ダブルケアの問題点&対処法
ダブルケアは大変!育児と介護を上手く両立させるには?
ダブルケアをしている方のために、ダブルケアの問題点と対処法をご紹介します。育児と介護を両立させることは、体力面・精神面への負担が非常に大きいです。家族などに、早めに相談することが大切です。
ダブルケアの問題点と対処法!ダブルケアの子供への影響は?
ダブルケアという言葉をニュース番組や新聞などで目にする機会が増えてきました。高齢化社会といわれる我が国では、ダブルケアは避けて通ることができない問題になるでしょう。現在まさにダブルケアに直面している方や今後ダブルケアをすることになることが予想される方のために、ダブルケアの現状・問題点・支援策などについて詳しくご説明していきます。また、ダブルケアを上手く乗り切る対処法についてもご紹介しているので、参考にしてください。
ダブルケアとは?
ダブルケアとは、育児と親などの介護を同時に行うことです。親と同居するケースもありますし、親の近くに住んで通いながら親の世話をするケースもあります。現在の子育て世代は、一人っ子や二人兄弟など祖父母世代に比べて兄弟が少ない人が多くなっています。
そのため、夫婦両方の親の介護を同時に行う人もいますし、時期はずれているものの長期にわたって介護が続くという人もいます。また、最近は共働きの家庭が増えたため、育児・介護・仕事を同時に行うトリプルケアをしている人も増えています。
「ダブルケア」は、横浜国立大学・相馬直子准教授とブリストル大学(イギリス)・山下順子准教授が進める共同研究の中で誕生した言葉です。
ダブルケアの支援策を利用しよう
ダブルケアを経験した人の80%以上は、公的な子育てや介護支援サービスが不十分だと考えています。今度、国や自治体で子育てや介護への支援の拡充が急がれます。ダブルケアをしている人は、国や自治体の支援策の情報をできるだけ早く入手するようにして、ご自身の負担を軽くしていけるとよいでしょう。
国の支援
育児・介護休業法が改正され、平成29年1月1日に施行されました。今回の育児・介護休業法の改正により、育児や介護に従事している人及びダブルケアをしている人が、より介護や育児休暇を柔軟に取得できるたり、労働時間を短縮できたりすることができるようになっています。主な改正点は以下の通りです。
1.介護休業の分割取得が可能になりました
介護者1人につき93日まで原則1回限り取得可能だった介護休業が、最大3回まで分割して取得することができるようになりました。
2.介護休暇の取得単位が短縮されました
介護休暇の取得単位が、1日から半日へと短縮されました。
3.介護による労働時間の短縮措置が拡大されました
介護のための労働時間の短縮措置の利用が、介護休業の取得と合わせて通算93日が上限でしたが、今回の改正により、介護休業とは別に利用開始から3年間で2回以上利用可能となりました。
4.残業が免除されます
介護者1人につき介護終了まで、残業が免除されることになりました。
5.介護休業給付金が引き上げられました
介護休業給付金が、休業前の賃金の40%から67%へと引き上げられました。
自治体の支援
自治体でもダブルケアの支援に着手していることころがあります。ダブルケアに悩んでいる人は、お住まいの自治体に問い合わせてはいかがでしょう。
横浜市では、NPO法人主催の「ダブルケアサポーター」養成講座に市の職員の受講を促したりています。市職員のダブルケア現状の理解を深めることで、相談を受けたときにより充実した回答ができるようにしています。
堺市では、平成28年10月に市内の区役所のダブルケア専用の相談窓口を設けました。これまで、子育て・介護は別の窓口で相談を受け付けていましたが、窓口を一本化することでダブルケアをする人の相談に一度に乗ることができるようになりました。
企業の支援
企業ができるダブルケアの支援としては、ダブルケアをしている人が介護や育児による休暇や休業を取得しやすくすることや、在宅勤務など柔軟な働き方ができるようにすることです。ダブルケアをする人への人事や転勤への配慮も大切になります。
最近は、在宅勤務ができる人の範囲を拡大する企業もでてきました。ダブルケアをする人が、安心して仕事を続けられる支援が必要です。育児と介護と仕事で大変な人は、勤めている会社にどんな支援策があるのか聞いてみてください。
