フリースクール運営者が「フリースクール」を紹介します
子どもが学校に行かなくなってしばらく経つと、次第に他者とのつながりを求めたり、活動意欲が湧いてきたりして、外の社会に興味を持ち始めることがあります。いきなり学校に戻ろうとしても、自己肯定感の低下などからうまくいかないこともしばしば。しかし、学校に行くことが普通のこの世の中で、"学校に行けなくなる"というのは、子どもにとってとても大きな挫折体験です。
「そろそろ家の外にも行きたいけど、いきなり学校に戻るのは怖い……」そんな方々におすすめしたいのが、フリースクールをはじめとする、学校に行かない子どもたちのための支援機関です。サポート校やオルタナティブスクールなどさまざまな形態がありますが、今回はその中でも最もメジャーな「フリースクール」について、ご紹介したいと思います。
フリースクールとは?
フリースクールとは、なんらかの事情で学校に通わない・通えない状態にある子どもが、学校の代わりに通う民間の教育施設です。学習内容や過ごし方はフリースクールによって異なり、職業体験やレジャーなどの特別な活動を取り入れているところもあります。
形態もさまざまで、100人以上の生徒が通う大きな場所もあれば、自宅の一室などを利用して少人数で活動する施設もあります。全国に約450施設ほど存在しますが、明確な定義は未だされていないため、学習塾などがフリースクールと称する場合もあり、どの場所に通うかは慎重に検討する必要があります。
子どもがフリースクールに通うメリット
わたし自身、不登校だった頃は家にこもりきりで、常に鬱々とした気持ちを抱えていました。学校に行けない子どもたちへの理解が深いフリースクールは、学校に居場所のない子どもやその親にとって、大きな支えになってくれると思います。
子ども一人ひとりに合った支援が受けられる
学習状況や特性、興味、目標など、子どもによって必要な支援は異なります。フリースクールの最大のメリットは、学校ではなかなかできない「1人ひとりに密着した支援」ができること。
ほとんどのフリースクールではカリキュラムは組まれておらず、子どもに合わせて学習ペースや普段の過ごし方を決められます。そのため、学校の集団授業に合わなかった子や、長時間集中力を保つことが難しい子でも、子どもに合ったペースで学び、生活することが可能となるのです。
親子にとっての相談相手になる
子どもが悩んだ時はもちろん、親が子どもとの接し方や家庭のことについて悩んだ時も、フリースクールのスタッフや職員が誠心誠意対応します。
子どもに関する悩みというのは、非常にナイーブでセンシティブなものです。特に不登校などについては、相談相手が一人もいないという親も少なくありません。フリースクールのスタッフは、不登校生に対する理解が深く、知識も有しているため、子育てに関する悩みの良き相談相手となるのではないでしょうか。
また、相談以外にも、「子どもが学校に戻りたいのかどうか聞いてみてほしい」「進路の希望があるのか知りたい」など、親子間では聞きにくいことをフリースクールの人に聞いてもらうこともできます。
親が「自分のための時間」を取りやすくなる
子どもが学校に行かなくなると、必然的に家にいる時間が長くなります。どんなに仲の良い関係性でも、1日のほとんどを一緒に過ごしていては、軋轢がうまれ、些細なことからストレスを感じやすくなってしまうものです。
フリースクールなどに子どもが通うことによって家で過ごす時間が短くなると、親自身も自分のための時間を取りやすく、親子の距離感を程よく保てるようになります。それによって、家庭内での雰囲気が良くなり、子どもがより多くの場所で居場所を感じられるようになるのです。
子どもがフリースクールに通うデメリット
フリースクールは不登校の子どもとその親にとって大きな支えになる一方で、民間の施設であるがゆえに、いくつかのデメリットが存在します。
親の経済的な負担が大きい
フリースクールに通うには、だいたい毎月30,000円程度の費用がかかり、それ以外に施設費や行事参加費などがかかる場合があります。また、フリースクールは公的な学校とは認められていないため、卒業資格を取得するにはフリースクールと並行して学校にも通わねばならず、必然的に家庭の経済的負担は大きくなってしまいます。経済的な事情からフリースクールなどの教育施設に足を運べない方々もいるのです。
子どもに合うフリースクールが見つかるとは限らない
