「子どもが落ちこぼれてきたかもしれない…」気付いたときにやるべきこと
2013年に発表された厚生労働省研究班による「中高生のインターネット依存」に関する調査で、全国で約51万8千人もの子供たちがネット依存に該当するという驚きの結果が報告されました。インターネット依存でみられる様の代表格に「成績の急落」があげられます。
定期テストの結果を見せたがらないと思ったらびっくりするほど成績が下がっていた、たまの休日に宿題を一緒にやってみたら「全然わからない」という返事が返ってきた―――自分の子供が落ちこぼれはじめているかもしれないと感じたら、その現実にしっかり目を向け、もう一度、子どもとじっくり向き合うことが大切です。「何とかなるだろう」という根拠のない言い訳は事態を悪化させるだけ、まずは子供が今置かれている現状についてしっかり分析していきましょう。
どうして落ちこぼれたの?落ちこぼれてしまった背景を考える
落ちこぼれる子供には、その子だけではなく、親にもある傾向がみられるといわれています。子供の全体像がしっかり見えていないのなら、接し方を改める必要があります。
これは、「子どもはかわいがっているし、塾にだって高いお金払って行かせている!」というものとは別の話です。あくまでも「落ちこぼれ」につながってしまう傾向があることは事実なので、それらについて考えていきましょう。
親は子供を学校に任せすぎないことも大切
落ちこぼれはある日突然になってしまうものではありません。半年、1年くらい前から徐々に勉強でわからない部分がでてきて徐々に落ちこぼれの状況に至ります。また、学年が上がれば上がるほど、「わからない・できない」が積み重なって深刻な状況になっています。
高校生なのに英語は「apple」のスペルから始める、大学生なのに論文ではなく「作文」の書き方から指導される、こういった現状も事実なのです。
学校の限界
「勉強を教えるのは学校の仕事でしょう!」という意見もありますが、学校では(特に首都圏などでは)1クラス40人近い生徒を先生1人が担当している状況において、すべての生徒の学力を平均的に引き上げることは難しいといえます。
学校の授業は文部科学省の指針に基づいた年間カリキュラムが決まっているので、授業についてこられない子供に的を絞ってフォローする余裕がほとんどないのが現状です。40人一度に教えるだけでも、学習資料の準備作成や答案の丸つけが40人分。それにかかる時間と労力、さらにそこに部活や事務作業も重なり休日すらないような現状という教師の厳しい勤務体制など根底にある問題を見ずに文句を言うだけで解決はできないでしょう。
親も限界?
これら学校側の現状も大きな要因となり「落ちこぼれ」ができてしまう面は否めませんが、学校の現状を考えると、これ以上を求めるのもちょっと可哀想です。ですが、学校の授業で発生する穴は家庭でフォローしていくのが早いにしても、子供の両親側もそれぞれ仕事等や事情を抱えていると、当然日常的に時間は制限されるので、子供のテストの点数が下がりはじめたときを見過ごしてしまうことも多々あります。
子供が勉強を避けるようになったときに学校も大人もそれに気付いてあげられず、ママも適切な対応ができない場合は、子どもは誰からも気付かれぬまま「落ちこぼれ」に至ってしまうでしょう。
塾に行っているからと言って勉強は安心ではない!
子供の学習面について親が見てあげあられないところをサポートし補ってくれる存在は塾ですが、塾に行かせていれば安心というわけではありません。塾では、「〇〇高校合格〇〇人!」という営業フレーズを掲げるところが多く、できない子は「できない子のクラス」に分類して学校以上に容赦なく「落ちこぼれ」としての烙印を押します。
子どもは親が高い塾代を払っていることをわかっているので、とりあえずは塾には行くでしょうが、塾でもわからない、塾のペースにもついていけないといった事実、また、それをどうしたらいいかといった相談とはなかなか切り出しにくいものがあります。
そんな日々がつのって、最終的には「塾を辞めたい」という気持ちに至ってしまうケースが多いようです。
フォローアップが不完全では、学校で落ちこぼれて塾に行かせたのに、結局、塾でも落ちこぼれという二重苦に子供を陥れてしまう状況になりかねません。
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人間関係や精神面が原因のこともある
今までお伝えした原因とは様相がことなる原因が「人間関係のトラブル」です。
そこには、「いじられている(=からかわれる)」「友達とうまくいっていない」といった子供同士の人間関係のストレスが原因で、学校が嫌いになり、先生不信、友達不信を経緯として「勉強に意欲的に取り組む気持ち」が失われてしまうケースがみられます。
他にも、親の気持ちが仕事や他のものに傾き過ぎていたり、何らかの親への不満から、親へ反抗の1つの手段として「わざと不勉強なる」もしくは「無意識のうちに勉強が手につかなくなる」という子供も。
子どもが落ちこぼれになっているみたい!学校ではどんなことが起きている?
