大学生の発達障害への対処法

発達障害のある大学生に見られる行動と今とるべき対処法

発達障害のある大学生がとりがちな行動を紹介。履修登録ができない、レポートの〆切りが守れない、ゼミなどのグループ活動が苦手など、当てはまる症状はありませんか?大学進学時に発達障害を自覚するケースは珍しくありません。診断や支援を受け、対処法を実践し、大学を卒業しましょう。

発達障害のある大学生に見られる行動と今とるべき対処法

大学生になるまで発達障害を見過ごされた人が知っておくべきこと

最近、テレビなどで「発達障害」という言葉を聞く機会が増えてきました。
その結果、これまでなんとなくではあるけれど、「他の人が当たり前にできることができない」と感じていた人々が、自分もその当事者であると自覚を持ち始めています。

  • 履修登録のシステムを理解できない
  • 時間通り講義に出席するのがとても難しい
  • サークルやゼミ活動で、他人とコミュニケーションがとれない

こうした問題は、本人の努力不足、だらしがないだけ、怠けているから、などと片づけられてしまうことが非常に多いです。しかし、自分自身の努力や発想だけではもうどうにもならないと感じたら、1度「発達障害」を疑ってみてください。

もちろん障害のせいにして責任逃れをするのではなく、これまで発生していたトラブルの要因を正しく分析するためです。その結果、今まで見いだせなかった問題解決の糸口が見えてくる可能性が高くなります。

発達障害とはなにか? 障害のある大学生がとりがちな行動

まずは、発達障害とはなにか、発達障害を持つ大学生がとりがちな行動とともに解説します。

現在では、発達障害の社会的な認知が進んだことで、発達障害を持つ大学生も決して少なくなく、支援の必要性が叫ばれています。現在、大学に通う発達障害者の割合や、なぜ大学生になるまで発達障害が見逃されてきたのかも考察していきます。

発達障害3つの分類

発達障害3つの分類

まず、発達障害は先天的な脳の機能障害によって引き起こされるものです。

大まかに分類すると、注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉症スペクトラム症やアスペルガー症候群を含む広汎性発達障害、学習障害(LD)といった種類が存在します。

発達障害の症状は、ADHDが中心だけどLDも少しあるなど、領域をまたがって多様な要素が重なりあうように現れるケースも珍しくありません。一言で「発達障害」といっても、現れる症状は非常に個人差が大きいのも、発達障害の特徴です。

注意欠陥多動性障害(ADHD)

注意欠陥多動性障害(ADHD)は不注意である、落ち着きがない、衝動的な行動を取る、見通しが甘い(スケジュール管理ができない)という症状が見られます。

ADHDの大学生が引き起こしてしまいがちな行動には以下のようなものがあります。

  • 履修登録のシステムを理解できない又は誤った優先度で登録してしまう
  • レポートの〆切が守れない
  • 忘れ物が多い
  • 時間通りに授業に出られず、遅刻してしまう
  • ゼミやサークル活動などで不用意な発言をしてしまう

広汎性発達障害(自閉症スペクトラム症・アスペルガー症候群)

アスペルガー症候群や自閉スペクトラム症を含む広汎性発達障害は、コミュニケーションが苦手だったり、相手の意図を読み取ることができないといった症状があります。

広汎性発達障害を持つ大学生が引き起こしがちな行動は以下の通りです。

  • 教授や友達の言っている意味を正しく理解できない
  • グループ活動がある演習講義に多大なストレスを感じる
  • 曖昧なテーマのレポート作成が困難

学習障害(LD)

限局性学習症とも呼ばれ、主に文字を読む、書く、計算する、推論することが困難といった症状があります。発達障害は、知的な遅れを伴うケースもありますが、学習障害に関しては、知能指数に問題がないにも関わらず、特定の分野が極端に苦手という特徴があります。

小中高時代にもなんらかの症状があらわれていた可能性はありますが、大学に入り授業形式が多様化することで、苦手分野が顕著になってしまう傾向があります。

学習障害(LD)の大学生が引き起こしてしまいがちな行動には以下のようなものがあります。

  • 講義を聴きながら、ノートをとることができない
  • パワーポイントに映し出された文字を読むのが難しい
  • 講義の後半に渡される出席確認のためのミニレポートを時間内に提出できない

発達障害を持つ大学生は10年前の10倍以上に増加!

