台所育児って何だろう?
台所育児とは、ママと子供が一緒に台所に立って料理をし、生きていく上で大切なことを食を通して楽しく学ぶことです。台所育児では、親子で一緒に料理をすることを通して子供が自己肯定力を身につけることができます。料理を作ることは生きることの基本になり、子供の自信につなげることができるからです。
最近は、成績が良くても自己肯定ができない子供が増えていると言われています。自己肯定力が低いと自分を否定的に捉えることが多く、消極的な子供になってしまう可能性がありますが、幼児期に一人で料理を作ったと言う体験は、段取り力や問題解決力に加え、自己肯定力も育むと言われています。台所育児が子供の成長にどのように役に立つのか、考えてみましょう。
台所育児にはメリットとデメリットがある
親としては子供に、料理する楽しさや食べることの大切さを通して、生きるための基本を身につけてほしいと願っているのではないでしょうか。子供が料理をしているときは、指を使い五感をフル稼働させることで創造力や集中力を育むことができます。ここでは、台所育児のメリットとデメリットを考えてみましょう。
台所育児をするメリット
最初に、台所育児をするメリットを紹介します。紹介するメリットは5つ、台所育児をすることで子供が得られることがたくさんあるのが分かります。
1.真似する力が身につく
料理は苦手だから、どうやって教えていいのかわからないと言うママでも安心して台所育児をしてください。子供はやりたいと思えば驚くほどの集中力を発揮しますので、まずはママがお手本を見せてあげましょう。子供はそれをじっと見て、頭に入れて真似をしようとします。はじめは失敗したり、上手くできなかったりするでしょうが、繰り返すことで子供なりにコツを掴んで上達していきます。真似をして、リピートしながら習得する体験を通して、脳が刺激を受け成長につながっていくのです。
2.自信がつく
台所育児を通して幼児期に一人で何かを成し遂げたと言う体験は、大きな喜びとなり子供の心に残ります。一般的なスポーツや語学などの学習にも、それぞれのメリットがありますが、個人差があったとしても子供には日常生活の中で与える刺激が最も重要です。台所育児はママと一緒に料理をすることで、思い出とともに育っていく感性が子供に自信を与え、伸びていく力になり、一人で料理が作れたという達成感は、やがてチャレンジ精神や強い自信にもつながるでしょう。
3.優しい心が育つ
台所育児は日々料理を作ってくれるママへの感謝の気持ち、また野菜やお肉を育ててくれた人や自然にも感謝できる優しい心を育て、家族の為に美味しい料理を作りたい、そんな思いは受け継がれていくものです。寒い日も暑い日も、どんなにつらい日でもうれしい日も、たとえお店の様には上手くできない日もあるけれど、温かい食卓があったからこそ頑張れた想い出が、きっと誰の心の中にもあるはずです。
4.五感が活性化する
台所育児は特別なことではなく、むしろ日常生活の中で普通に紡がれていくのが望ましい形です。子供は食べるものに触れるとき、一つ一つの野菜の色、形、手触り、匂いを自分の発見や体験を通して知り、ワクワクして好奇心を広げていくでしょう。
また、食材の皮を剥いたり、切ったり、炒めたり、丸めたり、捏ねたりする作業は、5本の指を使うことで脳が活性化していきます。指は第二の脳と言われていますので、指先を使うことで大脳が刺激されて子供の記憶力や、考える力を育てます。さらに完成した料理の形を考えながら作業することで、段取り力や創造力も鍛えられます。
5.食べ物の好き嫌いが減る
子供の好きな遊びにおままごと遊びがあります。もちろん、それもいいのですが、台所育児の中で本物の食材に触れることで、食べ物の大切さが伝わり、捨てたり残したりするのは勿体ないことだと学ぶようになるでしょう。また、自分で作りお皿に盛り付けた料理は、子供にとって珍しいものではなくなるので、自然に好き嫌いが減っていくというメリットもあります。
台所育児をするデメリット
台所育児にはたくさんのメリットがある一方で、デメリットもあります。台所育児をする時は、これらのデメリットに注意して行う必要があります。
1.いろいろな準備が必要になる
台所育児を始めるにはどんな準備が必要でしょうか。もちろん、はじめは玉ねぎの皮むきだったり、さやエンドウのすじ取り、ザルでお米をといだりするような簡単ことから始めますが、慣れてきたらもっと色々なことをしたがるようになります。子供の年齢ややる気に応じて、危なくないように身長に合わせた作業台を用意したり、子供の手に合った包丁を準備する必要があるでしょう。