これまで、落ちこぼれてしまう背景について一緒にみてきましたが、子どもの成長によって傾向や細かい経緯は違っているようです。ここでは子どもの年代別によくみられる傾向を探っていきましょう。
小学生から落ちこぼれ始める場合
小学校で落ちこぼれが現れ始めるのが小学3~4年生ごろからといわれています。小学校1~2年生までの学校の授業は、ひらがなの読み書きや簡単な漢字、算数は数や形、足し算、や生活(理科と社会)は、身近な生活の中で触れてきた内容が多く、全体的に基礎の中でもこれからの勉強の土台となる概念的な要素も持つごくごく簡単な勉強が大半となり、多くの子供が余裕を持って取り組めるために簡単には落ちこぼれにくいのです。
これに対し、3~4年生からはしっかり「勉強」をしないと理解できない内容に移行する時期。算数で言えば「割り算・分数」といった複雑な計算にも取り組んでいきます。
また、子供本人の性質もありますが、小学生くらいまでは子どもの発達や成長度合いにも個人差があり「先生の話を聞くだけでさっと理解してしまう子」「上の兄弟がいてさまざまな経験や知識をもった子」、それに対し「じっくり話をきいてからゆっくり理解していく子」「なかなか落ち着いて話が聞けない子」などさまざま。どうしても後者の子どもの方が勉強の理解が遅くなったり同じ授業でも不十分な面が顕著になってしまう傾向がみられます。
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中学生になってからは英語で落ちこぼれはじめることが多い
中学校に入ると本格的に学校の授業でも英語学習がスタートします。
最近は小学校でもネイティブの先生を囲んだ会話の授業がありますし、昔と比べれば英語に触れる経験を積んでから中学校に上がることができるため、必要以上に英語に対して抵抗を感じない子供たちが増えているといわれています。
ですが、中学に入ってからの英語の授業はスピード展開されていきます。1ヶ月後の5月には初の中間テストがあり、夏休み前にはbe動詞や一般動詞などの学習も始まるので、英語で苦労をしてしまう生徒が多いのも現実。小学校1年生があいうえおから学ぶように、アルファベットの見直しから入りますが、油断をするあらどんどん窮地に立たされてしまいかねません。
また、数学や理科と言ったその他の教科においては、小学校までの基礎力を土台とするので、そこまでの理解度の違いがグーッと目立ちはじめるほか、専門教科ごとに教師が変わるシステムに戸惑う子どもも少なくありません。中学の教師も小学校のように「担任する」という意識は薄く、「専門教科を教える」という意識の教師が増えることから、若干、教師との距離感に戸惑い、わからないところも聞きにくい、わからないと思ったときに解消しにくい等新たな問題が浮上してくることも。
これらの様々な要因がきっかけとなり「中学の勉強は難しい」「中学の勉強は嫌だ」という心理に陥ってしまう子が多いようです。
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中学校に行きたくないと子供が言う背景にはどのような問題があるのか、登校を拒否するに至った理由や子供が抱える問題の解決と不登校で考えられる高校進学への影響の両面からベストな対応を探ります。
高校の落ちこぼれは、スマホ・遊び・仲間の影響が強い
高校生になると「校区」がなくなるので、子供は自分の住むエリアから離れた学校に通うようになることも多く、連絡用として殆どの子供がスマホを手にするようになります。学校の帰りは塾やバイト先に直行するようになったり、中学までは禁止されていた「寄り道」の味をしめます。通学で繁華街を経由するようになったり、今までにちょっとしたイタズラ経験が少ないまじめな子ほど、そういう誘いにはまりやすいとも・・・。
また、高校生になると恋愛も楽しくなりますね。これら勉強以外のさまざまな要素から勉強がおろそかになってしまう例は決して珍しくありません。
進学校で落ちこぼれる子の現状
東大に合格者を出すような有名高校に入れたとしても、300人生徒がいれば、1番になれる子がいる一方で300番になってしまう子もいます。
それは単に学力の問題ではなく、有名校や進学校特有の強いエリート意識や成績第一主義の仲間や学校の雰囲気に馴染めないことが原因となっている場合もあります。
せっかく苦労して入ったのにと嘆く親も多いのですが、進学校を辞めて別の学校に編入する、中高一貫校を辞めて別の高校を受験するという例も少なくないのです。
子どもが落ちこぼれたとき親はどう対応すべきか?
