PTAが抱える問題5つ・あなたは名簿流出や強制加入を許容できますか?
少し前までは、PTAと言えば学校や保護者には欠かせないもので、それが本当に必要かどうかなどについては考えることもありませんでした。ですが、近年、PTAに関わりたくないという保護者や教師、PTAから実害を受けた保護者も表れ、現行のPTAは本当に必要な組織なのか、子どものためになっていないPTA組織は抜本的に見直す必要があるのではと議論されるようになってきました。
PTAの抱える問題としてとりだたされるようになったのは主に、『慣習が作っている違法性』。なかでも任意加入団体であるにもかかわらず断りにくい強制加入体制を取っていること、強制加入を幇助する学校側の名簿流出に代表されるですが、まずは、どこがなぜいけないのかPTA問題をしっかりと認識していきましょう。
強制加入の問題
- PTAを退会したい!強制加入ゴリ押し違法PTAの退会方法
PTAを退会する方法、最初から入らない方法を解説。任意加盟団体であるにもかかわらず強制加入を迫る違法PTAに反発する保護者は増えています。当たり前のように役員抜擢や回避徴収を行うPTAから退会したい!
小学校や中学校の9年間は義務教育です。人間関係のトラブルなど子供自身に著しい精神的な負担が生じるケースを除き、子どもを行かせるのは、日本国民の義務でもあります。そのため親の貧困、子どもの重大な病気などの『学校にいけない理由』に対しては、行政の保護や病院併設の養護学校へ転入などの措置がありますね。
ですが、子供が通う学校のPTAへの保護者参加は義務ではありません。つまり、ほとんどの小学校・中学校ではPTAが組織されていますが、本来はPTAは任意加盟団体でしかなく、強制されるいわれは微塵もない、ということ。
ですが、全世帯に強制加入、強制参加をさせているPTA、学校は少なくありません。新学期が始まると懇談会等の親が集まる機会にPTAの役員決めをし、同意したわけでない活動に会費を支払う…という流れに違和感を感じながらも、しぶしぶ従っている人も多いのです。
PTAが義務でも強制でもないなら、本来なら「PTAに入りますか?」と意思確認をしてから、役員を決めたりするのが道理。「全員参加ですから」を理由に強制的に参加をさせられる…ここに大きな問題だ感じる人は少なくありません。
個人情報の問題
個人情報保護法施工以前の慣習のまま学校より児童・生徒の名簿(個人情報)をうけとり、
2005年に全面施行された「個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)」によって、個人情報を本人の意思確認なしには利用することは禁じられています。
昔は当たり前だった住所電話番号まで記載されたクラス名簿も廃止となり、年賀状のやり取りなどには多少の不便を感じるところですが、個人情報保護法施工から10年が過ぎ、現在はどこの企業、どこの市町村でも個人特定にいたる一切の情報は慎重に慎重を期して厳重に取り扱っています。そう、違法PTAを除いては…。
学校と違法PTAは法制定前も法制定後も変わらず、クラスの名簿を各保護者の同意なしに共有し、ときには勝手にデータベース化したり、印刷して他のメンバーに渡したり、悪びれることなく住所や電話番号などの個人情報も勝手に公開したり…などといった不届きな振る舞いがまかり通っています。
他にも、PTAの役員を断った人に「なぜ引き受けられないのですか?どのようなご家庭の事情があるのですか?」と問い詰める…など不必要に個人情報を聞き出す言動も、PTAでは個人情報保護法に抵触します。
会費強制徴収の問題
