子供が感情のコントロールができない理由 まず知っておきたいこと
スーパーで「買って!」と泣き叫んで床に寝転がる、ささいなことで兄弟げんかが大爆発する、宿題が思うように進まずに鉛筆を投げる。子どものこうした姿に、「どうしてうちの子はこんなに怒りっぽいんだろう」と戸惑い、対応に疲れてしまう保護者は少なくありません。
結論からお伝えすると、感情のコントロールは生まれつき備わっている能力ではなく、成長の中で少しずつ育っていく力です。今うまくできないのは、その子がわがままだからでも、親の育て方が悪いからでもありません。子どもが怒りの感情とつき合えるようになるには、怒りの原因を知ることと、コントロールの方法を一緒に練習していくことが助けになります。
- 怒りの原因を知る
- 感情のコントロール方法を一緒に身につける
とはいえ、2歳ごろから始まるイヤイヤ期から小学校低学年くらいまでは、自分で気持ちをおさめるのがまだ難しい時期です。程度の差はあっても、子どもが怒りっぽいのは珍しいことではありません。対応を工夫しつつ、親が神経質になりすぎず、おおらかに構える姿勢も大切にしたいところです。
なぜ子どもは感情をコントロールできないのか 脳の発達から見る
発達の観点から見ると、感情のブレーキ役を担うのは脳の「前頭前野(おでこのあたりにある、考えたり我慢したりする部分)」です。この部分は成長とともにゆっくり育ち、完全に成熟するまでには時間がかかります。一方で、感情を生み出す「扁桃体(へんとうたい)」は早くから働くため、子どもはアクセルだけが強く踏まれてブレーキが追いつかない状態になりやすいのです。
たとえば、積み木が崩れただけで火がついたように泣き出す2歳児を見て、「そんなことで」と感じることがあるかもしれません。けれど本人にとっては、わき上がった大きな感情をどう扱えばいいか分からず、ただあふれさせているだけ、ということがよくあります。怒りを抑える力がまだ育ち切っていないからこそ、激しい反応として表に出やすいのです。
この仕組みを知っておくと、「怒らせないようにする」よりも「あふれた気持ちを一緒におさめる手伝いをする」という関わりに切り替えやすくなります。まずは子どもが爆発したとき、頭ごなしに止めるのではなく、落ち着くまでそばで待つことを今日から意識してみてください。
怒りのメカニズムを知って感情のコントロールをしよう

オーストリア出身の心理学者アドラーの考え方では、怒りは「二次感情」と呼ばれます。出来事に対して直接怒りが生まれるのではなく、「嫌だ」「つらい」「不満」「不安」「悲しい」といった一次感情が先にあり、それがうまく処理されないときに、怒りとして表に出てくるという考え方です。
たとえば、お友達におもちゃを取られた子が「もう遊ばない!」と怒鳴ったとします。その怒りの下には、「使いたかったのに使えなくて悲しい」「自分の気持ちを分かってもらえなくて不安」という一次感情が隠れています。怒りは、いわば氷山の一角。水面下にある本当の気持ちに目を向けることが、感情と向き合う第一歩になります。
子育ての現場では、怒っている子に「どうして怒るの!」と返すより、「使いたかったんだね、悲しかったね」と一次感情を言葉にして代弁すると、すっと落ち着くことがよくあります。怒りそのものを叱るのではなく、その奥にある気持ちを受け止めること。次にお子さんが怒り出したら、「本当はどんな気持ちなのかな」と一度立ち止まって考え、その気持ちを言葉にして返してみましょう。
感情のコントロールができない怒りっぽい子供の特徴5つ
生まれ持った気質によって、ストレスを感じやすい子もいます。常に強い緊張状態にあると、イライラしたり攻撃的になったりしやすくなります。ここでは、怒りっぽさにつながりやすい5つの特徴を紹介します。ただし、これらはその子の個性であり、優劣をつけるものではないという前提で読んでみてください。
1.感受性が強い

物事へのアンテナの感度が高く、身の回りの出来事や周りの人の感情を敏感に察知して、強く反応する繊細さを持っている子がいます。「お母さん、今日なんだか元気ないね」と、大人が隠しているつもりの気分まで言い当てて驚かされることもあります。