子どもが落ちこぼれたときは「もっと勉強しなさい!」とガミガミ言うことは全くの逆効果であると多くの専門家たちが指摘しています。親はどう対応すべきなのか一緒に考えていきましょう。
まずは、子どもの心境をしっかり受け止める
落ちこぼれてしまったことは子供自身もよくわかっていて、授業で落ちこぼれを認識しはじめ、成績になってあらわれたときには、子供は完全にと言っていいほど授業への意欲を失ってしまっていることでしょう。こういうとき、「どうしてこんなに勉強ができないの?」「なんでこんな問題がわからないの?」「あの頃はできたのに」「お兄ちゃんはできるのに」といった親の言葉は、子供に投げかけるべきではありません。ガタガタに崩壊した自信、傷ついた心に、さらに追い打ちをかけることになります。
まずは「子どもの心身の健康」という親として最も基本かつ最も重要な考えをぶれずに持っていましょう。落ちこぼれてしまったからとダメな子ではないことは親も子も今一度認識すべき点。それだけで子どもの心は救われ、失った自信を取り戻すきっかけを生みます。子供が意欲を取り戻せるように、次のステップへうまく誘導してあげましょう。
勉強する意味について一緒に考える
そもそも「落ちこぼれ」とはどういう意味でしょうか?大辞林によると「教科の進度についていけない児童・生徒」と定義されています。親は、だらだらと勉強しない様子の子どもや開き直っているような言動にイライラして、つい先のような言葉をつぶやいてしまいたくなります。でも落ちこぼれとは「教科の進度についていかれない」だけであって、その子の人格が「落ちこぼれ」たわけではありません。その部分を肝に銘じて、これから先のことに目を向けた対応をとる必要があります。
「将来苦労しないための勉強」はない
「優秀な高校、大学に行かないと将来苦労する」「ランクの低い高校になんか行っても、将来出世しない」―――というのは本当でしょうか?
優秀な学校を出ないと将来苦労するの真意は職種への差別的な要素があるフレーズ。ある程度とんとん拍子に一定ライン以上の進学就職とこまを進められれば、将来の仕事の選択肢は広くなるでしょう。しかし、いい仕事に就けば、安定感のある企業に勤めれば苦労をしないかどうかというとそれはまた別な話。
厚生労働省によると、平成15~25年の10年間、就職後3年以内に会社を辞めてしまう「大卒の離職率」は例年30%前後と高い数値のままであることが報告されています。優秀な大学を出ても厳しい勤務状態に耐えかねて会社を辞めてしまったり、自ら命をたってしまう事件も報道されていますよね。
これを見る限り、学校の勉強で良い成績を収めること自体、将来「苦労しないための勉強」ではないと言えるでしょう。
何のために勉強をするかを親子でもう一度考える
親が子供に回避してもらいたい苦労は、仕事の苦労だったり生活の苦労だったりしますが、直球に「金持ちになりたいでしょ?!」と言うよりも、親は「将来苦労しないためにウンタラカンタラ・・・」とお小言を言いがちです。ですが、それでは子供には勉強の意義は伝わらないでしょう。
子供自身、将来苦労しないことを良いと思えればまだしも、一般的に子供が持つ夢とは「苦労しないかどうか」に左右されるものではないのを見ると、勉強する意義は他のところに見出すべきなのかもしれません。
なぜ勉強するのか、簡単に答えがでない問題ですが、目標や希望を失った子どもと一緒に親が考えることで、子供は自分なりの答えをみつけるかもしれません。子供が落ちこぼれてしまった今だからこそ、親子で一度、立ち止まって一緒に考えたい大きな課題です。
環境を整え、一緒に克服していこう!