PTA会費の支払いもPTAが参加と同様強制には行なえるものではありませんが、これについてもまる月○日までにいくら納入…と前世帯に学校を通じて封筒を渡されたり、学校給食費と一緒に徴収されたり、強制徴収ともいえる費用の徴収が当たり前のように行われています。
特に、使途を言わないで費用だけ徴収するのもおかしな話。学校で徴収するその他のお金についても、遠足のバス代を徴収するなら『バス代』学校で購入するお裁縫キットなどの代金なら『お裁縫キット代』と使途が明らかであるはず。使途が不明な費用であるにもかかわらず強制的に募る…なぜ、PTAだけそのような意識で通用しているのでしょうか?おかしな話ですね。
会費使途不透明の問題
PTA役員がPTAの仕事を行うと言っても、会員から集めた会費をどのように使用するかはPTA会員全てに伝えて、適切かどうかや同意を問う必要があります。
いくら慣例だろうとPTA会費で学校の教員や関係者に謝礼を渡したり、会食費として利用したりすることはもちろん、会員の意見を聞かずに学校の備品を購入したり、特定の役員だけが利益を被ると考えられるもの(自家用車でPTA会合に出席する人のために校内駐車場を整備する等)に使用することはあってはならないことですが、これらもまかり通ってしまっている問題なのです。
実際にあったPTA会費流用事例
意識が低いために起こったPTA会費の流用事例には以下のようなものまであり、これが企業だったら贈収賄、横領問題となる事例ばかりということに驚かされます。
- 都道府県の教育委員長へのお中元・お歳暮
- 県会議員へ商品券のプレゼント
- 学校内のクラブ活動の遠征費用
- 教育委員会への宴会や手土産代を含む接待費用
- PTA役員の個人的な借金返済費
- 学校教員の住宅ローン返済費
- 学校教員の出張費
- PTA役員の個人的な生活費への流用
- 市会議員への飲食や贈り物代
- 学校教員の名刺印刷代
- 非常勤教員への謝礼
- 健診時の校医への謝礼や昼食代
- 修学旅行の下見に行く学校教員の旅行費
一般の会社では、このような不透明会計は大問題!ですが、公的施設である学校を舞台にPTAでは不透明な会計が通用してしまっているのです。
また、会計として年に一度事後報告するPTA、使途を敢えて不透明にするPTAもあります。
何に使っているか分からないのに、または用途に異議を唱えることもできないのに強制的に会費を徴収されるなら問題です。会費を支払う保護者が会計の開示を求めたり、用途に異議を唱えられる体制は当然と言えるでしょう。
非効率かつ無駄な作業の多さも問題に
積極的にPTA活動を行いたいと言う保護者もいますが、仕方なく引き受ける保護者も少なくありません。「そんなに大した仕事はないから」と言われてやむなく引き受けてみると、以外に作業量は多く家にまで持ち帰って仕事をすることも。しかも、非効率であるにもかかわらず、「今までそうしてきたから」と慣習に沿わなければいけない作業も少なくありません。
どんなに仕事量が多くてもPTAは非営利団体ですので、役員や係を全うしたからと言って賃金や労働の対価を求めることができません。
会議が長引いたりして、子どものお稽古ごとの送り迎えができなくなったり、子どもと触れ合う時間がなくなってしまったりなど子育てや生活、仕事がおろそかになってまで子どもの学校のPTA活動を行うのは本末転倒なのではと考える役員も少なくないのです。
誰かが犠牲にならなければ成り立たない組織であるなら、その存在意義を再確認する必要があるといえます。PTAが廃止となった学校もありますが、それによるデメリットは子育てや生活、仕事がおろそかにしてまで回避するものなのでしょうか?