発達の観点から見ると、感受性の強い子は受け取る情報量が多いぶん、心が動かされる場面も多く、必然的に怒りやつらさを感じる頻度も高くなります。これは弱さではなく、豊かな感性の裏返しでもあります。本人を変えようとするより、刺激が多すぎてあふれそうなときに、静かな場所でクールダウンできる「逃げ場」を用意してあげるのが効果的です。
家では、にぎやかな場所で疲れたサインが出たら、別室で一人になれる時間をつくる、と決めておくとよいでしょう。
2.ネガティブ思考が強い
物事を実際より悪い方に受け取りやすい子、心配性の子、思い込みの強い子は、不安や劣等感にとらわれがちで、いつも気持ちに余裕のない状態になりやすいものです。「どうせできない」「みんなに嫌われている」といった思いが心にまとわりついていると、ささいなきっかけで気持ちが大きく崩れてしまいます。
こうした子には、できなかったことより「できたこと」に目を向ける声かけが支えになります。「最後まで頑張ったね」「自分から謝れたね」と、結果ではなく過程を具体的に認めることで、少しずつ自己肯定感(自分を大切に思える気持ち)が育ちます。寝る前に、その日できたことを一つだけ親子で振り返る習慣をつけてみてください。
3.好き嫌い・こだわりがはっきりしている
判断の基準が白か黒かに偏りやすく、「まあいいか」「そんなものか」と受け流すのが苦手な、生真面目な子がいます。あいまいな状態を許せず、きっちり白黒つけようとするため、周囲との摩擦も増え、ストレスを強く感じやすくなります。
「クラスのルールはこうなのに、なんでみんな守らないの!」と本気で憤る姿に、大人が戸惑うこともあるでしょう。発達の観点から見ると、こうした子はルールや正しさへの感覚が鋭い一方で、例外や変化への対応がまだ苦手な段階にあります。頭から否定せず、「あなたはきちんとしたいんだね」と気持ちを認めたうえで、「でも人によって考えは違うこともあるよ」と少しずつ幅を広げていく関わりが向いています。
4.コミュニケーションが苦手
2歳のイヤイヤ期の怒りの大きな原因は、自分の思いをうまく言葉にできず、伝わらないもどかしさから気持ちが爆発することにあります。これは子どもが必ず通る発達の過程です。成長とともに言葉の力が育てば、自然と落ち着いてくることがほとんどです。
ただ、年齢が上がっても言葉でのやりとりに苦手意識がある子は、2歳ごろのもどかしさが続いているような状態になりがちです。「自分の考えをうまく言えない」「分かってもらえない」「誤解されやすい」といったストレスを強く抱え、「なんで分かってくれないんだ!」という怒りを慢性的に感じていることがあります。
- 自分の考えや思いをうまく言葉にできない
- 言いたいことが相手に伝わらない
- 誤解されやすい
こうした子には、気持ちを言葉にする手助けが有効です。「うれしい」「くやしい」「さみしい」など感情を表す言葉を、日ごろの会話の中で具体的に添えてあげましょう。「今のはくやしかったね」と代弁を重ねるうちに、子どもは自分の気持ちを表す言葉を少しずつ覚えていきます。
5.思い込み・こだわりが特に強い
思い込みやこだわりが非常に強い場合、予定の変更や思い通りにいかない状況で強い不安を感じ、感情のコントロールが難しくなることがあります。いつもの通学路が工事で通れない、給食の順番が変わった、といった大人には小さなことが、本人にはパニックの引き金になる場合もあります。
こうした特性が複数重なり、家庭でも園や学校でも長く続いて生活に支障が出ているときは、その子に合った関わり方や支援を知ることで、本人も家族もぐっと楽になることがあります。これは「親の育て方の問題」でも「直すべき欠点」でもなく、その子の特性を理解する手がかりです。気になる場合は、後述の相談先を頼ってみてください。早めに理解と工夫が得られれば、子どもは安心して力を発揮しやすくなります。
怒りっぽさに影響する家庭・周囲の環境

生まれ持った気質は、育つ環境によって強く出ることも、やわらぐこともあります。どんな関わりの中で育つかによって、同じ気質の子でも表れ方が変わってくるのです。ここで大切なのは、これは保護者を責めるための話ではない、ということ。完璧な家庭などどこにもありません。気づいたところから少しずつ整えていけば十分です。
