主夫とはいったいどんな存在?
主夫という存在を多くの人はテレビドラマや漫画を通して、何となく理解しているのではないでしょうか。しかし身近に主夫をしている人がいなかったり、接することが少ないのでリアルな実態を知らない人も多いでしょう。
この記事では主夫の定義や割合、男女双方から見たメリットデメリットなど様々な観点から主夫という存在について紹介します。夫に主夫という役割を担ってもらいたい人や、家族の役割を今一度考えたい人は、是非参考にしてください。
主夫とは主婦業をこなす男性のこと
主夫の定義が明確に定められているわけではありませんが、世間一般では主婦業をこなす男性のことを指す言葉であり、「主婦」に対置して用いられる言葉です。家事を専業とする場合、妻のことを専業主婦と言うのに対して、夫の場合は専業主夫といいます。
主婦業は女性、バリバリ働くのは男性。という昔ながらの考えを覆すような男女平等を推進する世の中になっているので、まだ浸透しきっていない主夫という立場も、これからどんどん浸透していくことでしょう。
主夫をしている人はどれくらいいるの?
主夫と一口に言っても、家事育児を全般に行って会社には属していない専業主夫、副業をしている兼業主夫など多岐にわたる働き方があるので一概には言えませんが、「妻の扶養に入っている」状態である年金の第三号被保険者に属している男性は、日本に11万人存在します。
それに対して専業主婦の人数は680万人と、男性の主夫の約61倍です。男女平等を促す現代社会ですが、実際は昔ながらの性別の役割分担に縛られていることが見て取れる結果となっています。
主夫に向いているのはマメな性格の人
主夫に向いているのは、家事や育児が好きで、時間の使い方が上手な人です。家事や育児は手をかけようと思えばいくらでもかけられるものなので、「専業主夫なんだからしっかりやらなくては」と気負い過ぎてしまう人や、逆に面倒くさがりな人には苦痛に思えてしまうこともあります。料理や掃除など、生活を豊かにする家事自体が趣味の人にとっては天職といえるでしょう。
家事の向き不向きに性別は関係なく、その人の性格によります。家事全般は苦手だけど働くのが好きという女性も意外と多くいるので、主夫のニーズが高まっているのです。
夫が主夫になることで生まれるメリット
夫が主夫になることによって得られるメリットはたくさんあります。妻にとっても夫にとっても感じられるメリットを見ていきます。
夫が家族と過ごす時間が大幅に増える
主夫の仕事は基本的に家の中にいることが多いため、サラリーマン時代に比べて家族との時間を取りやすくなったという人が多くいます。特に子供との生活リズムが合いやすくなるので、今まで以上に親子の絆が深まったという体験談もよく聞きます。
近年、核家族化が進んでいることで妻の妊娠、出産のサポートをしてくれる人が身近にいないことで夫が育休を取得し、専業主夫になる人が増えてきています。男性の育休取得は、子供の成長を夫婦そろって共有できるというメリットがある上、妻のサポートに徹することができるので夫婦仲が良好になるのだと言います。
子供が生まれたら妻はすぐに母になった実感がわきますが、男性はなかなか父になった実感がわかないものです。産前産後は赤ちゃんと自分の体のケアに集中したい場合や、夫の父性を育てたいのであれば、一時的に主夫への転向を考えてみてもいいのではないでしょうか。
妻の収入がある程度安定している職場の場合、産後休暇を取得し終え、職場復帰を試みるも保育園活動がうまくいかなかったり、小さな子を他人に預けることに抵抗がある場合は、夫が思い切って専業主夫に転向するのも状況が許されるのであれば視野に入れてみても良いでしょう。
夫が自由に使える時間が増える
主夫には用事がない限り時間の拘束がないので、時間を自由に使えることを主夫のメリットに挙げた男性も多くいました。ハードワークゆえに自分の時間も家族の時間も取れないお疲れ気味の夫は、一度会社勤めから離れる「休憩」の意味を込めて主夫に転向させてみてはいかがでしょうか。
