の条件では目をつぶっても、精神的に快適に働ける職場へ転職したほうが女性が成功する例は多いといえます。
通勤時間がかかる職場も考えもの。自宅近くの職場に転職することで、仕事も中途半端なのにお迎え時間もギリギリ、子どもの急病に素早く対応できないといったジレンマが大幅に解消されます。
引っ越しをする~「自宅」「職場」「保育園」は近いほど良い
転職は自分や自宅を中心に考えた方法ですが、引っ越しは職場や仕事を中心に考えて、仕事はそのままに通勤時間を時短させるために、家を職場近くにするというものです。この場合も、ギリギリまで仕事ができて、お迎えにも時間的な余裕が生まれます。
また「転職」「引っ越し」いずれの場合も、「職場」「保育園」「自宅」の3拠点を近くに設定することで、子どもの急病などに対して、お迎え面だけでなく、自宅近くのいつもの病院にかけこむことができるという最大のメリットが生まれます。
お迎え遅刻が連日になるのなら、延長保育が長い・お迎え時間が遅い園を探す
初めからお迎え時間に間に合わないことが前提であるならば、認可保育園でも数は少ないですが22時まで預かる園や認可外保育園にするなど、親のお迎え時間にあった園選びが重要になります。
保育園お迎え・あるある!これってどうしてQ&A!
保育園生活が始まってから、多くのママたちが直面した3つの「これってどうして?」についてみていきます。
おむかえに行くと、私(ママ)の顔を見て泣く!これってどうして?
Q.お迎えのたびに泣かれるのは何故…
生後1歳1ヶ月の息子です。ようやく保育園にも慣れてきて、私がお迎えに行ってこっそり様子をみている限りは笑顔で先生といるのですが、私の顔をみるなり大泣きすることに!先生といる方が楽しくて、私のことが嫌なのでしょうか?
そんなことは絶対にありません!たとえ1歳の赤ちゃんでも多くの状況を理解し、彼らなりに保育園という小さな社会でたくさんがんばっているのです。ママの顔をみた途端、緊張の糸が切れてしまい思わず涙があふれてしまったと解釈するのが正解です。いっぱい抱きしめて褒めてあげましょう。
保育園から帰りたくないと泣く!お迎えに来ない方がよかったですか!?
Q.お迎えに行く度の「帰りたくない」
3歳8ヶ月の女の子です。娘は保育園でもお姉さんの方になり張りきって通っています。昔はちょっと遅くなるだけでも「ママー」と泣いていたのに、最近は「まだ遊んでいたかったのに~!」と号泣!お迎え来ない方がよかったですか!?と嫌味のひとつも言いたくなります。
子どもは「今」だけを生きています。午前中にママを思い出して切なくなっていたとしても、ママがお迎えにきたその瞬間の目の前の楽しさが優先してしまいます。また子どもの性格によっては思わずあふれ出た涙を強がってみせたくてそんな発言をしてしまう子もいいます。
どの場合も、ママは絶対に来てくれるという信頼感や安心感があるからこその文句です。ママの今までの努力の証ですね。子どもが首を長くしてママを待っていることに全く変わりはありません。暖かく見守ってあげましょう。
買い物してからの保育園のお迎えってNGなの?
Q.買い物後のお迎えで嫌な顔をされた
先日、買い物をしてからお迎えにいったら「買い物ですか?」とちょっと不快な感じで聞かれました。確かに19時の定時お迎えギリギリで、娘は最後から2番目でした。時間内だし、こっちはお金も払っているし、なんかそういう態度にモヤモヤしています。
保育園の原則は就労時間+通勤時間なので、買い物時間をはさむのは基本的にはNGです。
ただ、最近では育児に煮詰まったママの相談窓口という役割も担っていることから、ママの大変さへの理解度も深まり、夕飯用の急な買い物程度なら暗黙の了解で認めている保育園も少なくありません。
その一方で、買い物をして両手に買い物袋をかかえてお迎え時間に平気で遅れてくるママや買い物に夢中で子どもの急病にも連絡が取れないママ、遊びも兼ねた遠出の買い物で子どもがケガをしたのに帰ってこられず先生が病院へ連れて行ったという事例もあり、保育園の先生方もナーバスになっているのも現状で保育園によっては厳しく禁止しているところもあります。
また、子どもは帰る時間が近づくとソワソワしたり、ママがお迎えにくる時間を競っている子どもたちもたくさんいます。それを近くで見ている人間としては、買い物よりも大事なものがあるでしょうと言いたくなる気持ちもあるでしょう。
認可保育園の場合は、保育者が保育料を支払っているとはいっても、実際には園児一人にかかる費用の数万~30万円は税金でまかなわれています。そういった面から「保育料を払っているからいいでしょう」という考え方は、保育園とのトラブルのもとになってしまいます。
買い物をしてからのお迎えは、たまのリフレッシュの時くらいにして、子どもや保育園の先生を刺激しないよう買い物袋は見えないようにしておくこと、いつも以上に早めにお迎えに行くなどの配慮をすることでトラブルは十分に回避できるはず。
普段のお買い物なら週末にまとめ買いをしたり、ネットスーパーを活用するなど買い物をしなくても済むようにしておくと家事の時短にもつながりますよ!
保育園のお迎えはひとりで頑張り過ぎないのがコツ!
保育園のお迎えは、ママが一人でがんばろうとしても仕事や心身、そして一番に子どもに無理がきてしまいます。実際に保育園に通わせみるとわかりますが、ママ以外に、パパがお迎えに来ている子は保育園では珍しくなく、共働きが多い保育園ではごく当たり前のことです。
祖父母やファミサポの力を借りたり、ときに夫婦で引っ越しを考えるなどみんなの力を集めて何よりも子どものためになるように最善策を見つけて頑張ってほしいと思います。