一般に、次のような環境では、子どもがストレスをためやすく、感情のコントロール法を身につけにくいといわれます。
- 身近な大人が感情的になりやすく、怒りの表現が激しい
- 子どもの前での夫婦げんかが頻繁にある
- 暴言や手が出る場面が日常的にある
- 子どもへの関心が薄い、または逆に過干渉になっている
もし思い当たることがあっても、自分を責める必要はありません。子どもは、親が完璧であることより、安心して気持ちを出せる場所があることを必要としています。けんかをしてしまった日は「さっきは大きな声を出してごめんね」と伝えるだけでも、子どもは安心します。ひとりで抱えきれないときは、後述の相談窓口を頼ることも、立派な対応の一つです。
「なんでこんなに怒りっぽいの」と親もイライラしてしまうとき
子どもの感情に向き合う親自身も、毎日となれば疲れますし、つい怒鳴り返してしまうこともあります。「また始まった」とため息が出る日があって当然です。子育ての現場では、「子どもを落ち着かせたいのに、自分のほうが先にカッとなってしまう」という声がとてもよく聞かれます。
心理面から見ると、親が感情的になると、子どもは「怒れば気持ちは伝わるんだ」と無意識に学んでしまうことがあります。とはいえ、親も人間ですから、いつも穏やかでいるのは無理な話です。大事なのは、完璧を目指すことではなく、「ママもちょっと落ち着くね」と一度その場を離れる姿を見せること。それ自体が、子どもにとって何よりの見本になります。次にカッとなりそうなときは、子どもの前で深呼吸を一つ、と決めておきましょう。親が自分の機嫌を立て直す姿そのものが、最高の教材です。
感情のコントロールができない年齢別の原因と対応

感情がコントロールできない原因は、年齢によって少しずつ違います。原因が変われば、親の関わり方も変わってきます。0歳から思春期まで、発達段階ごとの背景と対応を見ていきましょう。同じ「怒りっぽさ」でも、その意味は年齢で大きく異なります。
0〜1歳:泣くことで気持ちを伝える時期
言葉を持たない赤ちゃんにとって、泣くことは唯一のコミュニケーション手段です。お腹がすいた、眠い、不快、寂しいといった一次感情を、泣いて全身で表現します。これは怒りっぽさではなく、当たり前の発達の姿です。
この時期は、泣いたら抱っこする、声をかける、といった応答的な関わりが何より大切です。「お腹すいたね」「眠かったね」とこまめに応じてもらう体験を重ねることで、子どもは「自分の気持ちは受け止めてもらえる」という安心の土台、いわゆる愛着(特定の大人との間に築く安心の絆)を育てていきます。この土台が、のちの感情コントロールの基礎になります。泣き止ませることより、気持ちに応じることを意識してみてください。
2〜3歳:恐怖のイヤイヤ期
言葉やこころの発達が、やりたい気持ちの強さに追いつかないことが原因です。自分の考えや要求がうまく伝わらず、表現方法として怒りやかんしゃくを爆発させます。「自分でやりたい(自我の芽生え)」という大切な成長のあらわれでもあります。
「くつ、自分ではく!」と言い張り、うまくいかずに大泣き。手伝おうとすると「ちがう!」とさらにヒートアップ、という場面はこの時期の定番です。
イヤイヤ期の対応
親は子どもの気が済むまでじっくり向き合い、「自分ではきたかったんだね」と気持ちを代弁して落ち着かせることを心がけましょう。時間に余裕をもって、できたら一緒に喜ぶ関わりが効果的です。
4〜5歳:自己主張と社会性が育つ時期
言葉が達者になり、自分の要求をはっきり主張できるようになる一方で、まだ我慢する力や相手の気持ちをくむ力は育ちきっていません。「順番を守れずに怒る」「思い通りにならないと泣く」といった姿が出やすい時期です。ごっこ遊びやルールのある遊びを通して、少しずつ社会性が育っていきます。
この時期は、「負けて悔しかったね。でも順番は守ろうね」と、気持ちを受け止めたうえでルールを伝える関わりが向いています。勝ち負けのある遊びをあえてたくさん経験させ、負けたときの気持ちの切り替えを練習するのも効果的です。家庭で簡単なゲームを取り入れ、負けても気持ちを立て直せたらしっかり褒めてあげましょう。
6〜7歳:いよいよ小学生 就学期