PTAは基本任意加入です!問題を放置して生まれる『問題』
弁護士が弁護士として活動するには、弁護士会に加入しなければならないのは弁護士法で定められますが、PTAは任意加入の団体です。小中学校に通う児童生徒の親は世帯を代表して全員PTAに強制加入しなければならないPTA法なんてありません。強制的に加入させられたとしても、異議を唱えることも脱会を申し立てることもできるのです。
他のPTA会員から「PTA参加は親の責任よ」と話を聞いたとしても、お住まいの教育委員会に問い合わせると、「PTAは任意加入の団体ですので、強制的に入らされることはありません」と答えてもらえます。
基本的には、学校、PTAのオブザーバーの位置に市区町村の教育委員会がつくことが多いですので、学校で入会等を強要されるときは、教育委員会の力を借りて反論するのも良い方法と言えるでしょう。
- PTA役員トラブルが怖い…恐怖のPTA&役員選出攻略術
PTA役員に選出されそうでトラブルが怖い・すでにトラブルに巻き込まれて困っている方のために、PTA役員決めトラブルの実態や現状のPTA活動の問題点、PTA活動のトラブルを回避する方法を考えていきます。
PTAに入らないと子どもがかわいそう?
「PTA活動に賛同できないから入会したくない(または退会したい)けれど、子どもが学校に居づらくなるのではと思うと退会を躊躇してしまう・・・」と感じ、いやいやPTA係を請け負う人は少なくありません。
『お互い様』『子どものため』と子供を盾にするような脅しをもってPTA参加の正当性(個人の価値観)を押し付け、異論を許さない考え方が横行するのはなぜなのでしょう?
PTAは保護者と親の組織!子どもには無関係
PTAは『Parent-Teacher Association(保護者と親による会)』の略ですから、子どもとは無関係な組織です。つまり、PTA活動は、学校に通うすべての子どもたちの福利のために保護者と教師が自発的に行う活動であって、PTA会員の子どもたちの福利のために行われる活動ではないのです。
ですから、PTA活動に賛同できないことを理由に退会するというのはまっとうであり、それにより自分の子どもに不利益が生じるような組織に問題があります。それを理由に不利益が生じたのなら、教育委員会や法テラス等の力を借りましょう。
会費を支払わない場合、卒業式や入学式の記念品はどうなる?
卒業式や入学式などでは、PTAから紅白まんじゅうや学用品が各児童に贈呈されることがありますよね。これらの費用はPTA会費から出されますが、もちろん、PTA会費は「学校に通うすべての子どもたち」のために使われるものですので、PTA会費を支払っていない保護者の子どもであっても紅白まんじゅうや学用品を受け取れない、ということはありません。
あくまでも「学校に通うすべての子どもたち」の福利を願う保護者による団体が『PTA』なのですから、理念的には、「あの親はPTA会費を支払っていないのだから、子どもがおまんじゅうもらうのは変よね」とか、「みんなの会費でおまんじゅうもらって、悲しくないのかな?」等の言葉が出る認識に誤りがあるといえます。
PTAに入らないと陰口を言われる?
PTA活動が盛んな学校においては、PTAに入らないという選択肢が用意されておらず、「PTAには入りません」「PTAから退会します」というだけで、まるで異端者のような扱いを受けたり陰口を言われたり村八分状態になったりすることも。
情報漏えいは犯罪!法的解決が必要になることも
ですが、もしクラスの懇談会等の他の保護者が集まっている中で、堂々と「PTAには入りません」「PTAから退会します」と宣言をしたなら、あなたのことを疎ましく思う人が出てきたり、ちょっと変わった人だとして避けられたりすることもあるかもしれません。
ですが、PTA役員に直接、「PTAには入りません」「PTAから退会します」と告げたにもかかわらず、すべてのPTA会員が、あなたがPTAに入っていないことを知ってしまったなら、そのPTA役員は個人情報を不用意に漏洩し個人に不利益をもたらしたこととなります。
このような場合は、あなたが主導して法的措置を追究することも可能でしょう。もちろん事件が大きくならないように、最初から穏便に物事が進むように最大限の努力をすることが必要ですが、そのような認識の組織なら、「何の力もない個人」と足元を見られかねませんので、穏便に済ませるために予めバックを固めておくと良いでしょう。
ちょっとだけだけどPTAにも良い部分が!
