満員電車のベビーカーマナー

満員電車のベビーカー利用時に周囲に迷惑がられないマナー

満員電車にベビーカーをたたまずに乗車している人を非常識だと思いますか?思う人も思わない人も、双方の立場から今の日本の電車事情について考えてみましょう。子育てがしやすい環境を作るのは社会にとって必要なことですが、賛否両論あるこの問題に解決策はあるのでしょうか。

満員電車のベビーカー利用時に周囲に迷惑がられないマナー

ベビーカーに子供を乗せて電車に乗るのはマナー違反!?

ベビーカーに子供を乗せたまま、満員電車に乗る…これについては今までにも様々な論争が繰り返されています。
ベビーカーで電車を利用する人も、子連れに全く縁がない人も、同じ電車に乗り合わせます。どちらか一方だけの意見で、この議論に「良い、悪い」の結論をつけるのは難しいことでしょう。

幼い子供を連れて肩身の狭い思いをされている方も、そうでない方も、満員電車にベビーカーで乗ることについて、様々な角度から考えてみましょう。

ベビーカーで満員電車に乗るのは危険なのでできるだけ避けた方が良い

満員電車の危険性を考えるママ

まず、ベビーカーをたたまずに満員電車に乗り込むシチュエーションを想像してみましょう。
乗り降りの際に車輪が引っかかる。乗車中に他の乗客にぶつかる、または車輪でひいてしまう。これらを危ないと感じる方もいるでしょう。

では、ベビーカーをたたんで満員電車に乗り込むことを想像してください。
母親は片手で小さい子供を抱っこしています。そしてもう片方の手にベビーカーや荷物を担ぎ、電車に乗り込みます。転倒などのことを考えるとこれも危険が伴うと言えるでしょう。

混み合う満員電車にベビーカーを持ち込む場合は安全に利用するということは困難な可能性が高いです。
車内だけでなく、ホームからベビーカーが転落してしまうなどの事故も発生していますから満員電車以外でも利用者は十分な注意が必要です。

それでも満員電車にベビーカーで乗らなくてはいけないときもある

どうしてもベビーカーで移動したい赤ちゃん

ベビーカーで電車を利用する人、しない人、双方の立場から考えるべき問題ではありますが、ベビーカーで電車を利用する人の立場から利用しない人に是非知っておいていただきたいことがあります。
それは「何故ベビーカーで満員電車に乗るのか?」ということです。「ベビーカーなんかで、混んでいる電車に乗ってきて欲しくない」と思う方もいることでしょう。確かにそのベビーカーがいなければ少なくともあと2人はその場所に立つことが出来ますよね。

しかしベビーカーを押している人、特にお母さん達にはそうしなくてはいけない事情が何かしらあるのです。
例を挙げて、いくつかの理由を見てみましょう。

  • 荷物が多く、ベビーカーがないと移動出来ない。
  • 子供と荷物とベビーカーを抱えて、電車の乗り降りが困難。
  • 子供のオムツが汚れている等の理由から、ベビーカーをたたんで抱っこが出来ない。
  • 電車内で静かにしていて欲しいから、ベビーカーで寝ている子供を起こしたくない。
  • ベビーカーに乗っていればつぶされたりしないので、抱っこより安全だと考えているから。

他にも人や場合によって、もっと様々な理由があることでしょう。
ベビーカーで満員電車に乗っている人は、ほとんどの人が好きでそこにいるのではありません。
「その時間」に「ベビーカー」で「電車という交通手段を使って」移動しなくてはいけない事情があるのです。

電車内でみんなが感じる迷惑行為は騒音

電車内で足を放り出すマナーの悪い男性

満員電車に限らず電車内で迷惑に思う行為と言えば、何が思い浮かぶでしょうか?
これは多くの人に共通していることが多く、その代表的なものに騒音があります。
2015年に2,000人程度の鉄道を利用する男女に行われた「あなたが電車を利用される場合、迷惑と感じる行為を挙げてください」というアンケートがあります。

アンケートの結果では7年連続で「騒々しい会話・はしゃぎまわり等」が1位となっており、乗客は「騒音と感じる行為」に関して不快に思うことが多いと分かります。

実際に、子連れの親に対して「子供が騒いでうるさい」「泣かせないで欲しい」という苦情は多いようです。ベビーカーに乗った子供は、大人のように静かにしていることは出来ませんから、仕方のないこととは頭ではわかっていても、気にせずにいられる人ばかりでないのも確かですよね。

あなたはベビーカーに乗った子供がおしゃべりしたり、泣いたりすることについてどう思われますか?ベビーカーそのものにだけでなく、子供の声に対して不快と感じる人が多いことから子連れのベビーカーに対する視線がより冷たくなっている傾向もあるのではないでしょうか?