就学直後にイライラしやすくなる場合、原因の多くはコンプレックスです。学校の集団生活では、勉強や運動などあらゆる場面で他の子と比べられ、優劣を意識するようになります。向上心やプライドの高い子ほど、思い通りにならない結果が続くと劣等感を抱え、ストレスをためていきます。
「○○くんより足が遅い」「字がうまく書けない」と、家に帰ってから八つ当たりのように荒れることもあります。
就学期の対応
環境が変わって不安定になっている子に寄り添い、話をしっかり聞くことが第一です。できていない部分より長所を具体的に認めて褒め、「あなたはあなたのままで大丈夫」という安心感と自信を与えましょう。
9〜10歳:コンプレックスが強まる「9歳の壁」
この時期は抽象的に考える力や、自分を客観的に見るメタ認知(自分の考えや状態を一歩引いて眺める力)が大きく伸びます。同時に、クラスでの自分の立ち位置をはっきり認識するようになり、理想と現実のギャップに強いコンプレックスやストレスを感じやすくなります。友達関係が最優先になり、親を疎ましく感じて、家の中でだけイライラをぶつけることも増えます。
9歳の壁の対応
この時期はあまり干渉せず、見守りに徹しましょう。子どもから話しかけてきたときや、自分の力では解決できなさそうなときに、さりげなくサポートする程度がちょうどよい距離感です。
思春期:自立に向けて揺れる時期
思春期に入ると、心身の急激な変化やホルモンバランスの影響もあり、自分でも理由の分からないいら立ちを抱えやすくなります。親から自立したい気持ちと、まだ甘えたい気持ちの間で揺れ、その不安定さが家庭でだけ強く出ることも珍しくありません。「うるさい」「ほっといて」と反発が増えるのも、健全な成長の一面です。
この時期に必要なのは、過度に踏み込まず、それでいて「困ったときはいつでも味方だよ」という姿勢を崩さないことです。安全基地としての家庭があると感じられれば、子どもは外で受けたストレスを家で立て直せます。問い詰めず、子どもが話したくなったときにいつでも聞ける雰囲気を保っておきましょう。
アンガーマネジメントで感情のコントロールをしよう

怒りの表現方法を間違えると、自分も相手も傷つけてしまいます。そこで役立つのが、怒りと上手につき合う方法=アンガーマネジメントです。家庭で親子一緒に取り組めるテクニックを紹介します。
アンガーマネジメントって何?
アンガーマネジメントは、自分や状況を一歩引いて客観的にとらえるメタ認知の力が育ち始める10歳前後の子であれば、大人と一緒に取り組めます。もっと小さい子でも、親が代わりに気持ちを言葉にしてあげる形で、その土台づくりはできます。考え方は次の二本柱で成り立っています。
- 怒りを感じにくい考え方を身につける
- 怒りを感じたときに、自分も周りも傷つけない上手な表現方法を身につける
大切なのは、怒り自体を悪者にしないことです。怒りは自然な感情であり、消す必要はありません。ためずに上手に外へ出す方法を、子どもと一緒に探していきましょう。
子供と一緒に取り組む感情コントロールの方法
怒りがわいたその瞬間に、どう逃がし、どう表現するか。アンガーマネジメントには、家庭でも実践しやすい方法がいくつもあります。代表的なものを紹介します。
1.怒りを6秒間やり過ごす
怒りの感情のピークは「6秒」ほどといわれます。カッとなった瞬間に衝動的に怒るのではなく、この6秒をやり過ごす方法を子どもと一緒に見つけておきましょう。おすすめは次のような方法です。
- ゆっくり深呼吸する
- 視線をいったんそらす
- 別の部屋に移動するなど、その場を離れる
- 水を一口飲む
- ベランダに出るなど、風にあたる
- お気に入りのぬいぐるみを抱く、本を開く
- 心の中で6まで数える
怒りの原因から物理的に距離を置き、気持ちを切り替える工夫です。子ども本人が「これはいい」と思える方法を、いくつか試して見つけておくとよいでしょう。落ち着いているときに「イライラしたらどれを使う?」と一緒に決めておくのがコツです。
2.怒りについて振り返りをする

大人なら日記やメモに残すのが有効ですが、子どもにはまだ難しいので、親子で一緒に振り返る時間をつくります。落ち着いてから、次のことをやさしく聞いてみましょう。
- 何が嫌だったか
- どうして嫌だと思ったのか
- 怒った直後と今とで、気持ちはどう違うか