多くのPTA問題が問だたされますが、良い部分があることも事実です。PTAがあるからこそ実現できる事柄についても探っていきましょう。
学校に行く機会が増える
PTAの役員になると、会議のためや行事準備等のために学校に行く機会が増えます。学校に行く機会が増えると、参観日などの特別な機会ではない学校での子どもの自然な様子を見る機会も増えます。
小学生も高学年になると、学校での出来事などをあまり親に話さなくなってくるものですが、学校に行く機会が多いなら、子どもが話さなくても学校の様子を伺えますよね。
また、学校に行く機会が増えると言うことは、学校がより身近になり良い点や問題点を察知する機会も増えると言うことでもあります。ぐらつく手すりや危険な段差を未然に発見したりすることもできるかもしれません。子どもの学校での生活が気になる方には、PTA活動は最適な活動とも言えますね。
他の保護者と仲良くなれる
学校行事や参観日などの限られた時間では、なかなか保護者同士で話すことができませんよね。ですが、PTA活動は基本的には1年単位での仕事となりますので、他の保護者と深く関わって仲良くなる機会は多いといえます。
保護者同士が仲良くなると、学校や子どもに関する情報を共有することができるため、子どもと学校についてさらに深く知りたい方には、メリットとなります。また、仲の良いママ友ができるなら、PTA役員が終わったあとも交流できたり楽しい時間が増えるかも知れません。親友と呼べる人がPTA活動を通じて見つかることもあるかもしれませんね。
教師とも密に交流できる
PTAは保護者と教師の会ですのでPTA参加で学校の教員たちとも密に交流できます。PTAの会議以外の時間に、学校に対する疑問点や改善点を直接ぶつけたり、子どもの様子も気軽に尋ねられるかも。
- 担任の先生との良い関係の築き方、相性が悪いときの対策
担任の先生の存在は子どもの学校での生活を大きく変える要素となります。小学校ともなると幼稚園保育園ほど担任との接触頻度も多くないため、限られた機会で担任の先生と良い関係を築く方法やマナーが必要です。
地域での活動幅が広がる
PTA活動を通じて、普段は関わる機会のない地域の人々と関わる機会も増えるでしょう。
PTA主催で地域活動や行事を開催することもあるので、普段は地域の行事に参加しない人もPTAの役員ともなれば参加せざるを得ません。ですが、地域の行事に参加すると、地域の人と仲良くなったり、近所に住んでいるのに話したことがない人(例えば学区内の商店街や繁華街の人々と話し合ったり、防犯や事故防止のために警察署や交番の警官と話し合いしたりなど)とも交流の機会があることも。
地域で知り合いが増えると言うことは、子どもが健全に育っていくためには欠かせない要素でもあります。子どもを守るために、地域での知り合い・顔見知りは多いに越したことはありません。
問題解決に直接参加できる
家の近くの交差点の見通しが悪く、「いつか大きな事故が起きるのでは・・・」と不安に思っていたとします。でも、なかなか警察署や市区町村の役場に出向いて、問題を陳情しにくい部分ですよね。
この場合も、PTA活動を通じて、地域の子どもたちの安全を守るために不可欠なこととして、問題を提起するハードルは下がるでしょう。また、普段は気にならなかった問題や、よりよい改善策が見えてくることもあります。
他の役員から賛同を得、嘆願書として市区町村の役場等に提出するなど地域の問題解決に積極的に関わりたいならPTA入ることで、個人ではなく団体の意見として問題解決を実施することができるのです。
PTA活動を公平な目で見て考えよう
昨今、PTA組織にはびこる大きな問題からPTAの存在意義やその活動のマイナスの面ばかり強調される風潮にあります。確かにPTA問題は法を逸しており、認識を改めるべき要素は大きいと言えるでしょう。「学校に通う全ての子どもたちの福利」を目指すという本来の意義を心に留めながらも、PTAならではのプラスの面も含めて、PTA組織の在り方やその活動を見直していけると良いですよね。