発達障害を持つ大学生の増大

日本学生支援機構が公表した資料によると、2015年度に大学・短期大学・高等専門学校に在籍している発達障害のある学生数は、3442名です。2016年度が2722名なのに対し1年で720名の増加です(注1)。2008年(平成20年度)の発達障害学生が299名だったので、10年しないで10倍以上に増加しているという現状があります(注2)。

しかも、この数字は、あくまで医師の診断書があるものに限定された数字に過ぎません。
診断書はなくても、発達障害の疑いがあり、教育上の配慮を行っている支援発達障害学生数は、更に2564名。調査対象となった学生全体(2739511人)のうち、発達障害(診断書あり)は0.12%程度、支援学生も含めても0.2%に過ぎませんが、障害学生全体のうちの15.8%が発達障害(診断書あり)を抱えています。

このデータはあくまで氷山の一角であり、まだまだ診断書も下りず、大学側にも配慮されず、自分自身が発達障害だと気がついていない学生は、更に多いことが予想されます。

なぜ大学生になるまで、発達障害が見逃されてきたのか

発達障害は生まれ持った脳の機能不全であるため、急に症状が現われはじめるわけではありません。1歳を過ぎた頃から、特有の症状が現われ、幼児期や学童期には「少し変わった子」と思われたり、養育者が育児の困難さを感じるケースも数多くあります。

しかし、「発達障害」という障害の認知が社会的に進んできたのは2005年(平成16年)に発達障害支援法(注3)が施行される数年前からです。

学校現場では、支援法の施行後に学校カウンセラーの配置などを行ってきましたが、現場の教員たちの理解が十分だったとは言い難い状況です。そのため、今の大学生はまだまだ診断を受けずに、発達障害を見逃されてきた世代なのです。

発達障害者が大学進学後に感じるつまずきとその後のリスク

「例え発達障害があったとしても、小中高と勉強し、大学に進学できたのだから、大きな問題はないのでは?」というのは誤解です。

例え、これまでの学生生活ではなんとかなっていたとしても、大学生活、その先の社会生活において、発達障害ゆえの行動や症状が本人にとって大きな苦痛を伴う可能性は無視できません。

発達障害のある人が大学進学時に感じるつまずきと、その後に適切な対処をとらないことで想定されるリスクを解説します。

授業形式の大幅な変化

グループワークする大学生

現代の日本の教育システムというのは、小中高は、椅子に座って話を聞き、板書をとる座学が中心ですが、大学に入学するとグループワークや実験など、授業の内容が多様化する傾向にあります。そのため、小中高は勉強が問題なくこなせていた発達障害者でも、大学入学後の環境の変化に適応できないケースが非常に多く見受けられます。

必修や選択科目など自分で時間割を決める履修登録ができない、空間把握能力が著しく低いため休憩時間内に講義室に辿り着けない、グループワークで周囲の学生とコミュニケーションがとれないなどの問題が浮上し、進級や卒業に必要な単位が取得できないといった状況に陥ってしまうのです。

一人暮らしをするためのスキル不足

汚部屋

大学進学時に、親元を離れて一人暮らしをする方は大勢います。しかし、発達障害がある学生の場合、この一人暮らしでつまずきを感じる人が非常に多く、その結果として学業に支障をきたしてしまうケースも少なくありません。

毎日着る衣類の洗濯、部屋の片付け、買い物など、一人暮らしには欠かせない要素は、発達障害の人にとっては非常に労力を伴い、生活をするだけで精一杯になってしまいます。

特にADHDの人は時間やお金の管理が難しく、最悪の場合、詐欺などの被害にあったり、金銭のトラブルに巻き込まれる可能性もあります。

発達障害の大学生が陥ってしまいがちな状況

発達障害ゆえに大学生活に支障をきたしているにも関わらず、適切な対処をとらないとどうなってしまうのでしょうか?

発達障害のある人が陥りがちな状況や適切な対応をとらない場合のリスクを、事例を挙げながら紹介します。

事例1.履修登録ができなかったTさんの場合

東京の私立大学に進学して、一人暮らしを始めたTさん。希望に満ちた生活が送れていると思っていたが、入学からわずか3か月後、親元に大学から連絡が届いた。その内容は、Tさんが入学してから満足に大学に通っていないということだった。

両親は、一体どういうことかと思って東京に向かってみると、借りていた部屋は足の踏み場もないほど散らかり放題で、もので溢れかえっていた。

Tさんは、授業の履修登録がうまくできず、そのため進級にかかわる授業を受講できなかったことをきっかけに、大学に通わなくなったと言う。両親は「言い訳だろう」とあきれ顔だった。