落ちこぼれてしまった子供の多くは、親、学校、塾といった大人たちの間でこぼれ落ちてしまった子供たちです。忙しくて勉強をみてあげられなかったという思いがあるのなら、今こそ、その時間を取り戻しましょう。
小学生なら一緒に勉強しましょう
子供は言ったって勉強しません。それは親のやりなさいという命令が、「しなければいけないもの」=「やりたくないもの」という認識にしてしまっているから、というところもあります。
小学生の子供の意欲を引き出すには「楽しい」など感覚に訴えかけましょう。これには、親が普段から勉強している姿を見せるのが効果的。
学校の勉強をみてあげられるうちは、家庭で教えてあげても良いでしょう。中学や高校の勉強をみるとなると、ちょっと難しいと思う親御さんも多いと思いますが、小学生までなら教科書に準じた「教科書ガイド」といった参考書を使いながら教えたり、月1,000円前後で添削指導をしてくれる通信教育会社を使って一緒に勉強するという方法がおすすめです。
平日どうしても時間がないのなら、休日の朝はちょっと早起きをして1教科15分から復習をはじめましょう。小学生だからこそ、親の努力でまだまだ十分に追いつくことができます。
- 勉強部屋の理想の形とは?子供のやる気を引き出す部屋作り
勉強部屋を子供に用意しようと思いたったとき、最初に考えるのはやはり学習机のことでしょうか。優れた勉強部屋を作るためには、学習机意外にも考えなくてはいけない大切なことがあります。
中学生は、ときに他人の力を借りて!
勉強も難しくなってきますが、高校の勉強の基礎段階なのでまだまだ取り返せます。ただこの時期は反抗期のまっさかりなので、親子で勉強する時間は受け入れにくくなってくる時期でもあります。
こういう場合は、勉強が苦手な子を対象にしているような個人塾や家庭教師会社を探して、人の力を借りながら立ち直っていくと回復が早いといわれています。
たまには「頑張ったから今日はパフェ食べたい!」など子供がリクエストを受けて応じるなど、子供の努力を応援する親の姿勢を見せましょう。
進学校・高校生の対応は特に慎重に
高校生や中高一貫の進学校の場合は、プロの力を借りましょう。
特に優秀な学校や子供にとってギリギリで入った学校の場合、基本的に周りは優秀なので、自分の子どものわからない段階からみてくれるような塾や家庭教師、通信教育会社などを探しましょう。
単に勉強ができないという問題ではなく、人間関係のトラブルなどの精神面でのトラブルが原因となって意欲を欠いているケースでは、環境を整えたり変えてあげるなら立ち直れることも多いです。親が学校に対して納得の行く対応をするようかけあったり、私立の場合は学校を変えるという選択もあります。
学校での問題が深刻ならば、高校を辞めても「高卒認定(昔でいう大検)」から大学進学を目指す方法だってあります。精神的なダメージも大きくなりがちな思春期の人間関係の問題はデリケートな問題なので慎重に進めることが大切ですが、心の底から「僕はダメな人間だ」「私にはできないんだ」と子どもが思い込んでしまう前に、早めの対策をしてあげたいですね。
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高校に行きたくないと言われたとき親は心配が真っ先に浮かびますが子供の気持ちに耳を傾けて気持ちの変化や学校の環境など学校に行きたくない理由を知ることが先決!子供の意志を尊重し選択肢を吟味することが大切!
落ちこぼれの偉人・成功者に学ぶ!克服・脱却への道
相対性理論のアインシュタインは5歳まであまり話すことができず、その後も話すことが苦手で周囲には「できない奴」と思われていたといわれていますよね。世界のホンダを生んだ本田宗一郎さんは「成功は失敗の数の1%だ」といい、発明家エジソンも同じように1000回の失敗の後の1001回目の成功について、「それまでの1000回は失敗ではなくすべてが積み重なって今がある」といったことを述べています。
今のつまずきも、大人が子供の力を信じてあきらめなければ、それは必ずや成功へとつながる1つの過程。子供を信じて、今こそ親が踏ん張って子どもをしっかり支えてあげてほしいと思います。