長い人生、走りっぱなしでは生き抜くことはできませんので、少しの間でもゆっくりする時間をとることは大切です。また、夫が主夫業をこなしてくれることにより、妻の肉体的、精神的負担もかなり軽減します。仕事一本に集中することのできる喜びをかみしめることができます。
夫が主婦と同じ視点で物事を考えるようになる
主夫になる前は気にも留めていなかった育児や家事の効率化についてよく考えるようになったり、普段の生活を通して「子育て世代にやさしい環境」に関して考えることが増えたという人もいます。
実際に専業主婦の立場に立つことで、女性が直面している待機児童の問題や働きづらさを感じることも増え、社会問題を身近なものだととらえるようになれたとのことです。
男性は身の回りの面倒を妻である女性に見てもらいがちなので、家事の効率化など考えたことがない生活力が乏しい人も多くいます。生活力や人間力を身につけるのに、男女双方の視点で物事を考えられる主夫になることは人生の良い経験になるでしょう。
夫が家計のやりくりを分かるようになる
主夫になってから、家計管理は旦那の役割になった家庭も多いのではないでしょうか。夫婦でお財布を一緒にしている場合、食品や日用品の買い出しという家事を担う方が家計管理を任されたり、毎月決まった額を渡されその中で支出を把握しやりくりするなど、妻がその役割をする場合がほとんどです。
主夫になった旦那からすると、「この食材、こんな高いんだ!」「電気代って結構かかるんだ」と驚きの連続でしょう。主夫の多くは、今まで奥さんにお金の管理を任せっきりだったことを反省し、やりくりの大変さを実感します。
今まで節約の意識がなかった旦那が節約家になったり、無駄な買い物をしなくなったとしたらそれは主夫業のおかげでしょう。夫にしっかりとした経済観念を身につけさせたいのであれば主夫業はもってこいの仕事です。
夫がジェンダーバイアスから解放される
主夫になる前は、社会が作り上げるジェンダーバイアスにとらえられて苦しんでいた男性も多いのではないでしょうか。しかし一度組織から離れ主夫業をしてみると、そんな固定観念はきれいさっぱり消え去ります。
男女どちらが家事育児をするのかは各家庭により異なって良いですし、家族で話し合って働き方や立ち位置を選択すればよいのです。もし夫が会社という組織に溶け込めなかったり、悩んでいたりしたら思い切って主夫になってもらい、社会的、文化的な性差別、偏見から解放させてあげましょう。
ジェンダーバイアスとは
ジェンダーバイアスとは社会的性差別のことで、「男性だったら正社員であるべき」「一家の大黒柱として働くべき」などという固定観念を指します。男女平等を唱えている日本にも未だ根深く浸透しています。
夫がママ友と仲良くなれる
主夫の仕事は家事だけにとどまらず、子供の保育園や幼稚園の送り迎えやイベント参加、習い事の付き添いなど多岐にわたります。子供関係の付き合いには親同士の関わり合いも必須であり、現代の日本では厄介なママ友付き合いに頭を悩ませているママもたくさんいます。
しかしパパが子供関係の付き合いをこなしている場合は、そんな面倒なママとも付き合いやトラブルに巻き込まれることはほとんどなく、ちょうどよい距離感でお付き合いをすることができるのです。
同じ女性同士では「友達ごっこ」のような面倒なことが起こってしまいがちですが、さすがによその旦那さんを厄介ごとに巻き込むママさんはそうそういません。子供関係での付き合いをあっさりこなすことができるのも主夫の強みです。
夫が主夫になるデメリット
主夫として家族を支えることにやりがいを感じていても、悩みを抱えている人は大勢います。主夫という立場が浸透していない現代の日本だからこそ生まれる誤解や、偏見の目に苦しんでいる主夫本人やその家族もまだまだ多いのがデメリットです。
世帯年収が減る
主夫の場合、組織に所属しているわけではないので給料をもらえるわけではありません。以前会社務めしていた人からすると、主夫個人の安定した収入がなくなって世帯年収もガクンと落ち、不安に感じることも多いのです。