- あのとき、どうすればもっとよかったと思うか
- 次に同じことがあったら、どうしたらいいと思うか
この作業を、責めずに根気よく繰り返すことで、子どものメタ認知力と対応力が育っていきます。
- 「ぼく(わたし)は、これは許せるけどこれは許せない」
- 「ぼく(わたし)は、次はこうしてみよう」
- 「こういうときは、こう考えればいいのか」
という具合に、自分の怒りの境界線を知り、対応のコツを少しずつ蓄えていけます。叱る時間にせず、あくまで一緒に作戦会議をする雰囲気で行うのがポイントです。
3.「I(アイ)メッセージ」を練習する
「Iメッセージ」とは、「わたし(=I)」を主語にして気持ちを伝える方法です。反対の「Youメッセージ」は相手を主語にするため、相手を責める言い方になりがちです。子どもには、YouではなくIで伝えるよう、分かりやすい言葉で教えておきましょう。お手伝いを頼んだのに、おもちゃを返してくれないときの伝え方を比べてみます。
- Iメッセージ→「ぼくは、お願いしたら、○○くんならちゃんとおもちゃを返してくれると思っていたよ」
- Youメッセージ→「なんで○○くんはおもちゃを返してって言っても返してくれないの!」
Youメッセージは、言われた側が「責められた」と感じてむっとしがちです。一方Iメッセージは、「あなたならできると思っていた」という自分の気持ちを伝えるので、相手に届きやすくなります。すぐにできるようになるものではありませんが、根気よく練習を重ねれば、少しずつ上手に気持ちを伝えられるようになります。まずは親自身が、子どもへの注意をIメッセージに言い換えることから始めてみましょう。
4.怒りの表現の仕方を教える

怒りを逃がすテクニックだけでなく、「上手な怒り方」も教えておきましょう。アンガーマネジメントでは、怒ること自体は否定しません。怒っていいのです。ただし、怒りを表現するときの3つのルールと、4つの禁止事項を、子どもに分かる言葉で伝えておきます。
3つのルール
- 人を傷つけない
- 自分を傷つけない
- ものを傷つけない
4つの禁止事項
- 機嫌で怒らない
- 関係ないことを持ち出さない
- 原因になったこと以外を責めない
- 一方的に決めつけない
このルールと禁止事項を子どものうちから身につけておくと、相手を傷つけたり勝ち負けにこだわったりする怒り方ではなく、建設的に気持ちを伝える怒り方ができるようになります。まずは親子で「人・自分・もの、どれも傷つけないで怒ろうね」を合言葉にしてみてください。
5.怒りの大きさを数字にする「スケールテクニック」
怒りの感情を「見える化」するのも効果的です。怒りのレベルを、「ちょっとイラッ=1」「すごく腹が立つ=10」のように10段階で数字にしてみます。「今のはレベルいくつだった?」と聞くことで、子どもは自分の怒りを一歩引いて眺められるようになります。
発達の観点から見ると、怒りを数字に置き換える作業そのものが、感情と自分の間にすき間をつくる練習になります。「今レベル8だから、まず深呼吸しよう」と対処につなげやすくなるのも利点です。怒りやすいお子さんには、紙に怒りの温度計を一緒に書いて、冷蔵庫などに貼っておくのもおすすめです。
6.きもちカードで感情に名前をつける
まだ言葉で気持ちを表すのが難しい小さな子には、「うれしい」「かなしい」「おこってる」「こわい」などの表情を描いたカードを使うと、今の気持ちを選ぶ形でモヤモヤを言葉に変える練習ができます。「どのカードの気持ち?」と尋ねるだけで、子どもは自分の感情に気づきやすくなります。
感情に名前がつくと、「悲しいから泣いていたんだ」と自分で理解でき、爆発する前に伝えられるようになっていきます。これは、怒りの裏にある一次感情に目を向ける練習にもなります。市販のカードを使ってもよいですし、親子で手作りすれば、それ自体が楽しい時間になります。今日からお風呂上がりに「今日はどのカードの気持ちだった?」と聞いてみましょう。
やりがちなNG対応と望ましい対応の比較
同じ場面でも、声のかけ方ひとつで子どもの受け取り方は大きく変わります。子育ての現場でよくある「やりがちな対応」と「望ましい対応」を、理由とあわせて整理しました。