発達障害(特にADHD)では、片付けが苦手という症状がよくみられます。また、衝動的にものを買い込んでしまうケースも珍しくありません。片付けようと思っても、すぐにほかのことに注意が行ってしまい、なかなか片付けることができないのです。

そして、大学の履修登録は、発達障害がある人が最初につまずきやすいポイントです。必修科目や選択科目に優先度をつけられなかったり、優先度や負担を考えずに時間割をすべて埋めたりなどといった傾向が見られます。

両親からは「怠けているだけ」に見えてしまい、Tさん自身にも発達障害の認識がない場合、今後も似たような状況に陥ってしまうかもしれません。自己嫌悪になったり、対人関係に影響を及ぼす可能性も高いでしょう。

事例2.進級に必要なレポートを忘れたFさんの場合

深夜までゲームに没頭する若者

夜遅くまでオンラインゲーム、SNSに夢中になることが多く、朝早く起きられないことか続いて、日々の授業を欠席したり、遅刻する日が増えていった。

そして、お昼の食堂で友人と食事することになって、友人の一人が「あの授業のレポート出したか?締め切りは今日の午後5時までだけど」という言葉にFさんは「レポート?あっ!!」と慌てふためいた。レポートの存在そのものを忘れていたのだ。

しかもそのレポートは、進級に関わるもので、短時間ででできるものではない重要なものだった。Fさんは、頭の中が真っ白になって、大パニック状態になってしまった。

うっかりとしたミスは誰にでもあることですが、Fさんの場合、進級に関わるほど大切なレポートの存在を忘れ、オンラインゲームに熱中していました。

優先順位がつけられず計画性が持てない、一度夢中になると他のことを忘れてしまうなども、発達障害の症状としてよく見られる例です。

このままではTさんは、留年を繰り返したり、中退してしまう恐れもあります。必要単位を取得し、大学を卒業するためには、適切な支援が必要です。

事例3.コミュニケーションが苦手なSさんの場合

教室で一人残る大学生

Sさんは、小さい頃から周りとうまくやっていけず、コミュニケーションをとることが苦手だった。中学校の頃はずっと保健室登校で、高校はあまり人と関わらなくて済む通信制高校に通っていた。

そして、中等部や高等部も完備している私立女子大に進学したが、大教室の授業など、講義の度に教室が変わることに大きな不安感を抱いた。そこでも周りとうまくやって行けず、猛烈な孤独感を感じるようになっていった。

とうとう、うつ病を発症してしまい、自主退学してしまった。

本人もコミュニケーションが苦手と感じていますが、単なる性格の問題ではなく、人とのコミュニケーションが苦手な傾向にあるアスペルガー症候群や自閉症などの広汎性発達障害の可能性があります。

空気を読むなど場の暗黙的な了解が理解できない、会話が一方的になってしまう、他にも聴覚や視覚が通常の人よりも敏感な感覚過敏などの症状が見られるケースがあります。

発達障害によって社会生活に支障をきたしてしまうと、うつ病などの二次障害を引き起こすリスクが高くなります。

大学進学後の発達障害にどう対処していくべきか?

発達障害は、適切な治療や対処をしないと、本人が1番辛く、大学を中退してしまう学生もいます。また、そのまま放置すると、自己嫌悪や対人恐怖から、うつ病などの二次障害を引き起こしてしまう恐れもあります。

まずは診断を受けること!

最悪の事態を避け、適切な支援を受けるためにも、疑わしい症状が見られるときは、きちんと医師の診断を受けることがなにより重要です。服薬によって症状を改善させられるケースもありますし、きちんとした診断が下されることで、受けられる支援の選択の幅も広がります。

発達障害者支援センターを頼ったり、相談相手を見つける

発達障害と診断された場合、発達障害者支援センターなどの専門期間を頼り、自身が置かれている状況を相談しましょう。自分1人や家族だけで悩みを抱えるのではなく、専門家の意見を聞くことで、自分の障害への理解が深まるはずです。

大学生活においては、学生相談室のカウンセラーや担当の大学教授、支援してくれる先輩や友人など、信頼できる相談相手を見つけておくと心強いはずです。履修登録や掲示板のシステムなど、大学生活でわかならいことを相談できれば、負担軽減に繋がります。

大学側に「合理的配慮」をしてもらえないか相談する

障害に対する差別を禁じた条約や法律はこれまでも制定されてきましたが、2016年4月には、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(注4)が施行され、障害のある方への「合理的配慮」が大きく取り上げられました(注5)。