ダブルケアを乗り切る対処法を知っておこう
ダブルケアは、一度始まるといつ終わるか判りません。ダブルケアをしている人は、体力や精神面の限界が来ないように、上手に乗り切りたいものです。
1.家族のサポート
ダブルケアを経験した人が一番頼りになったと言っているのが、家族特に配偶者のサポートです。家族のサポートを得られるか否かでは、ダブルケアの大変さが随分と変わります。家族・夫婦でよく相談して、一人の人に負担が集中することがないようにしていくことが必要です。
2.公的サポートを利用
公的サポートを利用して、介護や子育ての負担を少しでも軽くしていきましょう。介護による公的サポートだけでなく、未就園児を育てている人は、保育園の一時保育制度を利用することで、子供から離れて自分のことを済ませる時間を確保することができます。
3.育児・介護休暇を活用
育児・介護休業法にさだめられた休暇や休業は、労働者の権利です。活用できるものは、活用して、仕事を辞めずにダブるケアを続けることができるのが理想でしょう。
4.早めに手助けを求める
ダブルケアをしていることで、体力面や精神面で不安を感じることがあれば、早めに家族や身近な人に相談して手助けを求めましょう。最近では、自治体でもダブルケアの相談を受け付けているところがあります。早めに助けを求めることで、事態がよい方向に向かう可能性が高くなるでしょう。
ダブルケアが子供に与える影響
親がダブルケアをしていることが、子供に様々な影響を及ぼすことがあります。子供への影響は、お子さんの年齢や性格によっても異なるでしょうが、子供の様子にいつもと違うところが見られたら、早めに対応してあげましょう。
子供にストレスが現れる
介護される側の方の状態はそれぞれです。中には、介護者に暴言を吐くなど強く当たってしまう人もいます。子供によっては、今まで聞いたことのないような暴言を聞くと、大きなショックを受けてしまう場合があります。
小さな子供の場合、赤ちゃん返りがあるかも知れません。自分の気持ちを上手く言葉で表現できないため、夜泣きが始まる・指しゃぶりを再開する・おねしょをする・髪の毛をかきむしるようになるなどのストレスが見られるようになる可能性があります。
子供と過ごす時間が減る
介護と育児を両立させようと思うと、自然と子供と過ごす時間が減ってしまいます。子供も、親との時間が減ることに対して寂しい気持ちや不安な気持ちを抱えているでしょうが、親自身も子供と十分に触れ合いないことに対して自責の念を感じる人がいます。ダブルケアは、親子共に寂しい思いを抱える可能性があります。
子供の怪我
家の中で介護をしている(入浴・着替え・食事など)をしている時に、子供が怪我をしてしまうこともあります。外では子供から目を離さないお母さんでも、家の中ではついつい目を離してしまいがちです。特に、介護をしている方なら、目を離さざるを得ないこともあるでしょう。
介護で子供のそばにいられない時間帯が多い方は、家の中に子供の怪我のもとになるようなものは極力置かないように気をつけておきましょう。
ダブルケアの現状
育児と介護を重ねて行うダブルケアが注目されるようになり、内閣府男女共同参画局がダブルケアの現状について調査を行いました。
ダブルケアの人口推移
平成27年度に実施された内閣府男女共同参画局の調査結果をご紹介します。
ダブルケアをする人の人口(推計)
- 男性・・・85,000人
- 女性・・・168,000人
- 合計・・・253,000人
ダブルケアを行っている人を性別で分けると、女性が男性の約2倍という結果になりました。また、年齢でみると30代後半~40代前半の方が多くなっています。ダブルケアをする人は、今後増えていくことが予想されます。ダブルケアが増える要因が、現在の日本には揃っているからです。
ダブルケアが社会問題化した理由
- 共働き世帯の増加
今までは、男性が外で働き女性が育児と家事を行う家庭が多かったので、ダブルケアとなった場合にも女性が介護も担っていました。ただ、近年は、子育てしながら外で仕事をする女性が増えてきており、国としても女性の社会進出を奨励しています。そのため、ダブルケアとなった場合、女性が一人で担うのには限界があります。
- 晩婚化・出産年齢の高齢化