| 場面 | やりがちなNG対応 | 望ましい対応 | なぜ違うのか |
|---|---|---|---|
| 子どもが怒鳴ったとき | 「うるさい!」と怒鳴り返す | 「落ち着いてから話そうね」と待つ | 怒鳴り返すと「怒れば伝わる」と学んでしまうため |
| 泣き止まないとき | 「泣かないの!」と感情を止める | 「悲しかったんだね」と気持ちを認める | 感情を否定されると、出してはいけないと思い込むため |
| 友達を叩いたとき | 「ダメでしょ!」とだけ叱る | 「叩かないで、言葉で伝えよう」と代わりの行動を示す | 禁止だけでは、どうすればよいか分からないため |
| 謝らせたいとき | 「早く謝りなさい」と急かす | 気持ちが整理できてから促す | 急かすと形だけの謝罪になりやすいため |
| 反応に困ったとき | 完全に無視する | 「ここにいるよ」とそばにいる | 無視されると「分かってもらえない」と不安が強まるため |
| 原因を聞くとき | 「なんでこんなことしたの!」と問い詰める | 「何が嫌だったのかな」と一緒に考える | 責める口調は心を閉ざさせ、振り返りを妨げるため |
すべてを完璧にこなす必要はありません。気づいたときに一つでも取り入れてみる、それで十分です。まずは「怒鳴り返す前に一呼吸」だけ、今日から意識してみてください。
パパや園・学校と連携して感情コントロールを支える
感情コントロールの練習は、ママひとりが背負うものではありません。家族や周囲と関わり方をそろえると、子どもは「どこでも同じように受け止めてもらえる」という安心感を得られ、効果も出やすくなります。
たとえばパパに協力をお願いするときは、「もっと子どもを見て」と漠然と頼むより、「子どもが怒り出したら、叱らずにそばで待ってあげてほしい」と具体的に伝えると動きやすくなります。夫婦で「怒鳴り返さない」「気持ちを代弁する」といった方針を共有しておくと、子どもは混乱せずに済みます。祖父母世代とは「最近は頭ごなしに叱らず、気持ちを受け止める関わりがよいとされている」と、価値観の橋渡しをしておくと衝突を避けられます。
園や学校とも連携しておきましょう。家庭での様子を担任の先生に共有し、園や学校での姿を教えてもらうと、家とは違う一面が見えてくることもあります。子育ての現場では、「家では荒れるのに園ではしっかりしている」というケースも多く、それは家庭が安心して気持ちを出せる場所である証拠でもあります。連絡帳や面談の機会に、気になる様子を一言добавить共有しておくことから始めてみてください。
子どもの怒りっぽさで悩んだときの相談先と受診の目安
「ただの個性なのか、相談したほうがよいのか」と迷う保護者は多いものです。判断の手がかりになるのは、怒りっぽさが一時的か、継続的かという点です。特定の出来事をきっかけに数日イライラする程度なら、多くは一時的なもので、時間とともに落ち着いていきます。
一方で、はっきりした原因が見当たらないのに、数週間から数か月にわたって強いいら立ちが続き、園や学校、家庭での生活に支障が出ている場合は、ひとりで抱え込まず専門家に相談してよいサインです。次のような様子が続くときは、相談を検討してみましょう。
- ほぼ毎日、長い時間イライラしたり怒ったりしている
- 友達とのトラブルが頻繁に起き、園や学校で困りごとが続いている
- 自分や周りを傷つけてしまう行動が繰り返される
- 気分の落ち込みや、腹痛・頭痛などの体の不調をともなう
- 家庭での工夫だけでは、保護者の負担が大きくなっている
相談先はいくつもあります。小学生以上なら、学校のスクールカウンセラーに担任を通じて相談できます。発達面が気になるなら、自治体の子育て支援センターや発達相談の窓口、児童発達支援・放課後等デイサービスでは、診断がついていなくても相談が可能です。気分の落ち込みや体の不調が続くときは、小児科やかかりつけ医、児童精神科への相談も検討しましょう。どこに相談すればよいか迷うときは、まず住んでいる自治体の子育て相談窓口に電話してみるのが安心です。相談は、決して特別なことでも、親としての敗北でもありません。子どもにとって一番の近道になることも多いものです。
よくある質問
Q.怒りっぽいのは、しつけが悪いせいでしょうか?