2.危険がある
小さい子供にはじめて包丁やキッチンバサミなどを持たせるとき、ママとしては怪我をするのではないかと心配になるでしょう。台所には刃物などの他にも、刺さると怪我をするもの、熱い鍋や危険なものがたくさんありますので、台所育児をはじめるときは、魚焼きグリルやコンロなどやけどするものには触らせない、危険なものを手が届く場所に置かないなどの対策が必要です。
3.最初は親がじっと我慢しなければならない
急いでご飯の支度をしなくてはいけない、そんな時に子供にお手伝いをしたいと言われたら、あっちに行ってテレビを見ていてなどと言いたくなりますし、最初のうちは、集中力が途中で飽きてしまうお子さんが多いでしょう。台所育児では、そんなときでも親がじっと我慢して見守ることが大切です。余程のことがない限りは口を出さないと言う覚悟をする必要があるでしょう。
台所育児をはじめるベストタイミングは「子供が料理に興味を持ったとき」
台所育児は、何歳から始めるのがベストなのでしょうか。それは子供が、料理を作ることに関心を持ったときのタイミングです。
例えば、台所にいるママのそばに来て「何してるの?」とか「いっしょにやりたい」などと言って来たときに「じゃあ、やってみる?」という感覚で良いです。なぜならば、子供が興味を抱くことで脳が活性化をするからです。子供が好奇心を持つ前に無理に仕向けてしまうと、やる気をなくしてしまう原因になるので注意してください。
そのためにはママの方が、子供が料理に興味を持つようになったらいつでも台所育児を始められるような心の準備をしておくと慌てずにすむでしょう。
台所育児で大切にしたいのは子供が台所育児を楽しむこと
台所育児にはメリットが多いですが、見方によってはデメリットもありますから、最初のうちは「育児」や「しつけ」の時間と割り切って、子供の伸びていく力を信じることが大切です。
そのためにまずは、台所育児に必要な環境を整えてあげましょう。心配であれば、いきなり包丁などを使わずに、まずは食材に触れることから始めてみて下さい。1歳くらいの頃は何でも口に中に入れてしまうので、道具を使うよりもレタスを手でちぎったり、トマトのヘタを取ったり、ジャガイモを水で洗ったりなど、ママと一緒にできる作業の方が向いています。
一番大切なことは、子供が興味を持ってワクワクしながら台所育児を楽しめることです。子供の成長には個人差があるので、同年齢の子供ができるからと言って自分の子にもできるはずだと押し付けないことも重要です。子供が興味を持ってやりたいと言ってきた時には、その好奇心の芽を摘むことなく、伸ばすサポートをしてあげてください。
台所育児を成功させるための3つのポイント
台所育児をやってみようかなと思ったら、3つのポイントを意識してみてください。これらのポイントを意識しながら行うことで、台所育児が成功へグッと近づきます。
1.子供と約束をしてから始める
台所には危険がたくさんあるので、台所育児に入る前にはいくつかの約束をすると良いでしょう。例えば、調理前には手を洗う、熱い鍋には触らない、包丁の刃を他の人や自分に向けないなどです。あまりたくさんのことを一度に言っても覚えきれないので、はじめは絶対に守るべきことだけを伝えるようにして下さい。
そして、慣れてきたら少しずつ別のルールを覚えさせます。例えば、包丁の扱い方では、包丁の持ち方・包丁の刃では怪我をするので注意すること、野菜を切るときの手の置き方、ほかにはコンロや電子レンジを使用するのはママと一緒のときだけなどです。
2.料理は遊びではないことを教える
台所育児をするときは、最初にした約束を守れなかったり、包丁を使っているときにふざけたりしたら料理の途中でも一度作業を中止します。もし、子供が飽きて遊びだしたら今日は終わりにしようねと言ってきっぱりと終わりにしましょう。料理は楽しいけれど遊ぶ時間ではない、物事にはけじめがあることを教えることが大切です。
3.できたら「ほめる」を徹底する
台所育児ではできないことを叱るよりも、できたことを褒めることを徹底してください。なぜならば子供はママに褒められることで自信がつき、もっと上手になりたい、ママを喜ばせたいと感じるからです。上手にできたときには「○○ちゃんのおかげで助かったよ、ありがとね」などと、きちんとお礼を言うことも忘れないようにしましょう。