女性の社会進出などに伴い、結婚する年齢が昔と比べて高くなっています。そのため、女性が子供を出産する年齢も高くなっており、小さい子供の育児と親の介護を同時に行う人が増えています。中には乳児を育てながら、親の介護をするという方もいます。
ダブルケアの問題点
ダブルケアが大きな社会問題となっている背景には、ダブルケアが抱える様々な問題点があります。ダブルケアの問題点について、詳しく見ていきましょう。
ダブルケアは突然やってくる
子供は、約10ヶ月という妊娠期間を経て誕生するので、準備をして子供を迎えることができます。一方、親や親族の介護は、突然やってくることがあります。最近は、健康志向が高まり高齢になっても元気で生活している方がいる一方で、若くして病に倒れる方もいますので、親の年齢にかかわらずこころの準備だけはしておいた方がよいでしょう。
ダブルケアのサポート体制の不備
もちろん今までもダブルケアをしている人は沢山いましたが、専業主婦の方が多かったせいか、問題が大きくクローズアップされることがありませんでした。しかし、近年は、仕事をしながら育児と介護の両方を同時に行うダブルケアをする人が増えたにも関わらず、ダブルケアに対して国や企業のサポート体制が整っていないため、ダブルケアのために仕事を辞めざるをえない人(特に女性)が多くなっています。
自治体の相談窓口が縦割り
殆どの自治体で、育児の相談窓口と介護の相談窓口は分かれています。役所に相談に行っても、両方の窓口で同じ話をしなければならない場合もあります。ダブルケアをしている人は、みんな時間がありません。貴重な時間を費やして役所に相談に行っても、ダブルケアについての窓口がなければ満足いく相談ができないことが多いでしょう。
ダブルケアの負担は女性に集中
内閣府男女共同参画局が実施したダブルケアの実態調査の結果からわかるように、ダブルケアをしている人は圧倒的に女性が多くなっています。ダブルケアをするようになったことで、仕事を辞めざるを得なかった人や労働時間を減らした人も女性が多数を占めています。労働時間を減らした女性の中では、正社員よりパートタイムなど非正規社員の人の方割合が高くなっています。
ダブルケアをしているのは、40歳前後の女性が多くなっています。40歳前後というと子供の手が少し離れてパートタイムなど仕事を再開することが多い年代ですが、ダブルケアを始めると就業する機会を逃してしまったり、せっかく見つけた仕事を辞めざるをえなかったりすることがあります。
精神面の不安
ダブルケアをしている人の中には、昼間自宅で子供の世話と介護をしながら孤独な日々を過ごしているという人も少なくありません。育児と介護を同時に行っていたら、精神的に追い詰められても不思議ではありません。
介護する方の病状にもよりますが、中には自分の体が思うように動かないことで介護者に強く当たるというケースもあります。介護者は、暴言に耐えながら介護を続けていて、ストレスが溜まり精神的にまいってしまう例があるのです。
体力面の不安
子供の世話にはもちろん体力を使いますが、大人の世話をすることも、体力を消耗します。特に、女性が自分より体の大きな男性を介護することは非常に大変です。
介護者も、年々体力が落ちていきます。40代・50代でも自由な時間がある方なら、体力作りをしたり体によい食事をしたりするなどして体力を維持する余裕があるでしょうが、1日中子育て・介護・仕事に追われている人は、自分の体に気を遣う余裕がないため、疲れ果ててしまうのです。
経済的な不安
子供がいると教育費などお金がかかります。教育費や食費などは、子供の年齢が高くなるにつれて、上昇していきます。ただでさえお金がかかる子育て世帯に、介護が加わることで、家計が逼迫することも珍しくありません。
親に十分な蓄えや保険など備えがある場合は良いのでしょうが、親の生活費や入院費などをすべて面倒見なければならないとなると大変です。しかも、ダブルケアをするために、仕事を辞めたり、就労時間を減らしたりする場合は、経済的な不安はさらに募るでしょう。
ダブルケアは抱えすぎないで!
ダブルケアは、精神面・体力面の負担が大きいものです。ダブルケアを知っている人は、一人で抱えることなく家族などに早めに相談しましょう。最近では、インターネットを通じてダブルケア従事者が情報を共有化する動きが広まってきています。ダブルケアは、時に子供にも影響を与えることを忘れず、頑張り過ぎないようにしてください。