いいえ、しつけだけが原因ではありません。感情のコントロールの苦手さには、生まれ持った気質や脳の発達段階が大きく関わっています。怒りっぽさは、感情を抑えるブレーキ役の前頭前野がまだ育っている途中であることの自然なあらわれでもあります。自分を責めるより、「今は練習中なんだ」ととらえ、気持ちを受け止める関わりを少しずつ重ねていきましょう。それが何よりのサポートになります。
Q.怒っている子に「怒らないの」と言うのはダメなのですか?
「怒らないで」と感情そのものを止めると、子どもは「怒ることはいけないこと」と思い込み、気持ちをためこみやすくなります。怒りは自然な感情なので、否定する必要はありません。おすすめは「怒ってもいいよ。でも落ち着いてから話そうね」と、感情は認めつつ表現の方法を示す声かけです。怒り方のルールを一緒に決めておくと、子どもも安心して気持ちを出せるようになります。
Q.イヤイヤ期の子にアンガーマネジメントは効きますか?
2〜3歳のイヤイヤ期の子は、言葉での理屈がまだ理解しにくいため、6秒ルールや振り返りをそのまま教えるのは難しい段階です。この時期は、親が「悲しかったね」と一次感情を代弁し、気持ちを落ち着かせる関わりが中心になります。それ自体が、将来アンガーマネジメントに取り組むための大切な土台づくりです。本格的な練習は、メタ認知が育ち始める10歳前後を一つの目安にするとよいでしょう。
Q.家ではひどく荒れるのに、外ではおとなしいのが心配です
家庭でだけ感情を強く出すのは、その家が「安心して気持ちを出せる場所」になっている証拠でもあります。外で気を張って頑張っているぶん、その反動を信頼できる家族の前で出している、というケースは少なくありません。基本的には心配しすぎなくて大丈夫ですが、外での疲れが大きすぎないか、園や学校で無理をしていないかは、先生と連携して見ておくと安心です。
Q.親自身がすぐイライラしてしまいます。どうすれば?
親も人間ですから、毎日穏やかでいるのは無理があります。大切なのは怒らないことではなく、怒りそうなときに「ちょっと落ち着くね」と一度離れる姿を見せること。それが子どもにとって最高の手本になります。深呼吸や、その場を離れる、といった6秒ルールは大人にも有効です。それでもつらいときは、ひとりで抱えず、家族や自治体の相談窓口に頼ってください。親が回復することが、子どもの安心にもつながります。
親子で感情のコントロールに取り組む
「うちの子はなんでこんなに怒りっぽいの」とため息をついているとき、子どもの怒り方は、実は身近な大人の怒り方とよく似ていることがあります。子どもは、いちばん近くにいる大人の姿から、感情の出し方を学んでいくからです。
だからこそ、これを機に親子で一緒にアンガーマネジメントに取り組んでみるのがおすすめです。感情のコントロールは、叱って身につくものではなく、安心の中で少しずつ育っていく力です。今日できなくても、明日また一緒に練習すればいい。そのくらいの気持ちで、長い目で見守っていきましょう。
就学期以上の子はアンガーマネジメントに取り組みやすいですが、イヤイヤ期の子は言葉では理解できず、かんしゃくを起こすこともあります。その場合は、2歳の癇癪の原因は?を参考に、年齢に合った対応を試してみてください。完璧を目指さず、親子で一歩ずつ進んでいきましょう。