国土交通省のガイドラインとは?ベビーカー利用者を守る働きかけ

満員電車のガイドラインを目に通す女性

国土交通省は公共交通機関等におけるベビーカー利用にあたって、ベビーカーを折りたたむか否か賛否両論の意見があることから、平成26年3月にガイドラインをとりまとめました。
公共交通機関や公共施設等におけるベビーカー利用にあたっては「社会全体で子育てを支える」という考えのもと、基本的にベビーカー利用者を守る動きとなっています。

ベビーカーマークがマナーの指針に!ベビーカーは折りたたまないで利用できる

そこで作られたのが「ベビーカーマーク」です。目にしたことがあるでしょうか?
電車内でのベビーカー利用について「電車やバスに乗る際はベビーカーを畳まずに乗れる」ことを、周囲に分かってもらうために制定したマークです。

このマークは電車だけではなくバスでも使われており「ベビーカーをたたまずに利用出来る場所である」ことを示すマークと「ベビーカーをたたまずに利用することが適切でない」ことを示すマークの2種類があります。
このように社会の流れ的にはバリアフリーの面からもベビーカー利用者を守ろうとする動きが見られます

政府は、電車内で車椅子やベビーカーが優先的に置けるスペースを、2倍に広げることを明らかにしました。また現在、鉄道会社に対して1編成につき1ヶ所の設置を義務付けている優先スペースを、2017年からは2カ所以上に増やす方針も打ち出されています。

ベビーカーで満員電車はOK?NG?

非常に難しい議論ですが、双方の主張をよく聞いてから考える必要があります。また、電車内は公共の場ですから、お互いの立場に立って、一方的な意見にならないようにしましょう。

両方の立場から考えてみる

両方の立場から物を見る男女

反対派の主張

  • 乗り降りの際に危険だと感じることがある。
  • スペース的に邪魔。
  • 子供の声がうるさくて迷惑。
  • 満員電車に乗らず、もっと空いているときに乗ればいい。

毎日の満員電車。押しに押され気持ちよく乗れるという人の方が少ないでしょう。それぞれの理由があって疲れながらも乗っているという、自分のことだけでも精一杯な人もたくさんいます。

これから仕事に向かうとき、疲れて家に帰るとき、ぎゅうぎゅう詰めの車内にベビーカーに乗った子供がいたら、「あれがなかったらもう少しスペースが空くのに」や「なんでわざわざ混んている中に子供を連れてくるんだ」のように思ってしまう気持ちも分かります。
子連れの立場になったことがない人は、なおさらそういう心理が働くことでしょう。

賛成派の主張

  • その時間に電車に乗らなくてはいけない。
  • ベビーカーを折りたためない理由がある。
  • あからさまに迷惑だと言わず、少しでも理解が欲しい。
  • ベビーカーで乗る方にも肩身の狭い思いがあるので、マナーがないように言われるのは辛い。

ベビーカーで満員電車を利用する理由は、細かいことまで挙げればキリがないかもしれません。
働いているお母さんが職場まで子供を連れて行く場合、車で行けばストレスもないかもしれませんが、駐車場代がすごくかかるので連れて行けないケースもありますよね。
10kgをゆうに超えた我が子を、子供グッズの入った重たい荷物と一緒に持ち運ぶのも大変で、本当に切実な事情があるのも確かでしょう。

どちらか一方が優先されるべきなのではなくて、お互いに大変な思いがあって、満員電車に乗っているのですから、それを忘れず、譲り合う気持ちや謙虚さが必要なのかもしれません。

海外の電車内ベビーカーの使用事情

海外の満員電車事情

賛否両論ある電車でのベビーカー利用問題ですが、海外で公共の交通機関を利用する場合、ベビーカーはどのような扱いとなっているのでしょうか?