現在、障害のある学生への合理的配慮は国立大学へは義務化されており、私立大学では努力義務となっています(注6)

発達障害の場合、まだまだ十分な体制が整っているとは言い難い状況ではありますが、社会的な認知も進んできたことで、障害の特性に応じた配慮がなされるケースも増えてきています(注7,8)。

発達障害のある学生への合理的配慮の例

・注意事項の文書伝達
・講義の録音許可
・タブレットやパソコンの持ち込み許可
・教室の座席配慮
・チューターの配置

ライフスキルを身に着けられるように

WHO(世界保健機関)は、「日常生活を送るうえでは発生する問題に対し、建設的な方法で対処するための重要な能力」を”ライフスキル”と定義しています。
発達障害のある大学生は、在学中に意識的にこうしたスキルのトレーニングをしておくと、今後の社会生活への不安が軽減されるはずです。

規則的な生活を送り、ルールを決める

仲間と一緒にランニングする大学生

スケジュール管理が苦手といった症状のある発達障害の学生は、一度生活が乱れると、立て直すのが非常に難しくなってしまいます。規則正しい生活を心がけ、可能な限り保護者などが援助することが望ましいでしょう。

また、一人暮らしをしている学生の場合、やらなければやらない家事や雑事が多くなりがちです。
洗濯物は週に2回洗うなど、自分の中でルールを設けてそれを守るようにすると、忘れたり、慌てることも少なくなります。

スマホなど自分が使いやすいツールを活用する

時間管理ができない、空間把握能力が低くよく道に迷う、そんな症状が見られるときは、スマートフォンのアラーム機能やナビ機能などを積極的に活用しましょう。大切なことをよく忘れる、だけどメモを取るのが苦手などの症状がある人は、音声入力という手段もあります。
とにかく自分の弱点を把握して、それを克服するために有効な手段を講じましょう。

金銭関係のトラブルには細心の注意を払う

発達障害の人は、キャッチセールス、訪問販売などに引っかかりやすい傾向があります。そのため、〇円以上の買い物をするときは人に相談する、一度メモに書き何日後に必要だったら購入するなど、事前に対処法を講じておきましょう。念のため、消費者生活センターの電話番号も控えておくことをおすすめします。

卒業後の就職に向けて、押さえておきたいこと

アルバイトに挑戦

社会性を身に着ける手段として有効なのがアルバイトです。お金を稼げたという経験は自信ももたらします。

ただし、アルバイトの種類によっては、自分の障害と相性が悪い可能性もありますので、職種は慎重に選びましょう。また、失敗してしまったとしても、「自分に向いていない仕事の特性がわかった」と前向きに捉えることが大切です。

就職活動は一人で行わず、アドバイスを受ける

就職活動で大学職員に相談する学生

発達障害のある学生の場合、「自分に適した仕事に就く」ということが非常に重要です。卒業して、就職しても、続けて自分の特性と向き合っていく必要がありますから、そうした発達障害の症状をきちんと理解してくれる企業を探すのが最も望ましいでしょう。

就職活動に関しては、大学内のキャリアセンターや障害者就労支援センターの意見も積極的に聞きに行きましょう。いざ採用試験を受けるために、履歴書やエントリーシートを作成するときも、自分ひとりで考えず、必ず人に添削してもらうと失敗が少ないはずです。

職活動は決して優しいものではありませんが、一生懸命働いて、お給料を稼ぐと大きな達成感を味わえるはずです。自分ひとりで悩まず、周囲の人を巻き込んで就職活動を行いましょう。

資格取得で強みを持つ

大学在学中に色々な資格を取得しておくと、自信に繋がり、自己アピールにもなるので、オススメです。意欲がある、勉強熱心な学生として、好印象を抱いてもらえるでしょう。

卒業するためには、思い切って相談することが不可欠

発達障害の現れ方は人それぞれで、中には障害に気がつかない、認めらないまま、大学を中退してしまうケースも見受けられます。

一方で、大学在学中に自身の障害に気づいたことで、専門家の助言や周りの手助けを受け、大学を卒業できた。就職先も決まったという人もいるのです。

大学時代は、社会に出るための準備期間ともいえます。発達障害のあるなしに関わらず、この時期に自分の長所や短所など、自分の特性を把握できたかどうかというのは、今後の働き方や生き方にも大きく影響を与えるものです。

「自分は発達障害かもしれない…」と思っている方は、そこから一歩踏み出すことで、問題解決への糸口が探っていきましょう。

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