フリースクールの形態はところによってさまざまです。豊富なレジャーを楽しむ子もいれば、非日常が続く日々に疲れる子もいます。学習しなくていい空間にリラックスする子もいれば、「やっぱり勉強しないといけないのではないか」と自責してしまう子もいます。
子どもがどんな過ごし方をしたいか、この先どうしたいと思っているのかによって、その子に合う場所も変わるのです。どんな場所に行けばいいのか、通おうとしているフリースクールが子どもに合っているのかは、実際に行って見ないことには分かりません。この「子どもに合う環境のフリースクールを見つける」ということ自体に疲弊し、エネルギーを消耗してしまう子ども多いです。
子どもにとって心理的なハードルが高い
社会的理解が深まってきたとはいえ、まだまだ学校に行かないのは特別なことと思われてしまいます。フリースクールなどの「不登校生のための支援機関」に通うことは、子どもにとって「自分が不登校である」というのを認めることに他ならないのです。そのため、子ども自身がフリースクールなどを否定的に捉え、通うことに対して抵抗感を持つことは珍しくありません。
子どもに合う環境のフリースクールを見つけるためのポイント
子どもが学校に行きたくないと言った時、フリースクールに通うことを選択肢の一つとして考えるなら、子どもに合ったフリースクールに通わせてあげることが大切です。
1.子どもが通う目的に合っているか
フリースクールなどの教育施設は、大きく分けて2つの種類に分けられます。学校復帰を目的とした施設」と、「学校復帰に重きを置いていない施設」です。子どもがもう学校に戻らないことを決めているのに学校復帰のための場所に行っても、子どもが居心地の悪い思いをしてしまうだけ。
どうしてそのフリースクールに通うのか、そしてその場所はどういうことを目的としているのかをしっかりと確認し、目指すものが一致しているところを選ぶようにしましょう。
2.子どもが継続して通うことができるか
フリースクールは、基本的に週1~5日、定期的に通うものです。通学に片道2時間かかったり、苦手な人ごみを越えなければいけなかったり、朝早く起きなければならなかったりしては、その場所に行くだけで疲れ切ってしまいます。
特に不登校期間は運動する機会も減り、体力・精神力共に減少しがちです。子どもによっては「電車に乗れない」「大きな駅を通れない」などの事情もあると思いますので、子どもがゆとりを持って通える範囲・方法を事前に確認できると良いです。
また、毎月の費用が高額すぎても、継続して通わせることは難しくなります。通学経路や金額も含めて、親子共に無理せず通えるところを選ぶことが大切です。
3.子どもが安心して過ごせるか
いくら通いやすくても、授業料が安くても、子どもが安心して過ごせなくてはわざわざ通う意味がありません。フリースクールを検討する際は、必ず施設見学や体験入学をおこない、子どもにとって合う環境かを確かめてください。もちろん、一度体験に行ったからといって必ずそこに通わなくてはいけないということはありません。
それと同様に、親が安心できることも重要なポイントです。問い合わせた時の対応は迅速か、子どもが通えない時にフォローはしてもらえるか、施設内での様子をきちんと伝えてくれるかなど、しっかりとチェックするようにしましょう。
フリースクール以外にも子どもを支える施設はある
少し前の時代、子育ては家庭だけでおこなうことではなく、地域住民や親族が協力し合うものでした。その一方で、今は核家族化が進み、専業主婦という選択も難しく、家事に育児に仕事にと、家庭にかかる負担はとても大きくなっています。その上、子どもが学校に行けなくなり、家庭内でのフォローを求められては、どうすればいいか分からなくなってしまうのは当然です。
もちろん家庭内に子どもの居場所があり、家族同士で支え合えることも大切です。しかし近年は、不登校や学校以外の学びの場に対する認知が少しずつ増えてきて、文部科学省も「不登校は問題行動ではない」という通達を出しました。
そんな今だからこそ、家庭を支え、共に子どもと向き合う場所が必要です。フリースクール以外にも、親の会や医療機関、学校など、親子の味方となる施設や人はたくさんいます。どうか一人で抱え込まずに、地域や他の場所と支え合って、子どもをサポートしてあげてください。
著者情報
フリースクールRiz代表
たかれん
自分自身の半年以上の不登校と引きこもり経験を生かし、不登校の当事者だけではなく、周りの家族もサポートしたいと思って活動しています。「どんなお話でもうかがいます」「どんなお話でもいたします」「考え方のヒントを一緒に考えます」
HP:フリースクールRiz