主夫業のほかに副業として在宅ワークや農業などをしている人もいますが、会社員時代の給料と比べると心もとないことでしょう。家計を管理してみて、初めてお金の管理の大変さや、生活するためにはお金が必要なことに気づく男性も多くいるのです。
お金以上に得られる経験や家族の笑顔があると考えよう
主夫になってから世帯年収が減ってしまい、夫は不安に思っているかもしれませんが、妻の安定した収入があるからこそ専業主夫になったことを思い返してみましょう。また、家族とのふれあいや自由な時間、家計と向き合って経済観念を身に着けたこと、お互いを思いやる気持ちなど、主夫はお金では買うことのできない多くのものを得ることができます。
人生は長く、子供の年齢によっても生活スタイルは変わっていきます。ずっと主夫でいるか、また会社員に戻るかは本人や家族が決めることです。主夫になることによって、家計に大きな打撃を与えず家族みんなが納得しているのならば、目先のお金のことばかりを気にせずに長い目で見てみましょう。まだ先のことはわからないのですし、「今の時期だけ」という気楽な気持ちで主夫時代を楽しむのもいいでしょう。
周囲の目が気になる
主夫が抱える一番の悩みといっても過言ではないのが、「周囲の目が気になる」というものです。近所付き合いが希薄な集合住宅ならまだしも、家族世帯の多い地域に住んでいると周りの目線が気になるものです。
他人に「仕事は何をしているの?」と聞かれた際に、女性が専業主婦と答えた場合は「そうなんだ」といとも簡単に受け流されますが、男性が「主夫やってます」と答えると問いかけた他人は驚きとともに、主夫になった経緯やお金の心配など興味本位で根掘り葉掘り聞いてくるのです。
また、その場では「へぇそうなんだ」と大人な対応で受け流す他人が、後に近所中に面白半分で噂を広めることもあるので、それが主夫のストレスに繋がっているのです。
他人に理解を求めない!上手くかわす術をつけるべし
主夫というのは家族を支える素晴らしい仕事ですが、まだ世間での認知度は低く受け入れてくれない人も多くいます。説明しても理解できなさそうな人には無理に伝えるのではなく、「自宅で在宅ワークをしています」などと上手にかわしましょう。他人にわかってもらえなくても、家族が幸せに生活しているのならそれでよし!と思うくらいの強い気持ちを持ちましょう。
夫が自己肯定感が感じにくい
主夫の仕事は主に家事や育児など、日常の生活を営むための無償労働です。誰かから褒めてもらえるわけでもなく、給与アップやノルマ達成などのわかりやすい達成感を得ることもない、日常の歯車となるのが主夫の仕事です。
実際にやってみると大変な家事育児でも、家族には「やって当たり前」と思われているからこそ自己肯定感を得づらい…、これは専業主婦にも通ずる悩みなのではないでしょうか。
夫婦でお互いの大変さを理解して尊敬しあおう
夫婦や家族間で、お互いの仕事をリスペクトすることに重きを置きましょう。妻も夫も、会社員と主婦(夫)業どちらも経験して今の状況に至るので、相手の大変さや掛けてもらいたい言葉がおのずとわかるでしょう。
相手から褒めてもらえないことに対して不満をためる前に、相手のことを誉めたり、ねぎらう言葉をかけるよう意識しましょう。まずあなたが感謝の気持ちを相手に伝えることで、相手も日ごろ感じている感謝を口に出してくれるでしょう。
日本人は相手に感情を伝えるのが苦手な人が多いので、最初は照れ臭いかもしれませんが、二人きりになった時などに日ごろの感謝を伝えてみましょう。
夫が主夫だって幸せ!家族のあり方は様々と考えよう
主夫という未だ浸透しない立場に夫を立たせることに悩んでいる妻や、現在主夫だけど自分はこの立ち位置でよいか悩んでいる夫の参考になったでしょうか。男女平等を推進している現代だからこそ、いろいろな働き方や家族の在り方があります。一度きりの人生だからこそ、他人の声に惑わされず、家族が幸せになるための最善の選択をしてみてはいかがでしょうか。