台所育児を成功させるための3ステップ
台所育児を成功させるためのポイントが分かったら、実際に台所育児にチャレンジしてみましょう。ここでは具体的にやることを紹介していきます。
ステップ1.下ごしらえをする
料理に興味を持ち始める年齢は、平均すると2~3歳くらいが多いでしょうか。台所育児の一歩目として、手や指を使う作業を手伝ってもらいましょう。
- 玉ねぎの皮むき
- いんげんなどのすじ取り
- もやしのひげ取り
- プチトマトのヘタ取り
下ごしらえを手伝ってもらう時、野菜の名前は、お手伝いのたびに教えるようにしてください。根気よく教えることで、自然に野菜の名前を覚えてくれます。少し慣れてきたら次の作業も積極的に手伝ってもらうようにします。
- 食器洗い
- きゅうりやトマトなどの野菜を洗う
- 玉子を割る
- ゆで卵を剥く
- ザルを用意してお米をとぐ
- 味噌汁などの出汁取り
- レタスなどを手でちぎる
台所育児では、真面目にやっていても失敗してしまうことが多く、時には食材を無駄にしてしまうことがあるかもしれませんが、頭ごなしに怒ったり責めたりすると子供が自信をなくしてしまうので、そんな時でもじっと我慢して見守ってください。
ステップ2.ハサミやピーラー、包丁を実際に使わせる
子供用の小さなキッチンバサミなら、物が滑らないギザギザの刃が付いているので安心して任せられます。のりを刻んだり、野菜を切ったり、色んな食材を与えると子供は喜んで参加してくれるでしょう。
包丁を使わせる場合は子供の手に合ったものを用意してください。切れない包丁だと、やけになって食材を叩いたり投げつけたりするので逆効果だと言われています。子供に包丁を渡すときは、なぜ危ないかを理解できるまで教えるようにしましょう。きちんと伝えることで子供の責任感が芽生えます。
ステップ3.実際に調理をさせてみる
次はいよいよ、実際に簡単なレシピに挑戦させてみましょう。最初は、3~5ステップくらいで完了するレシピがおすすめです。
おすすめのレシピの具体例
レタスとトマトのサラダ
- レタスは食べやすい大きさに手でちぎり、水でよく洗ったらキッチンペーパーなどで水気を拭き取りましょう。
- 次にプチトマトをよく洗いヘタを取り、包丁で2等分に切ります。
- 盛り付けも子供の好きなようにさせてみましょう。
- オリーブオイル、塩、胡椒(好みで)を適量ふりかけて完成です。
炒り卵豆腐
- 木綿豆腐はキッチンペーパーなどで水気をよく取っておきましょう。
- ボールに玉子1つを割って、塩少々、砂糖小さじ1、みりんを入れてよく混ぜておきます。
- まずは、フライパンに木綿豆腐を入れて水分を飛ばします。
- 水分がなくなったら油又はバターを入れて、フライ返しなどで豆腐を細かくしていきます。
- さらに玉子を入れて、豆腐とよくからめたら完成です。
台所育児では親が手助けしないのがポイントになります。よほどのことがない限り口出しはしないで、子供を信じて見守ることが大切です。少しくらい雑でも美味しくなくても、やり遂げたことを認めて「すごいね!」「おいしいね」などと褒めてあげると良いでしょう。
台所育児で成功するポイントは「子供が一人でやり抜けるか」
台所育児を成功させるポイントは、子供が料理を作ることを楽しいと感じてくれるかが鍵になります。料理の楽しさや食べることの大切さをありのままに教えてあげると良いでしょう。完成度よりも一人で頑張り抜くことが大切で、一つのレシピを完成させることで、子供は充足感と共に家族の一員として認めてもらえたと感じます。その自信が自己肯定力になり、やがて大きく成長していくパワーになるのです。
台所育児は子供にもママにも大きなメリットがある
人生の中で子供と一緒に過ごせる時間は、考えてみたらそう長くはありません。小さな手で一生懸命お料理をする姿を通して子供が成長していくという、当たり前のようで当たり前ではないミラクルが、やがてはママの中でもかけがえのない思い出になる日がきっときます。
毎日を平凡に暮らすことは簡単なようで難しいときもありますが、人がどんなときでも食べることで元気になり、また歩き出していけるのは、食が生きることの基本だからです。私たちは心から楽しいと感じたことはいつまでも記憶に残り、心の支えになります。台所育児はママにとっても子供にとっても大きなメリットがあると言えるのではないでしょうか。