オーストラリアでは、ベビーカーは折りたたまずにそのまま乗り込んでOK

ベビーカーで電車やバスに乗り込む人は少ないものの、ベビーカーの作り的にも(大きくて重い)たたんで乗車する人はほぼいないようですね。周囲もそれが当然という意識があり子連れへの対応も優しいのが特徴です。
車椅子やベビーカーを乗せるために、傾斜がついてそのまま乗れるようなバスもあり、電車には自転車すらそのまま乗れるところもあります。

ヨーロッパでもベビーカーの折りたたみの必要はなく、子連れに寛容

ベビーカーで電車を利用する人が少ないのが特徴です。小さい子供を連れている場合ほとんどの人が車を利用しています。しかし公共の交通機関では子連れへの対応は優しくベビーカーを折りたたんで乗車せよという姿勢もありません
特にドイツでは車椅子やベビーカーにとって駅自体が優しい作りになっており、そういった人達をみんなで守ろうという姿勢も見られます。

海外と一口に言っても、国によって違う、州によって違うなどありますが、おおむねベビーカーでの公共の交通機関利用には、みな日本よりは寛容のようです。
ただ海外では日本のラッシュ時のような車内はほぼ想定外のため、同じように比較することは難しいかもしれませんね。

満員電車でのベビーカーの扱い

特に首都圏で見られる日本の満員電車は、ご存じの通り本当にぎゅうぎゅう詰めになります。ベビーカーが入る隙など見当たらず、子連れのお母さんは並びながら次の電車を待つこともあるでしょう。
どうしてもベビーカーで満員電車に乗らなくてはいけないとき、安全に気をつけるとともにその他の乗客への配慮が欠かせません。

折りたためるなら折りたたむ方が良いでしょう

ベビーカーで横断歩道を渡る赤ちゃん

荷物があり子供を抱えてベビーカーを運ぶ作業は言うほど生やさしいものではありませんが、可能であれば混雑している車内では畳んだ方が良いでしょう。
もちろん危険を伴う場合は別ですが畳んで乗る方が他の乗客には親切で周囲の目も厳しくなりません。

出来る限り満員電車には乗らない方法を探しましょう

出来ることなら「ベビーカーで満員電車に乗らない」工夫が必要です。 満員電車にベビーカーで立ち向かうのには体力がいりますし、乗っている間神経も使います。なにより人がベビーカーにいる赤ちゃんの上に倒れてきたり、かばんなどがぶつかる可能性もあるので、安全面から子連れでの満員電車はおすすめできないのです。

すごく混み合う時間帯を避けて乗る、他の交通手段を利用するなどが出来る場合は、電車以外の方法で移動した方が無難です。

子連れベビーカーと乗り合わせたら、寛容な目で見てあげてほしい

もしラッシュ時、あなたの乗った車両に子連れのベビーカーがいたら?
出来ることなら必要以上に肩身の狭い思いをしないですむように協力してあげましょう。
1人1人が少しずつでもスペースを譲ってあげる。乗り降りの際に手を貸してあげる。ちょっとくらい子供がうるさくても、ほほえましく見ていてあげる。

このように出来ることならなんでも良いのです。精神的にもイライラしがちな満員電車の中ですが、譲ってあげよう、守ってあげようという気持ちはあなたの心にも良い効果をもたらすことでしょう。

ベビーカーを利用する人も周りの人もお互いに理解し合う気持ちを大切に

ベビーカーを利用する人がいる一方、子連れ全くに縁のない人がいます。
色々な境遇の、色々な考えの人が乗り合わせるのが、満員電車です。ベビーカーマークが出来たとしても、今の日本の電車事情ではベビーカーに100%優しい環境を作り出すのは難しいかもしれませんね。

その中で「絶対に許せない」や、「もっと譲ってくれればいいのに」のように、相手の立場を十分に思い遣っていないと感じられる発言ははたして適切でしょうか?

ベビーカーで満員電車を利用する人は、周囲への十分な配慮や謙虚さが必要となってくるでしょう。
ベビーカーと乗り合わせた人は迷惑なもののように扱わない配慮や見守ろうという姿勢が必要となってくるでしょう。

そして全ての大人達は「子供は未来の日本を担う守るべき存在」であることをお忘れなく。
心にゆとりを持って温かい目で見守ってあげることは、決してあなたにとってデメリットにはならないのですから。